経口投与された医薬品は小腸から吸収され、肝臓を経由して全身循環に入る。小腸や肝臓にはさまざまな薬物代謝酵素や薬物トランスポーターが発現していることから、これらの寄与によって医薬品のバイオアベイラビリティーが左右される。現在、医薬品又はその候補化合物のバイオアベイラビリティー予測のためには消化管吸収や小腸での代謝、肝代謝、肝取り込み、胆汁排泄などを別々の試験系で評価している。しかし、より正確な予測のためには、小腸および肝臓におけるさまざまな要因を含めて評価することが望ましい。また、医薬品またはその候補化合物による消化管および肝毒性の評価においても同様であると考えられる。そこで我々は、小腸と肝臓を連結した灌流培養系の開発を行っている。また、これに搭載する小腸上皮細胞をヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から分化誘導する技術開発もあわせて行っている。これまでにプロトタイプの小腸–肝臓連結デバイスを用いて、薬物の初回通過効果が評価可能かどうか検討を行った。小腸部分には我々が確立した分化誘導法によって作製したヒトiPS細胞由来の小腸上皮細胞を、肝臓部分にはヒト肝細胞キメラマウス由来の肝細胞を播種した。その結果、消化管の膜透過と肝臓での代謝が評価可能であることが示唆された。現在は、小腸–肝臓連結デバイスの改良を進めており、薬物動態および安全性予測のためのデバイスとしての利用に向けて機能的な部分に関する検証を今後行っていく予定である。本講演では、これらを含めて現在我々が研究を進めている小腸–肝臓連結デバイスの開発に関する取り組みについて紹介する。