日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S15-1
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シンポジウム15
ゲノム編集に関するPMDA科学委員会コンセプトペーパーについて
*山口 照英
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抄録

目的とする遺伝子を特異的に切断、改変、編集できる画期的な技術としてゲノム編集技術の開発が精力的に進められており、新たな遺伝子治療法として、その実用化が期待されている。ゲノム編集は、ゲノム配列特異的に目的遺伝子の機能を失わせたり、疾患の原因となっている遺伝子異常を修正したりすることが可能な技術として究極の遺伝子治療技術となると期待されている。

ゲノム編集技術では、DNAの特定の部位への二重鎖切断(DSB)の導入と細胞のもつ修復機構を利用することで、DSB部位での非相同末端結合(NHEJ)による目的遺伝子のノックアウトや相同組換えを利用した遺伝子修復(HDR)を行えることが可能となる。DSBを導入する人工ヌクレアーゼとして初期にはZFNやTALENが開発されたが、近年では、より簡便なゲノム編集技術であるCRISPR/Casが開発され臨床開発が進められている。ゲノム編集技術を利用した臨床開発の例としては、感染症、がん、単一遺伝子疾患等を対象にした遺伝子治療臨床試験が実施されており、数年以内にこれら遺伝子治療用製品等の製造販売承認申請が行われる可能性がある。

ゲノム編集は目的とする遺伝子を特異的に改変できる技術して期待されているが、標的配列の類似した目的外の遺伝子を改変してしまうオフターゲット作用やDSBに伴う染色体異常などのリスクが懸念されている。そのためゲノム編集技術では、特にオがん関連遺伝子に変異が起きるリスクあることから、その検出手法の開発が進められている。さらに、近年ではゲノム編集により、標的配列に大きな欠失やベクターの挿入が起こることが第3世代のゲノム解析により明らかになりつつあり、標的配列への意図しない変異(オンターゲット変異)のリスクについても着目され始めている。本発表ではこのようなゲノム編集技術に付随するリスクついて、PMDA科学委員会で作成したコンセプトペーパーを中心に議論したい。

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