日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-23
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一般口演
農薬ロテノン慢性皮下投与パーキンソン病モデルマウスにおける腸管細胞環境の変化
*浅沼 幹人宮崎 育子都 明希小林 壯太朗津田 光希小野 鈴香正井 加織
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抄録

 我々は孤発性パーキンソン病(PD)発症要因の一つである環境毒農薬ロテノンの低用量慢性曝露によりPDの脳腸神経変性を再現できるモデルを確立した.さらに腸管初代培養細胞を用いて,ロテノンによる腸管神経障害は,腸管グリア細胞の機能不全によって惹起されることを明らかにしている.しかし,ロテノン曝露による腸管神経変性において,腸管免疫・炎症反応がどのように変化し,どのように腸管グリアの機能不全が惹起されるかは不明である.今回は,ロテノン慢性皮下投与PDモデルマウスを用いて,腸管粘膜上皮,関連リンパ組織,粘膜下・筋間神経叢の免疫細胞を含む細胞環境,炎症関連分子の変化について検討した.C57BLマウスへの浸透圧ミニポンプを用いた低用量ロテノン(2.5 mg/kg/day) 4週間慢性皮下投与により,黒質ドパミン神経の変性脱落のみならず,回腸筋間神経叢,アストロサイト様グリア細胞の脱落が認められ,腸管粘膜上皮tight junctionの脆弱化,組織損傷時に核外に移行し細胞外へ放出され炎症惹起に働くdamage-associated molecular patterns (DAMPs)であるHigh mobility group box-1 (HMGB1)の粘膜上皮の核膜管腔側から核外への著明な集積が認められた.これらの結果は,腸管神経障害には腸管バリア機能の破綻,炎症反応,グリア細胞の機能障害が関与することを示唆している.

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© 2022 日本毒性学会
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