日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成24年度日本調理科学会大会
セッションID: 2C-a2
会議情報

口頭発表
黒大豆の抗酸化能に及ぼす調理の影響
イソフラボン類の挙動
*近藤(比江森) 美樹永易 あゆ子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

[目的] これまで、黒大豆の種皮に存在する色素成分であるシアニジン 3-グルコシド(C3G)に着目し、黒大豆の抗酸化能に及ぼす調理の影響を検討してきた。しかし、黒大豆の抗酸化能は種皮由来成分に加えて、胚乳に存在する成分の関与が強く示唆された。そこで、今回は、胚乳に含まれるイソフラボン類の挙動と抗酸化能について検討した。
[方法] 黒大豆は2009年の岡山県産の丹波黒とし、対照には黄大豆のサチユタカを用いた。大豆100 gを水400 mLに添加物(鉄釘、重曹、鉄釘と重曹の併用)とともに8時間浸漬した後、圧力鍋(60 kPa)を用いて加圧3分、蒸らし10分の条件で調理し、一晩室温で放置することにより煮汁を含ませた。煮豆を凍結乾燥して粉砕後、酸性エタノールによる抽出液を濃縮し、測定試料とした。試料中のイソフラボン類(6”‐O‐マロニルダイジン、6”‐O‐マロニルゲニスチン、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、ダイゼイン、ゲニステイン)をHPLC-PADにより定量した。抗酸化能は、活性酸素消去能(ORAC)により検討した。
[結果及び考察] 調理により、ダイゼインおよびゲニステインを基本骨格とするマロニル配糖体は有意に減少し、配糖体ならびにアグリコンが増加したが、総量に有意な差は認められなかった。一方、抗酸化能は調理後にも維持され、鉄釘の存在下で有意に高い値を示した。イソフラボンの標準品のORAC値はアグリコンで有意に高値を示した。各成分の含有量と標準品のORAC値から求めた抗酸化能への寄与率は、イソフラボン類が約55 %、C3Gおよびその分解物が約5%、その他成分が40%であった。これらの結果から、調理過程でイソフラボンの組成は変化するが総量に変化は無く、イソフラボン含量が抗酸化能に大きく起因することが明らかになった。

著者関連情報
© 2012 日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top