日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-14S
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マウスを用いたエンニアチンBの薬物動態試験及び28日間反復経口投与毒性試験
*尾城 椋太小澤 俊介岡野 拡高嶋 和巳高橋 康徳唐 倩鄒 昕羽吉田 敏則吉成 知也渋谷 淳
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抄録

【背景及び目的】エンニアチン類は新興カビ毒として関心が高まっており、毒性に関する正確な情報が求められている。以前、我々はエンニアチン類混合物(B、B1、A1)のマウスを用いた28日間反復経口投与毒性試験を実施したが、無毒性量を求めるには至らなかった。今回はエンニアチンB(ENNB)単体について、マウスを用いて単回経口投与後の吸収性を確認するために薬物動態試験を実施し、その後に28日間反復経口投与毒性試験を実施した。

【方法】薬物動態試験では、6週齢の雄性マウスにENNBを経口(30 mg/kg体重)ないし尾静脈内(1 mg/kg体重)投与し、血中動態パラメータを算出した。また、糞中ENNB濃度の測定と肝臓の遺伝子発現解析を実施した。一般毒性試験では、6週齢の雌雄マウスにENNBを0、7.5、15、30 mg/kg体重の用量で28日間反復経口投与し、血液学的及び血液生化学的検査と病理組織学検査を実施した。

【結果】薬物動態試験では、バイオアベイラビリティは85.6%と推定された。経口投与群の糞中には投与量の平均5.26%のENNBが検出された。肝臓のRNA-Seqでは、シトクロムP450をコードする遺伝子を含む多くの代謝関連遺伝子の発現が増加した。一般毒性試験では、30 mg/kg 群の雄で赤血球数の低値、BUN値の高値、腎臓絶対重量の高値が認められたが、病理組織学的にENNBの影響を示唆する変化はみられなかった。

【考察】ENNBは経口投与によって十分に吸収され、肝臓で代謝を受けることが見出された。反復投与により認められた変化はいずれも軽微であり、病理検査を含め関連指標に明らかな変化を認めなかったため、毒性学的意義は乏しいと判断され、無毒性量は30 mg/kgとした。以上より、ENNBは経口投与により吸収されるものの、一般毒性は今回用いた用量より高い用量で出現すると考えられた。

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