日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S20-3
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シンポジウム20
自閉スペクトラム症と統合失調症の異同を考える
*土屋 賢治
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抄録

自閉スペクトラム症(以下ASD)とは,小児期早期に顕在化する精神神経疾患の一つである。過去30年にわたり,ASDの有病率が世界的に上昇を続けている。

統合失調症とは,青年期~成人期早期に顕在化する精神神経疾患の一つである。1960年代以降,統合失調症の罹患率が低下している。

精神医学の分類学では,発症時期や症状の違いに基づき別箇の疾患として扱われているASDと統合失調症であるが,臨床的な関連があることも知られている。すなわち,ASD児・者が統合失調症を発症するリスクは一般より高く,統合失調症者がASDを示唆する病歴を小児期にもつ可能性も高い。ASDの原型となる「自閉症」の疾患概念が生まれたのは1940年代にさかのぼるが,当時は,統合失調症の小児発症亜型であると考えられていた。社会機能の障害にもとづく日常生活の困難が見られ,長期の経過をたどるという点で,共通性が見られたからである。

疫学的知見と臨床精神医学の知見を突き合わせると,ASDと統合失調症が生物学的基盤を共有する可能性を指摘できる。また,時代に伴う疫学指標(ASDの有病率,統合失調症の罹患率)の変化の意味するところが気になる。ここにさまざまな科学的関心が生まれるのも理解できる。

以上の理解を受けて,これまでに議論されたことのある,ASDと統合失調症が共軛する仮説的病態モデルをいくつか提示し,今後の研究の発展性について議論する。

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