日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S16-3
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シンポジウム16: 核酸医薬品開発における安全性評価の課題と取り組み
核酸医薬品開発における安全性評価の課題(ビルトラルセンの開発)
*花田 智彦
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抄録

近年、低分子薬や抗体薬に加えて、新たなモダリティである核酸医薬品の開発が増加している。核酸医薬品の非臨床安全性評価に関するICHガイドラインは存在しないが、日米欧のうち日本のみが独自のガイドラインを発出している(核酸医薬品の非臨床安全性評価に関するガイドラインについて、2020年3月;以下、核酸薬ガイドライン)。核酸薬ガイドラインでは、既存のバイオ医薬品のガイドライン(ICH S6:バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床における安全性評価)と低分子医薬品のガイドライン(ICH M3:医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験実施についてのガイダンス)をハイブリッドした評価方法が述べられているのに加え、核酸医薬品に特有の課題であるハイブリダイゼーション依存的なオフターゲット毒性の評価についても記述されている。同ガイドラインは核酸医薬品の非臨床安全性評価における唯一の指針となっている。

ビルトラルセンは上記核酸薬ガイドラインとほぼ同時期(2020年3月)に本邦で承認(条件付き早期承認制度)された国産初のアンチセンス核酸医薬品であり、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬として国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センターと日本新薬株式会社により共同開発された。DMDは、ジストロフィン遺伝子の変異により、機能的なジストロフィン蛋白が産生されないX連鎖性劣性遺伝の筋疾患である。重篤な運動障害等に呼吸筋や心筋の障害が加わり、呼吸不全や心不全により死に至る難治性進行性疾患であるが、これまで根本的な治療法がなかった。ビルトラルセンはスプライシング制御により新たなジストロフィン蛋白を発現させることで、疾患の進行を抑制することが期待される。

今回、前述の核酸薬ガイドラインと比較したうえで、ビルトラルセンの非臨床安全性試験結果及び核酸医薬品の非臨床安全評価の課題を紹介する。

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