2015 年 3 巻 1 号 p. 73-82
目的 自治体に所属する保健師(以下,保健師)の活動において,個別支援のみならず地域のニーズや健康課題の解決のために既存事業の見直しや不足している社会資源を新たに創出するなどの事業・社会資源の創出に関する実践は,専門職でありかつ行政職である保健師の特徴であり,その能力強化は重要な課題である。本研究では,保健師の事業・社会資源の創出に関する実践上の困難の現状を把握し,所属ならびに保健師経験年数による違いを明らかにする。
方法 A県の保健師590人を対象に無記名自記式質問紙による郵送調査を行った。事業・社会資源の創出に関する実践上の困難(以下,実践上の困難)について,先行研究に基づき21項目選定し,実践上の困難の状況を所属・保健師経験年数別に示した。さらに,実践上の困難の「あてはまる」と「あてはまらない」の回答について所属・保健師経験年数別の違いをみるため,Kruskal-Wallis検定(下位検定はBonferroni法多重比較補正)により中央値の差を比較した。
結果 回答が得られた336人(回収率56.9%)のうち不備を除いた313人(有効回答率93.2%)を分析した。所属は,市町村76.7%,保健所設置市14.7%,都道府県8.6%であり,年齢は平均40.8±標準偏差10.1歳,保健師経験年数は平均16.4±10.5年であった。実践上の困難は,すべての所属ならびに保健師経験年数群で,「マンパワー不足である」が最も多かった。所属別では5項目で有意な差が認められ,「行政執務について不慣れで時間がかかる」は市町村と保健所設置市,「組織のビジョンが曖昧でどこに向かっているのか分からない」「事務職や他職種と意見が食い違い折り合いがつかないことがある」「関与できないところで基本的方針が変更されたり決定されて戸惑う」「保健師の仕事や役割が周囲に十分理解されていない」は保健所設置市の保健師が困難を抱えている度合いが高かった。保健師経験年数別では5項目で有意な差が認められ,「事業・社会資源の創出に関するノウハウが分からない」「事業・社会資源の創出に関して苦手意識がある」「事業・社会資源の創出に関する実践の機会が少ない」は1年目~5年目,「保健師間で話し合う時間や機会が十分にない」は26年目以上,「上司に相談しても適切なアドバイスがもらえない」は16年目~25年目と26年目以上が困難を抱えている度合いが高かった。
結論 実践上の困難は,「マンパワー不足である」が最も多く,実践しにくい状況であることが示唆された。所属では保健所設置市の保健師の困難の度合いが高く,保健師経験年数では1年目~5年目は実践機会の不足や実践に関する知識や技術に関する困難,16年目~25年目と26年目以上は組織・環境的なことがらに関する困難の度合いが高いことが明らかとなった。