2007 年 10 巻 2 号 p. 007-021
先進諸国の殆どは,地方自治体が多くの権限を有する地方分権制度を採用しているが,その中でフランスと日本は,国に多くの権限が集中する中央集権制度をとっている.しかしフランスは1980年代初頭から地方分権に向けた動きを開始し,多くの法律を整備し分権化を進めてきた.そして2003年にはその集大成として1956年制定の第5共和国憲法を改正した.この憲法の精神を具体化するために法制度の整備が進められ,この中で交通に関する権限が大幅に地方へ委譲されることが明らかとなった.わが国の地方分権を推進する上で,このフランスのこれらの経験は大変貴重なものである.本研究は,フランスの地方分権について,特に交通分野に重点を置き,1980年代初頭から始まった地方分権の全体像を示すこと,及び2003年の共和国憲法改正以降の分権の方針と委譲する権限を明らかすることを目的とする.