社会学年報
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小特集Ⅱ 震災復興の社会学
津波被災地における協働の取り組みとその影響
福島県いわき市豊間地区を事例に
磯崎 匡
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2017 年 46 巻 p. 69-77

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抄録

 本稿の目的は,福島県いわき市豊間地区を事例として,協働による復興の取り組みが地域社会に与える影響について明らかにすることである.
 福島県いわき市豊間地区では,震災後の地区復興のためのグランドデザインを示すために,地区を構成する豊間,薄磯,沼之内の3区の住民が協力して2013年に市民会議として「海まち・とよま市民会議」が立ち上がった.地域の意思決定においては既存の地域住民組織が大きな役割を果たしていたが,旧豊間中学校震災遺構問題に端を発して地域の意思決定プロセスに変化が見られた.このような変化に対して海まち・とよま市民会議が果たした役割について聴き取りを踏まえて考察を加えた結果,先行研究で挙げられていた,合意形成機能,協働促進機能,自治力向上機能が働いていることがわかった.
 本稿の新たな知見として市民会議の様々な実践を通して,復興まちづくりという場面において行政や各区,住民の意見を集約することが可能となるという知見が得られた.そうして集約したものを提案として各区や行政に提示する形式が作られた.これは行政と住民の間に立ち意見を調整する調整機能というべき機能であると考えられる.

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© 2017 東北社会学会
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