社会学年報
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自由投稿論文
親への移行が性別役割分業意識に与える効果
固定効果モデルに基づく男女比較分析
木村 裕貴
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2020 年 49 巻 p. 63-74

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抄録

 本稿の目的は,性別役割分業意識の個人内変化の規定要因を検証することで,第1子出生による親への移行は性別役割分業意識にいかなる効果を及ぼすのかという問いを解明することである.日本社会を対象とした性別役割分業意識研究には膨大な蓄積があるものの,個人内変化に関する検証が十分ではなかった.本稿では,ジェンダー不平等が尖鋭化するライフイベントとして第1子出生による親への移行に着目し,性別役割分業意識として3つの指標を用いて検証した.パネルデータを用いた固定効果モデルの推定の結果,親への移行が性別役割分業意識に及ぼす影響として,女性においては狭義の性別役割分業意識と母親就労の悪影響意識を非伝統的な方向へ変化させる効果が認められた一方,男性ではいずれも効果が認められなかった.また,とりわけ女性における母親就労の悪影響意識に対する親への移行の効果は,第1子出生からの経過年数が増すにつれ線形で増大することが示された.以上の結果は,現代日本社会におけるジェンダー不平等の根深さを照射しているとともに,育児期の女性が性別役割分業に関するイデオロギーを相対化していくメカニズムを示唆する.人々のライフコースにおけるジェンダー不平等を捉えるうえで,親への移行に焦点化する研究戦略が有効だと思われる.

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© 2020 東北社会学会
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