本研究では,乳幼児期から青年期にかけて,粘土を用いた表現活動に見られる発達段階をまとめることを目的としている。本稿では,中学校第2学年の生徒を対象とし,触覚と表現活動との関係から発達段階の検討を行った。調査の方法として,感触が異なる5パターンの対象物を用意し,生徒に視覚を遮断した状態で1つの対象物を手で触らせ,触って感じたことを紙粘土で表わす活動を行わせた。概念あるいは知覚からの再現を含めて,「写実表現」に選好するかを基軸に,ワークシートの記述や表現物,活動の様子の記録による結果から検討を行った。その結果,知識や経験から具体的な名詞を想起できるものを触った場合,「写実表現」に選好することが分かった。一方,具体的な名詞を想起できないものを触った場合,「写実表現」に向かいにくいが,対象物の形が認識できると「写実表現」に向かいやすいことも分かった。