近年、企業の社会的責任(corporate social responsibility、以下CSR)に取り組む企業が増加する一方で、不正会計問題、さまざまな業界でのデータの改ざん、長時間労働による過労死など法的責任はいうまでもなく、企業倫理が問われるような不正問題が絶えることはない。
このようなCSRと企業不正の混在を打破するには、企業活動におけるゲームのルールの変更が求められ、すでに「より良いものを目指す競争」「コンシャス・キャピタリズム」、「創造的資本主義」ということがいわれている。
本稿では、より良い世界の構築のための企業とステークホルダーの近年の動向を概括した後、ゲームのルールが「より良い世界を構築するため競争」となるための方途として、Positive Organizational Scholarshipという学問領域の中でみられるpositive devianceの思考方法をその手がかりと位置づけ検討を加える。