Venus (Journal of the Malacological Society of Japan)
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原著
日本産ヨメガカサガイ科貝類の成長に伴う殻形態の変化
横川 浩治
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2014 年 72 巻 1-4 号 p. 29-48

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抄録
日本産ヨメガカサガイ科貝類7種(マツバガイ,ヨメガカサ,ベッコウガサ,オオベッコウガサ,クルマガサ,カサガイ,シワガサ)と1亜種(アミガサ)について殻形態の成長に伴う変化を調べた。成長に伴う殻形態変化では,多くの種または亜種で殻径,殻高,内面着色域径などが成長に伴って相対的に大きくなり,特にマツバガイとカサガイでは殻のほとんどの部位で成長に伴う相対的増大がみられた。一方ベッコウガサとクルマガサでは殻の全部位で成長に伴う変化はなく,またシワガサでは殻高が成長に伴って相対的に小さくなることが特徴的であった。殻頂の相対的な位置はカサガイでは成長に伴って後方に移動するが,それ以外の種と亜種では殻頂の相対位置は個体サイズに関係なく一定であった。計数形質としてマツバガイの放射彩数およびアミガサとカサガイの放射肋数を調べたところ,これらすべてで成長に伴う顕著な増加がみられた。内面着色域の色彩は種ごとにかなり独自性がみられたが,オオベッコウガサとカサガイでは成長に伴う明瞭な変化がみられ,小型個体にみられる暗褐色の地色の上に別の色の新たな層が徐々に形成されていくものと考えられた。以上のように,日本産ヨメガカサガイ科貝類では成長に伴って殻の多くの形質が変化し,そのパターンには顕著な種特異性があることが明らかになった。
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© 2016 日本貝類学会
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