2019 年 3 巻 1 号 p. 45-55
ビジネスと人権の問題は、1990年代以降マスコミを介して注目されるようになり、国際社会の課題の一つとなっている。現在、国連人権理事会「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)を軸とする取り組みを、各国内で実施する段階に移っている。ここで考えるべき憲法上の論点は、指導原則等の法的拘束力のない、いわゆる「国際規範」を国内政策に導入する際、各国はそれぞれの憲法を頂点とする法システムの中で、これをどのように理解し、位置づけを与えるかという問題である。
本論文では、まずは、この国際規範の実態的特徴に焦点を当て、その影響力や有効性を明らかにする。つぎに、指導原則を国内政策に取り入れる際の憲法上の論点を明確にした上で、この分野の先進国であるEU諸国と比較して日本の現状や問題点を分析する。すると、それぞれ国内の憲法や法的な位置づけによって受け入れ状況に違いがあることが明らかになってきた。