敬心・研究ジャーナル
Online ISSN : 2434-1223
Print ISSN : 2432-6240
3 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 大谷 修
    2019 年 3 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

    消毒や漂白のために用いられる塩素系製剤はしばしば健康被害をもたらす。塩素系製剤である次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)は水溶液中で加水分解して次亜塩素酸を生じる。この次亜塩素酸が殺菌効果を発揮する。 次亜塩素酸は排水管などの金属を腐食させる。次亜塩素酸ナトリウムはトイレ掃除に使う塩酸や酸性洗剤と反応して有毒な塩素ガスを生じる。塩素ガスを吸引すると、肺水腫などの重篤な呼吸器障害を生じる。レジオネラ感染を予防する目的で温泉水に次亜塩素酸ナトリウムを加えても窒素化合物と反応してクロラミンを生じるので殺菌効果が小さい。塩素処理したスイミングプールにおいても喘息等を発症するリスクが高まり、アレルギー疾患を増悪する。急性胃腸炎を起こすノロウイルス感染を防ぐには、牡蠣などの生食を避けること、感染者に調理や給仕をさせないこと、およびトイレ、ドアノブ、手すり、壁面スイッチなどを適切な濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を含んだペーパータオルで拭くことが重要である。吐物や便は、まず拭き取ってから、床面を次亜塩 素酸ナトリウム水溶液を含んだペーパータオルで拭く。次亜塩素酸ナトリウム水溶液をスプレー等で噴射するのは次亜塩素酸を含んだエアロゾルを吸引するので健康被害をもたらす恐れがあり危険である。感染防止で最も重要なのは手指衛生を保つことである。ノロウイルスはアルコール抵抗性を示すので、頻回に石鹸と流水で少なくとも20秒間手を洗うことが重要である。

  • ―全国神社保育団体連合会の九州ブロックにおける加盟園を事例として―
    安部 高太朗, 吉田 直哉, 鈴木 康弘
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 3 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は、九州地方に所在する全国神社保育団体連合会加盟園の保育・教育理念の特色を明らかにするものである。神道に関連する文言を理念に掲げ、神道行事等を行っている22園分の理念をテキストファイル化し、KHコーダーを用いて保育・教育理念の特徴を析出した。

     神道系園の保育・教育理念では、目指されるべき子ども像として「浄く・正しく・明るい」子どもが掲げられる。「浄く」とは、精神の明澄さを表す。「正しく」とは、実直なさまを表す。「明るい」とは、精神的なエネルギーが充溢した自己の内面を開示して、他者と交流するさまを示す。保育環境として重視されている、神社と一体化した鎮守の森は、神の顕現としての自然の豊かさを湛えることで子どもの心を揺さぶる。自然としての神の脅威に触れ、その恵みに感謝することが、神道園における情操教育の基盤なのである。自然に宿る神は、保護者と共に子どもの成長を見守る水平的・共存的存在である。

  • 小田原 守, 大塚 裕一, 宮本 恵美, 古閑 公治, 久保 高明, 船越 和美
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 3 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本研究は、姿勢の変化が発声時の呼吸補助筋の筋活動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。対象は呼吸器系や筋骨格系、発声器官に既往歴の無い健常成人14名とした。測定姿勢は、背臥位、端座位、直立位の3姿勢とし、測定項目は最大発声時の音圧レベル、同発声時の腹直筋、外腹斜筋の筋活動とした。最大発声時の音圧レベルは、端座位に比べ直立位で大きくなる傾向を示した(p=0.056)。腹直筋の筋活動では姿勢間で有意差は認められなかった。外腹斜筋の筋活動では端座位に比べ背臥位で有意に高い値を認めた(p<0.05)。最大発声時の呼吸補助筋の筋活動は姿勢の違いによって変化すること が示唆された。本研究の結果は、発声練習時の姿勢を検討する一助となることが期待される。

  • 郡山 大介, 大塚 裕一, 飯山 準一
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 3 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     誤嚥性肺炎発症の関連因子について、回復期リハビリテーション病棟や介護老人保健施設での検討は報告されているが、介護療養型医療施設では見受けられない。そのため今回の研究では、A病院介護療養型医療施設での誤嚥性肺炎発症の関連因子を明らかにする事で、施設の特性に合った誤嚥性肺炎発症予防の一助とする事を目的とした。

     方法は施設入所者を対象に、診療録より後方視的に情報を収集し、誤嚥性肺炎との関連性の検討を行った。その後、他施設との比較により特徴的な因子の抽出を行った。

     結果、関連因子として要介護度、呼吸器疾患の既往歴、JCS、摂食嚥下能力グレード、経口摂取の有無、ADL区分の6項目が抽出された。他施設との比較では、呼吸器疾患の既往歴、経口摂取の有無、JCSの3つが抽出された。

     今回の調査により、A病院介護療養型医療施設における特徴的な因子は、呼吸器疾患の既往歴、経口摂取の有無、JCSであることが示唆された。

  • 松永 繁
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 3 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     専門学校における従来の学習継続困難、中途退学に関する研究では、経済的な側面や「学力」の側面から検討されてきた。本研究では、非認知能力の人間関係形成能力をキーワードにして、介護福祉士養成専門学校で学ぶ学生の学習継続困難要因、背景、教員の対応に焦点を当て検討した。結果、課題としては、【構成員からの離脱】【自己中心的な世界観】【孤立させる行動】の概念を生成し、背景では、【理想の子ども像】【スキル形成機会の剥奪】の概念を生成した。教員の具体的支援については、≪個別面談≫≪個別指導≫≪他の教員との情報共有≫≪家族への連絡≫の4つのカテゴリーを生成した。

     結論として、人間関係形成能力の発達途上に学習継続困難となる課題が生じていることが示唆された。

  • ―ビジネスと人権に関する指導原則の実施をめぐって―
    山口 明子
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 3 巻 1 号 p. 45-55
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     ビジネスと人権の問題は、1990年代以降マスコミを介して注目されるようになり、国際社会の課題の一つとなっている。現在、国連人権理事会「ビジネスと人権に関する指導原則」(2011年)を軸とする取り組みを、各国内で実施する段階に移っている。ここで考えるべき憲法上の論点は、指導原則等の法的拘束力のない、いわゆる「国際規範」を国内政策に導入する際、各国はそれぞれの憲法を頂点とする法システムの中で、これをどのように理解し、位置づけを与えるかという問題である。

     本論文では、まずは、この国際規範の実態的特徴に焦点を当て、その影響力や有効性を明らかにする。つぎに、指導原則を国内政策に取り入れる際の憲法上の論点を明確にした上で、この分野の先進国であるEU諸国と比較して日本の現状や問題点を分析する。すると、それぞれ国内の憲法や法的な位置づけによって受け入れ状況に違いがあることが明らかになってきた。

  • ―さくらももこ氏の追悼に寄せて―
    水引 貴子, 歌川 光一
    原稿種別: 評論
    2019 年 3 巻 1 号 p. 63-65
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     近年、故・さくらももこ氏作「ちびまる子ちゃん」は小学校の道徳教材としても活用されている。本稿では、1990年に劇場公開された「ちびまる子ちゃん 大野君と杉山君」の、友情やチャムシップの性差を考える教材としての意義に触れる。

  • ―「教育経営」講義ノート(3)―
    吉田 直哉
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 3 巻 1 号 p. 67-75
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本ノートは、保育職を目指す学生が、教職教養として身につけておくべき教育行政、教育経営に関する基礎的な概念・理論を概説するものである。その際、地方教育行政の基本原則、地域との連携、学校体系、学校組織・学級組織の特色、教員の役割とカリキュラム・マネジメントなどを中心概念として取り上げ、重点的な解説を行った。

  • ―介護助手に焦点をあてて―
    吉田 志保, 半田 仁, 小林 桂子, 齊藤 美由紀, 川廷 宗之
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 3 巻 1 号 p. 99-105
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本研究では、介護人材が不足している現在に日本において、人材の有効活用のために必要な「介護の業務分析」「介護の機能分化(機能分析)」、「介護の職務分析」についての先行研究レビューをおこない、介護における業務内容の分析とその階層化について概観した。

     また、介護の周辺業務を担う「介護助手」について、「ハローワークインターネットサービス」を用い、現状と課題について考察した。

     結果として、先行研究レビュー「介護の業務分析」「介護の機能分化(機能分析)」「介護の職務分析」をキーワードとした研究論文が乏しく、今後の介護職員の有効活用を視野とし議論するうえで、大きな課題があった。今後は介護職員の業務内容を、実態に沿って明確化していくことが必要であると考える。

     そして介護の職務内容を精査し「介護助手」を活用する事で、先行研究では、「介護助手」として働いた高齢者が「充実感や働く楽しみ、自信がついた」との結果や、介護現場の変化として、「周辺作業負担が軽減されたことにより、個別対応が可能となり、ケアの質が向上してきた」など、一定の効果が得られた。

     しかし、「ハローワークインターネットサービス」における「介護助手」の求人を精査すると、「介護助手」の区分での求人ではあっても、身体介護を伴い、今だ「介護助手」の定義が定まっておらず、介護職員との業務内容のすみわけが想定されていない現状が分かった。

     今後は実際に働いている「介護助手」や施設に聞き取り調査をし、より現実に基づいた調査研究が必要である。

  • ~業務分析評価方法に焦点をあてて~
    半田 仁, 吉田 志保, 小林 桂子, 齊藤 美由紀, 川廷 宗之
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 3 巻 1 号 p. 107-113
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本研究では、少子高齢化が進行する日本の深刻な問題である高齢者介護について、介護サービスに従事する従業員の不足感の対応策を得るために、「介護の業務分析」「介護の機能分化(機能分析)」、「介護の職務分析」についての先行研究レビューをおこない、介護における業務内容の分析とその階層化および評価方法について概観した。

     介護業務の担い手には、外国人を含めて多くの様々な力量を持つ人が関わるようになっているが、一方で、介護業務それ自体もニーズの多様化もあり、業務執行の内容には、難易度や多様性が大きく広がり、一律の業務執行では対応が難しくなっている。

     その為、業務内容の分析を、職務内容と階層性を考慮しつつ整理し、仕事を依頼する時に、マニュアルとしての内容も含め、一定の書類として提示して具体的な内容を確認する必要がある。

     また労務管理システムの合理化も含め、介護業務の様々な分担が可能になると共に、特定業務を担える人は増えるので介護業務への就労者を増やすこともできる。

     この程度の業務分析は、一般企業では当たり前だが、介護では、まだ一部企業系介護施設等でしか行われておらず、一般化もされていない。

     慢性的な従業員の不足感の原因が明確化されないままに進行されていると考えられるが、適切な業務を分析することにより、従業員の不足感および多忙の原因が明確化し、改善策を得られる可能性および行う業務に対して、才能があり、役に立つ人や有能な人物(以下、人材)の確保にも繋がるのではないかと考えられる。

  • ―日本カトリック幼児教育連盟の横浜教区(神奈川・山梨・長野・静岡)に着目して―
    鈴木 康弘, 吉田 直哉, 安部 高太朗
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 3 巻 1 号 p. 115-123
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は、カトリック系の幼稚園・保育所の保育・教育理念の特色を明らかにするものである。日本カトリック幼児教育連盟の横浜教区に加盟している56園を対象とし、これらの園が、Webサイト上で公開している保育・教育理念のテキストファイルを、計量テキスト分析の手法(KHコーダー)を用いて、分析した。

     分析の結果、プロテスタント系の園と同様に、心や精神などの情操を重視する傾向が見出された一方で、カトリックという宗派性や文化に対する強調が見出された。園の理念のなかで用いられる「マリア」という言葉には、子どもに対するケア・保護のモデルとしてだけでなく、他者への感謝や愛情を表現することができる理想としての子ども像が示されていた。また、そのようなカトリック精神に基づく保護と子どもの能力を適切な方法で伸ばすのにふさわしい教育方法として、モンテッソーリ教育に取り組んでいる園も存在している。

  • ―序論―
    島谷 綾郁
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 3 巻 1 号 p. 125-134
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本研究では、「監獄法」から「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の法改正、行刑改革に基づく刑務所におけるソーシャルワーカーの配置等について概観することにより、今後、刑務所等におけるソーシャルワークの業務課題とソーシャルワーカーのあるべき姿について考察することを目的とする。

     その結果、刑務所等におけるソーシャルワーカーには、①業務整理及び業務指針を設けること、②スーパーバイズの体制づくりを整備し、③ソーシャルワーカーとしての知識・技術、④生活モデルの実践展開、⑤被害者理解を会得すること、が刑務所等におけるソーシャルワーカーのあるべき姿につながるのではないかと考える。

  • 川廷 宗之
    原稿種別: 研究ノート
    2019 年 3 巻 1 号 p. 135-140
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/16
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は、「介護」は社会経済的に考えて消費的経費ではなく、投資的経費であるという点について、考察を行うことである。投資的経費として考える場合、要介護者本人の生産的活動支援と、家族介護などによる生産性低下の防止という、二つの意味を説明する。

     更に、介護が生産的意味を意味せず消費的介護となる場合は、高齢期の要介護者の生存の意味が、根底から問われることになる。高齢期の生存の意味が問われるということは、人間としての基本的価値への疑問と直結する。従って、介護の社会経済的意味を問うのは、重要な意味を持つ課題である。

     なお、介護とは、障害などによって活動制限状態にある人の活動支援に関する行動を意味している。

feedback
Top