2005 年 79 巻 1 号 p. 3-11
1. フレンチパラドックスが巷間の話題となって以来, ワインに含まれるポリフェノールの生理機能性が注目されるようになってきた. フレンチパラドックスとは, 「フランス人では飽和脂肪摂取量が多いにも関わらず冠状動脈疾患の罹患率が低いのは, ポリフェノールに富む赤ワインを摂取するためである」とする仮説である. 赤ワイン中にはポリフェノールが800mg/kg程度含まれるが, その多くはカテキン, エピカテキン, アントシアニジン色素等のフラボノイドやこれらの重合物である. フラボノイドは野菜や果物にも多く含まれているが, 1994年にオランダのHertogらは野菜からのフラボノイド摂取量が多いほど冠動脈疾患による死亡率が少ないという疫学調査を発表した. 40〜59歳の男性12,763人を25年間にわたって観察したSeven Country Studyでもフラボノイドの平均摂取量は冠動脈疾患罹患率と逆相関することが明らかとなった. これらの疫学調査報告から, フラボノイドは抗動脈硬化因子として俄然注目されるようになった.