2022 年 53 巻 p. 19-28
現代は機器分析全盛時代である.機器分析法にはX線に代表される放射線で極微の世界を見ることも行われている.それ以前における分析化学の歴史を理解していることは機器分析の結果(数値)を試料への分析化学的考察に立脚して評価する際に参考になると考える.本稿の構成は19世紀後半,実験(教)室を重視して分析化学を教授したリービッヒ(Justus von Liebig,1803~1873)を中心に据え,リービッヒ以前,リービッヒの時代,そしてリービッヒ以後に分けて述べてある.本稿には日本の分析化学の歴史に関わる断片も含めてある.イギリスの産業革命がもたらした17世紀後半からの蒸気機関を動力源とした工場や船舶,鉄道などの製作はそれらにかかわる技術,理論の進歩を促した.とくに蒸気機関にかかわる熱力学の寄与と製鉄に関わる相平衡や相律の考えを取り込んだ製鉄産業界の話は現代も参考にすべきところがあると思われる.