日本外科系連合学会誌
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症例報告
小腸腸間膜裂孔ヘルニアの絞扼性イレウスをきたした高齢者の1例
村田 晃一川嶋 隆久大村 和也加藤 隆之渡邊 友紀子安藤 維洋陵城 成浩吉田 剛岡田 直己遠山 一成
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2014 年 39 巻 1 号 p. 70-75

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抄録
【目的】高齢者の小腸間膜裂孔の内ヘルニアによる紋扼性イレウスの1治験例に,文献的考察を加え報告する.【症例】90歳女性.(既往歴)糖尿病,脳梗塞,虫垂炎術後,副鼻腔炎術後,左乳癌術後,左大腿骨骨折術後,腰椎圧迫骨折.(現病歴)8月某日より腹痛を認め,翌日腹痛増悪したため近院受診.造影CT検査にて絞扼性イレウスが疑われ,手術目的にて当院へ転院搬送となった.(来院時現症)腹部緊満と右側腹部~下腹部の圧痛を認めた.Blumberg徴候,筋性防御はなし.血液ガス分析にて乳酸値の軽度上昇を認めたが,逸脱酵素値の上昇は認めなかった.造影CTでは上行結腸の外側に造影効果不良で著明に拡張した小腸を認めた.腹水穿刺を行ったところ性状は淡血性であり,紋扼性イレウスの診断にて緊急手術となった.(手術所見)多量の血性腹水と回盲部腸間膜に欠損孔を認め,同部位に回腸が嵌頓し壊死していた.絞扼部を解除し,腸管虚血部を含めた60cmを切除,端々吻合し手術終了とした.術後経過は良好であった.【結語】画像検査の詳細な読影が小腸間膜裂孔の内ヘルニア診断の一助になりうると考えられ,リスクが高い高齢者でも迅速かつ適切な治療を行うことによって良好な予後が得られる.
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© 2014 日本外科系連合学会
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