抄録
1. 分離採取した濃厚豚精液を, 独自に調整した緩衝粉乳糖液で2~3倍に稀釈した後, 温水の入ったビーカーに浸漬して15℃の低温恒温機に収容して保存する15℃保存と, 温水の入ったマホービンに浸漬して冷蔵庫 (3℃~5℃) に収容し, 約24時間かけて5℃まで温度降下, 保存する5℃保存における精子生存性の推移を比較した。活力生存率の検査は, 保存精液を37℃で20~30分間加温振盪した後, 鏡検する方法で行なった。
15℃保存においては, 保存3日目までは5℃保存を上廻ったが, 4日目で急激に低下し, 5日目では極く少数精子が微弱な運動を示すのみとなった。
一方, 5℃保存においては, 保存初期では15℃保存を下廻ったが, その後の低下はあまりなく, 7日目まで授精可能な活力, 生存率を保持した。
2. 1~7日間5℃に低温保存した豚精液を, 37℃で20分間加温振盪し, 精液温を37℃まで上昇させるとともに, 活力の回復を行なった後注入した。
30頭中22頭 (73.3%) が受胎, 分娩をし, 産子数は1~16頭 (平均8.5頭) であった。
保存日数が長くなると受胎率や産子数が低下する傾向はみられなかった。