日本養豚研究会誌
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13 巻, 2 号
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  • (1) 膣粘液のpHによる種付適期の判定法について
    上山 謙一
    1976 年 13 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 1976/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    人工授精を広く普及するために, 養豚農家において雌豚の種付適期を容易に見つけるための一方法として, 発情中の雌豚の膣粘液のpHを測定することによって, 種付適期を把握することができないか試験をした。その結果を要約すると次のとおりである。
    BTB試験紙による測定と携帯用pHメーターによる測定とでは測定結果に違いがあった。これはBTB試験紙は豚舎内の空気が汚れておる場合には容易に反応するので不正確になり易い, したがってpHメーターを用いて測定するのがよいと考えられる。pHメーターによる測定結果からみると,
    発情開始日の膣粘液のpHは豚の品種, 年令をとわずpH7.3以上の弱アルカリ性を呈し, これが雄豚を許容するようになると, 各品種ともpH7.2~7.3を呈するようになり, この状態は雄豚を許容する期間中は継続するようである。発情が終了し雄豚を許容しなくなると, 膣粘液のpH値は雄豚許容期間中よりわずかに低くなる傾向がある。
    種付日の膣粘液のpH値と受胎との関係は, 経産豚ではpH7.2~7.3の日の種付ではL種93.8%, W種66.7%, H種92.3%の受胎率で良好な受胎成績であった。未経産豚についてもpH7.2~7.3の種付であれば, 経産豚ほどの受胎成績をあげることは困難ではあるが, 未経産豚であるということを考えればかなりの良好な受胎率であった。
    一般的に発情発現とともに膣粘液のpHは7.3以上の弱アルカリ性となり, これが雄豚を許容して種付適期をむかえると, pHは7.2~7.3とわずかに低くなり, 発情が終了し種付適期をすぎるとpHはさらに低くなる傾向がみられた。発情開始後の雌豚の挙動, 外陰部の状態を観察し, その状態が種付可能と判断され, 膣粘液のpH7.2~7.3を示した日が人工授精における豚の種付適期と考えられる。
  • III. 卵巣周期と発情徴候周期との関連性の検討
    丸山 淳一, 宮原 強
    1976 年 13 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 1976/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    豚の卵巣周期と発情徴候周期との関連性を, 卵巣および膣前庭の組織学的な観察によって検討した。卵巣と膣前庭の組織は65頭の豚の発情徴候周期の異なった時期に採取した (発情前期12頭, 発情期11頭, 発情後期10頭, 発情休止期32頭)。
    1. 豚の卵巣周期は卵巣の肉眼的および組織学的観察によって区分した。
    前卵胞期: 卵巣には成長グラーフ卵胞が現われて, 卵胞は直径5~7mmであった。顆粒層の厚さは50~65μ, 卵胞膜内層の厚さは40~55μであった。
    後卵胞期: 卵胞は成熟して8~10mmの大きさであり, 顆粒層および卵胞膜内層の厚さはそれぞれ35~55μおよび35~45μであった。
    排卵期: この時期の卵胞は直径8~12mmであり, 破裂卵胞は破裂口に出血が見られた。
    前黄体期: この時期の卵巣は破裂卵胞が特徴であり, 卵胞破裂口の出血は消失していた。
    中黄体期: 卵巣の肉眼的観察では開花黄体があり, 黄体の大きさは直径9~14mmであった。
    後黄体期: この時期の卵巣には退化黄体と直径4~6mmの成長卵胞があった。
    2. 卵巣周期と発情徴候周期との膣前庭粘膜上皮細胞層の厚さについて, 最も厚い時期は排卵期の148μ, 発情期の138μであり, 最も薄い時期は中黄体期の36μ, 発情休止期の39μであった。
    3. 卵巣周期と発情徴候周期との関連性において, 発情前期と後卵胞期, 発情期と排卵期, 発情後期と前黄体期, 発情休止期と中黄体期とが関係があった。
  • I 一般市場流通枝肉の理化学的特性
    矢野 幸男, 高坂 和久, 新村 裕
    1976 年 13 巻 2 号 p. 94-98
    発行日: 1976/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    通常の市場に供給すべく生産された肉豚の中から品種や飼育履歴の明らかなもの159頭を選び, ほぼ同時期に同一条件下でと殺し, その胸最長筋について, 色調, 保水性, テクスチャーなど, 肉特有の性質をあらわす理化学的性質を調べた。
    その結果, UCS表色法による色値, 加圧ろ紙法, あるいは加熱遠沈法による保水性, 加熱遠沈法による結着性およびテクスチュロメーターによる硬さ, 凝集性, ガム性, 咀しやく性のうち, 色値中のa成分を除いては, いずれも多くの報告の中で一般的に見出されるとほぼ同様の値が得られた。標準偏差や変異係数の大きさから判断して, これらの結果は一般的な豚肉の性質を示す標準値として十分採用し得るものであると思われた。
    それぞれの性質について, 品種間の差異を統計的に検討した。その結果, 調査したほとんどの性質において品種間に相違の認められることがわかった。ただし, それぞれの性質における品種間の優劣は, その性質毎に異なっており, 大量観察的にはそれぞれの品種毎に肉質上特性が見出されることが明らかになったに過ぎなかった。
  • II 理化学的特性による選択の基準について
    矢野 幸男, 高坂 和久, 新村 裕
    1976 年 13 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 1976/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    一般的に良質と目される豚枝肉の肉質は, 色値, 保水性, 結着性およびテクスチャーを示す諸性質において, どの様な値を示すかを知る目的で, 第6回全日本肉豚共進会において上位に擬賞された肉豚の枝肉のロースを入手して調べた。
    その結果, これらの豚の肉は一般市場において得られる豚肉に比べ, 色が濃く, 明るく, 保水性, 結着性が高く, ことに加熱遠心法による保水性や結着性の測定において認められる分離液量は一般に流通する豚肉のほぼ半分であることが判った。
    テクスチャーについては, 共進会において上位に入賞したもののほうが, 硬さ, ガム性, 咀しやく性において高い値を示すものを含んでおり, どちらかと言えば, 通常の豚肉よりかたく, しまりのあるものが良いと考えられていることを示唆するような結果が得られた。
    色値, 保水性, 結着性については品種間の違いが, 一般の枝肉と共進会において得られた枝肉ではほぼ同じ傾向を示したが, 凝集性を除く, 他のテクスチャーを示す諸測定値では必ずしも一致しなかった。したがってこのテクスチャーを示す諸数値についての品種間の比較については, なお検討を要するように思われた。
  • II. 低温保存豚精液の精子生存性と受精能力
    糟谷 泰, 河部 和雄
    1976 年 13 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 1976/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    1. 分離採取した濃厚豚精液を, 独自に調整した緩衝粉乳糖液で2~3倍に稀釈した後, 温水の入ったビーカーに浸漬して15℃の低温恒温機に収容して保存する15℃保存と, 温水の入ったマホービンに浸漬して冷蔵庫 (3℃~5℃) に収容し, 約24時間かけて5℃まで温度降下, 保存する5℃保存における精子生存性の推移を比較した。活力生存率の検査は, 保存精液を37℃で20~30分間加温振盪した後, 鏡検する方法で行なった。
    15℃保存においては, 保存3日目までは5℃保存を上廻ったが, 4日目で急激に低下し, 5日目では極く少数精子が微弱な運動を示すのみとなった。
    一方, 5℃保存においては, 保存初期では15℃保存を下廻ったが, その後の低下はあまりなく, 7日目まで授精可能な活力, 生存率を保持した。
    2. 1~7日間5℃に低温保存した豚精液を, 37℃で20分間加温振盪し, 精液温を37℃まで上昇させるとともに, 活力の回復を行なった後注入した。
    30頭中22頭 (73.3%) が受胎, 分娩をし, 産子数は1~16頭 (平均8.5頭) であった。
    保存日数が長くなると受胎率や産子数が低下する傾向はみられなかった。
  • 古橋 圭介, 梅本 栄一, 小山 昇, 菅原 幸
    1976 年 13 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 1976/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    養豚飼料の粒度が, 消化率やふんの諸性状に及ぼす影響について調査するため, 同一配合内容で, 粒度だけが粗粒 (成鶏配合用篩通過), 中粒 (通称, 神奈川豚検4号), 微粒 (人工乳後期用篩通過) と明らかに異なる3種類の配合と, この粗粒飼料にイエローグリース (YG) 5.2%を添加した高エネルギー飼料の4種を試作して, 消化試験をはじめ, 諸調査を行ない次の結果を得た。
    1. 排ふん量は, 粒度が粗くなるにつれて増量し, 摂取量に対する排ふん率でも粗粒化するほど高い値を示した。飲水量, 排尿量は個体差が大きく, 粒度による差は認められなかったが, 両者の相関は極めて高かった。(r=0.974)
    2. 消化率は, 各成分とも粒度によってかなりの差が認められ, いずれも粒度が小さくなるにつれて消化率が向上する傾向を示したが, 特に粗せんいでその差が明瞭であった。
    また, 微粒と中粒の差より, 中粒と粗粒の消化率の差の方が大きく, 粗粒区の粒度は消化利用性からみて過大であることが推察された。
    3. ふんの肉眼的性状では, 微粒, 中粒区のふんは表面が滑らかで固く, 輸郭鮮明な塊状を保っていたが, 粗粒区では粗大なとうもろこし穀皮が表面に目立ち, 外圧に対して脆く崩れ易かった。また, 粗粒にYGを添加した区の性状も粗粒区と同様で, 市販の油脂添加飼料の場合と非常に異なったが, これは基礎飼料の粒度の差によるものと考えられる。
    4. ふんの水中における経時的性状変化でも, 微粒と中粒ではほとんど差がなく, 2~4時間後でもかなりよく形を保っていたが, 粗粒区およびYG添加区では, 30分後の攪拌でほとんど崩解した。
    5. ふん中にある未消化固形物の粒度分布と篩別分離率については, 飼料粒度に比例してふん中未消化物の粒度も粗くなり, 篩別分離率も高まる傾向がみられた。特に粗粒区ではとうもろこしの穀皮がほとんどそのまま排泄され, これが粗粒区の形状, 性状に大きく影響していることが推察された。
  • 1976 年 13 巻 2 号 p. 115
    発行日: 1976/09/30
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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