抄録
養豚飼料ではリジンが第1制限アミノ酸になり易いが, 最近, 高リジン含量の裸麦が四国農業試験場で開発された。この新系統の裸麦 (四国79号) の豚に対する栄養価を明らかにする目的で, アミノ酸分析, 豚小腸液を用いる人工消化試験および豚による代謝試験を, トウモロコシを対照として実施した。代謝試験は, 体重30kgの子豚6頭を代謝ケージに収容し, 裸麦単味, トウモロコシ単味およびトウモロコシ+大豆粕の3種類の飼料を1日1,200g宛給与し, 予備4日, 採糞採尿4日の8日間を1試験期間として2期にわたって実施した。1) 裸麦の原物中蛋白質 (CP) およびリジン含量はそれぞれ13.4および0.68%で, CP含量は日本標準飼料成分表に示された裸麦の11.2%よりも高かった。CP中のリジン含量は5.1%で, トウモロコシの2.8%よりも著しく高かった。2) 人工消化試験による原物中のDCPおよび可消化エネルギーはそれぞれ11.7%および3.14kcal/gで, トウモロコシのそれぞれ6.1%および2.90kcal/gよりも高かった。3) 代謝試験によると, 裸麦およびトウモロコシのCPの見かけの消化率はそれぞれ83.7および75.2%で裸麦が高かった。また, エネルギーの消化率はそれぞれ86.4および84.6%, DEは3.28および3.17kcal/g, 代謝エネルギーは3.19および3.11kcal/gとなり, 裸麦が僅かに優れる傾向がみられた。窒素の1日蓄積量は, トウモロコシ単味飼料が3.5gであったのに対して, 裸麦単味およびトウモロコシ+大豆粕飼料ではいずれも10.1gであった。4) 以上の結果から, 新たに開発された裸麦は, CPおよびリジン含量が高いばかりでなく, その利用性も優れていると判断された。