アジア民族文化研究
Online ISSN : 2435-4961
Print ISSN : 1348-0758
18 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ―音声表現の視点から―
    劉 穎
    2019 年 18 巻 p. 1-32
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2022/05/23
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     女書が発見された中国湖南省江永県上江墟鎮の一帯は漢民族とヤオ族との混住地である。そのことから、女書がそもそも漢文化に属するものかヤオ文化に属するものかという議論が起こっている。歌って表現することを理由として、女書をヤオ文化と結び付けようとする見方も根強い。筆者は、これまでの女書の歌い方の研究結果と、ヤオ歌と漢詩の音声表現に関する先行研究を踏まえながら、現地調査の事例を通じて、音声表現の視点から女書の民族帰属について探ってみることにした。結果としては、女書の音声表現のみではその民族帰属を判別することはできないということになった。

  • ―エリアーデのシャーマニズム論とその再検討―その2
    菅原 壽清
    2019 年 18 巻 p. 33-64
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2022/05/23
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     紙幅の都合もあり、元原稿を二つに分割した。今回は、前号の続きである。前号では、エリアーデの英語版“Shamanism”を全て拙訳し、その要旨を掲載した。今回は、その要旨に基づき、エリアーデの「エクスタシーのシャーマニズム」は「脱魂のシャーマニズム」ではないこと、さらにその論証を「雲南のシャーマニズム」として論じた。

  • 富田 美智江
    2019 年 18 巻 p. 65-76
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2022/05/23
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     族譜は、宗族を形成する柱の一つとして、古くから編纂されてきた。だが、その用途は時代によって異なり、宗族の成員を確認するためという側面が主となる宋代以降に対し、古代においては出自や社会的地位の証明としての意味合いが強かった。何世代前までを祖先として意識していたのか、族譜資料に乏しい唐代以前について、祖先祭祀の範囲から推し量ってみると、王権の正当性を示す必要のある王室以外は、殷代から戦国時代のいずれの時代も、おおよそ遡って三世代から五世代の範囲であり、それが儒家思想に影響し、漢代以降へと続いていく。だが諸侯たちの始祖伝承は、政治情勢社会情勢の変化に応じて、創作されていった可能性がある。周代以降、王朝の始祖に感生説話が付与されるようになるが、漢王朝は建国者の劉邦自身に感生説話を語り、少なくとも前漢の『史記』編纂の段階では、劉邦を古帝王と結びつけるような系譜の創作をしなかったところに特徴がある。

  • 遠藤 耕太郎
    2019 年 18 巻 p. 77-89
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2022/05/23
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     麗江の土司であった木氏の「木氏歴代宗譜」(1842年建立)が現存している。この系譜で注目すべきは、木氏四十一代の系譜の前に、漢字の音仮名や訓読みによるナシ語表記によって、ナシ族の天地開闢以来の神話的系譜が刻されていることである。つまり、木氏四十一代の系譜は、天地開闢以来の神話的系譜と結びつけられているということだ。こうした系譜のありようは、古代日本の天皇家(ひいては現在の天皇家)の系譜の形式と類似する。そして、神話的系譜と歴代系譜が結びつけられる系譜は、中国の古譜にも宗譜にもない独特なものである。

     本稿では、神話的系譜と歴代祖先の系譜が結びついていることの意義について、ナシ族とモソ人(ナシ族東部方言話者)の民間系譜を参照としながら考察を加え、そこに彼らの世界観を見出す。

  • 工藤 隆
    2019 年 18 巻 p. 91-113
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2022/05/23
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     記紀の天皇系譜は、700年代初頭に、中国皇帝の男系男子継承の影響を受けたうえで、文字で固定化されて権威化された。しかし、日本列島民族は500年代末ごろまでは基本的には無文字文化だったのだから、500年代末ごろまでの初期天皇系譜には、記紀成立時の男系継承観念が逆投影された、創作・変改・捏造などが含まれている。そこで、中国少数民族など無文字民族の系譜伝承形態を素材として、モデル論的に初期天皇系譜の実相を探る。

     父系の中国少数民族は、代々の父から息子への連鎖を「父子連名」として語る(唱える)。一方で、中国西南部には、現在も母系制だったり、今は父系制だが昔は母系制だった少数民族がいくつか存在する。私の2002年の雲南省孟連での、母系制を残すワ(佤)族社会の系譜調査資料などをもとにして、日本古代の古墳時代の大王(天皇)の系譜が、父系(男系)だけでなく、母系(女系)も併用された双系であった可能性が高いことを示した。

  • 遠藤 耕太郎
    2019 年 18 巻 p. 115-119
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2022/05/23
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  • ――喬后鎮白(Bai)族の婚姻儀礼と哭嫁歌
    富田 美智江
    2019 年 18 巻 p. 121-128
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2022/05/23
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     中国には、婚姻儀礼で哭嫁歌、すなわち花嫁やその親族たちが別れを惜しむ言葉を哭きながらうたうという習俗を持つ民族が散見するものの、白族の哭嫁歌についての報告は極めて少なかった。本稿は、筆者が取材した喬后鎮白族の結婚式で見られた、新婦の母と姉による哭嫁歌の概要と歌詞の一部を報告することで、白族の歌文化に関する新たな資料を提供するものである。また、自力では立ち上がれず支えられながら哭きうたう様や、残される自分たちの今後の不安をうたう歌詞など、喪葬儀礼の哭きうたとの共通点が見られることも指摘する。

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