ツシマノダケは対馬のみまたは対馬と韓国にのみ分布し,まれな植物である.準絶滅危惧種(NT)とされていたが,2012年8月発表の環境省第4次レッドリストでは絶滅危惧IB類に指定された.本種の分布と現状を把握するために標本および現地調査を行った.標本調査では合計36点の標本を確認し,1901年以降,対馬の龍良山,白嶽,有明山周辺,御岳および豊崎の5地点で採集されていることが分かった.しかし,現地調査の結果,龍良山で72個体,白嶽で16個体しか確認できず,有明山周辺,御岳および他の調査地では個体の生存を確認することはできなかった,開花個体は龍良山の4個体のみであった.ツシマノダケが分布している(していた)場所は自然度の高いミヤマシキミ-アカガシ林の分布と一致し(豊崎を除く),過去110年間の自然林の縮小がツシマノダケの分布域縮小を招いていると考えられる.
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