CAMPUS HEALTH
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特集:イントラ~ポスト・コロナ時代のキャンパスヘルス
原著論文
  • 大島 紀人, 荒井 穂菜美, 落合 舞子, 鬼塚 淳子, 横山 孝行, 榎本 眞理子, 高野 明
    2022 年 59 巻 2 号 p. 32-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    学生同士の支えあいであるピアサポート活動は,日本の大学の約半数で実施されている。その活動の一つであるピアエデュケーションは,性教育ほか様々なテーマの教育場面で試みられているが,その効果検証は十分でない。本研究では,ピアサポートをテーマとした教育プログラムを大学生ピアサポーターと教員が実施し,その効果の比較を行った。大学生を無作為に2群(学生ピアサポーターが講師:Aグループ21名,教員が講師:Bグループ22名)に分け,ピアサポートをテーマとした講義・実習からなる教育プログラムを実施した。終了後に自記式質問紙でプログラムの効果を尋ねた。プログラムの理解度,満足度,有用性いずれも肯定的な評価が得られたが,卒業後の社会生活における有用性についてはBグループで評価が高かった。ピアサポート活動への関心や参加意欲についても肯定的な回答が多かったが,いずれもBグループで評価が高かった。自由記述による感想を比較すると,Aグループではアウトリーチのグループワークに肯定的な感想が多く,Bグループでは将来の有用性に肯定的な感想が多いという差が見られた。本研究でピアエデュケーションは,特に参加者と直接交流するような実習(例えばグループワーク)で有用であることが示唆された。ピアサポーターと教員が協働することで,その効果をより高めることができると考えられた。
  • 西谷 崇, 森 麻友子, 岩谷 潤, 林 佐智代, 小河 健一, 山本 明弘, 柳川 敏彦
    2022 年 59 巻 2 号 p. 38-43
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    大学の保健管理施設では学生のメンタルヘルス問題に対してそれぞれの実情に合わせた取り組みをこれまで実施してきた。今回,大学における困り感を抱える学生に対しての,集団を対象としたメンタルヘルスの取り組みの実態について,文献検討から明らかにした。医中誌Webを用いて,2021年1月に,大学,高等教育機関,大学生,学生保健医療サービスをキーワードとして,原著論文,抄録ありで絞り込み検索をした(970編)。検索した論文から,本研究の目的に即した「大学または高等教育機関での困り感を抱える学生に対する,集団療法や自助グループ,居場所等の集団に働きかける取り組み」である論文を抽出した結果,最終的に抽出された適格論文は12編(7大学での取り組み)と非常に少なかった(居場所の提供の記載は4大学,自助グループやピアサポートの記載は4大学,プログラムの介入の記載は4大学であった)。適格論文からは,集団を対象とした取り組みが学生に対して効率的で集団特有の良い影響を与える可能性について示唆されており,その重要性の認識と,今後更なる知見の積み重ねや多角的視点での検討が必要と考えられた。
  • 菊池 華代, 横田 仁子, 加藤 多津子
    2022 年 59 巻 2 号 p. 44-49
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    本学医学部の学生を対象に,ヘルスリテラシーに対する理解度の調査および,低用量ピルに対する意識調査をGoogleフォームを用いて実施した。ヘルスリテラシーについては,高学年ほど理解度が高いことが分かった。本調査の回答学生の低用量ピルの服用率は30%であり,使用目的の多くは月経に伴う疾患の治療を兼ねていた。低用量ピルの服用経験がない人の中には低用量ピルに関する細かな正しい知識がないことが低用量ピルへのアクセスを妨げていると考えられる。
  • ―信州大学と他大学との比較―
    山﨑 勇, 德永 まゆ子, 金井 美保子, 山岡 俊英, 森光 晃子, 山﨑 暁, 高橋 徹, 高橋 知音, 森田 洋
    2022 年 59 巻 2 号 p. 50-56
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の大学における自殺者数は,2019年まで過去8年間は減少傾向にあったが,2020年のコロナ禍において増加に転じた。大学生の自殺については,全国的な調査も実施されているが,大学間で取り組みに差があり,その実態には未解明な部分が残されていると考えられた。本研究では信州大学で発生した自殺事例の分析を行い,他大学等の報告(富山大学・筑波大学・全国調査)と比較することで,大学生の自殺のリスク要因とこれまでの予防対策の限界,今後の課題について考察した。当大学でのリスク要因としては,「学期や年度の切り替わり時期」「学業的つまずき」「一人暮らし」「性別」「文系学部・理系学部の別」等が考えられたが,他大学との比較では,その特徴に相違もみられた。自殺予防対策では,ハイリスク学生に対するアプローチが選択肢のひとつだが,その実施方法や効果の有無には検討すべき課題も多い。今後,大学間で情報を共有し,その特徴を検討していくことが,大学生の自殺対策につながるものと考えられた。
  • 後上 亜友美, 大熊 恵子
    2022 年 59 巻 2 号 p. 57-62
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】酒席での多量飲酒により健康問題が生じた大学生の飲酒に対する認識の変化を明らかにし,大学生が酒と上手に付き合うために必要な支援の示唆を得ることとした。
    【方法】酒席での多量飲酒により健康問題が生じたことがある大学生10名に半構造化面接を実施し,データを質的帰納的に分析した。
    【結果】健康問題発生前の認識と健康問題発生後の認識では【ほどよく飲みたい】という思いが共通していたが,健康問題発生後の飲酒への認識の【ほどよく飲みたい】という思いの中で<たくさん飲む飲み方はしたくない>と<問題が起きない酒量を知る必要がある>という飲み方に関する認識が変化していた。また,健康問題発生後の認識では<場の雰囲気で飲んでしまうかもしれない><勧められたときに断れるか不安>という周囲との関わりに関する思いがあった。【ほどよく飲みたい】思いがあるが【飲みすぎてしまうことへの不安】も抱いており,酒席を振り返り今後の自身の飲み方を考え,健康問題が発生しないように考えていた。
    【結語】大学生が酒と上手に付き合うための支援として,【ほどよく飲みたい】という思いを強化するため,酒席を振り返り今後どのように飲酒するのか自己決定できるよう関わる必要性が示唆された。
  • ―Web相談受付フォーム導入後1年経過時の報告―
    緒方 敦子, 面高 有作, 松田 優里奈, 松尾 寿栄, 佐藤 武, 丸山 徹
    2022 年 59 巻 2 号 p. 63-69
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    九州大学は来談及び対面での面談が困難な状況下で,一括して受付可能な「Web相談受付フォーム」(以下,フォーム)をHP上に設置した。本研究では,フォームを導入した2020年度における支援対象学生の動向について報告し,コロナ禍の学生支援におけるコーディネーターの在り方とその意義について考察を加えた。対象は,2020年度にコーディネート室(以下,CN室)を利用した学生706名とした。また,2018年度と2019年度にCN室を利用した学生667名を比較対象とした。CN室の利用状況の推移を見ると,2020年度は2018年度及び2019年度よりも利用者が激増し,自発利用者の割合が11%(2018年度,2019年度)から53%(2020年度)と例年の約5倍に増えた。また,CN室が支援者や関係者の間で調整的な役割を担うことで,学生に対し複数の支援を同時に提供することが可能であることも明らかとなった。このような変化から,CN室では学生支援において学生の状態把握や支援方針の決定を行っていることが示唆された。このようなコーディネート機能は,学生の状態が見えづらいコロナ禍において,支援者間の連携を促進させ,学生に対して適切な支援を提供する上で重要な役割を果たすことが考えられた。
  • ―支援学生へのアンケート調査と卒業・退学学生の分析―
    早坂 浩志, 新村 暁
    2022 年 59 巻 2 号 p. 70-76
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル オープンアクセス
    全国の大学で障害学生支援体制の整備が進む中で,今後は障害学生の教育に有効な支援の提供が課題になる。本研究では,大学の支援を受けている学生を対象とした質問紙調査と,支援を受けて卒業・修了・退学した学生の特徴の分析をとおして,学生にとって有効な支援について考察を行った。質問紙調査の結果,学生は障害の種別に関わらず,支援部署が学生の障害特性と必要な配慮を教員に伝えて理解を求めることと,学生の大学生活に関する悩みの相談に応じることが役に立っていると評価する傾向があり,発達・精神障害がある学生は,個別の学習支援や居場所支援が役に立っている評価する傾向があることが示された。次に,卒業・修了・退学した学生の特徴の分析により,発達・精神障害がある学生の卒業・修了に大切なのは,学位研究や実習など,高年次になって修学上の支障が出てきた際にすみやかに大学の支援を求められる関係を学生とあらかじめ作っておくことと考えられた。進路については,未定のまま卒業・修了・退学する学生も少なくなく,就労支援の強化が必要であるが,支援部署の修学支援に要する人的資源を考慮すれば,外部就労支援機関との連携が今後の課題と考えられた。
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