CAMPUS HEALTH
Online ISSN : 2432-9479
Print ISSN : 1341-4313
ISSN-L : 1341-4313
最新号
選択された号の論文の22件中1~22を表示しています
特集:忘れてはいけない感染症
原著論文
  • 笹原 妃佐子, 田地 豪, 西村 瑠美, 前原 朝子, 二川 弘樹
    2023 年 60 巻 2 号 p. 26-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    2020年春よりコロナ禍が続き,人々は活動に大きな制限を受け,その行動様式が変化した。そこで,本研究では,コロナ禍における大学生の睡眠状況の実態を調査することを目的とした。2021年度広島大学歯学部歯学科1~6年生327名を対象として,2022年2月から3月にかけて,質問紙調査を実施した。質問項目は,性別,学年,年齢と言った個人の属性に加えて,平日と土日の起床・就寝時刻及び生活習慣や睡眠の状況とした。その結果,241名から有効回答が得られ,8時45分から始まる授業に間に合わないと考えられる8時15分より遅くに平日に起床すると回答した者が50名(20.7%)認められた。また,半数以上が,平日,午前1時以降に就寝すると回答した。調査が実施された時期,広島大学歯学部の授業のほとんどが対面からオンラインに移行しており,そのオンライン授業のほぼ全てがオンデマンド授業であった。そのため,学生には早めの起床が不要となり,起床・就寝時刻ともが遅くなった可能性がある。また,朝食摂取の有無と睡眠の質の要因分析を行ったところ,平日の起床時刻が早く,平日と土日の起床時刻の差が少ない学生において,朝食を取り,遅刻がなく,睡眠の質がより良いことが示された。これらの結果から平日と土日で起床時刻を大きく変えず,常時早く起きることが重要であると考えられた。
  • 池上 喜久夫, 渡辺 萌加, 森田 邦恵, 渡邊 博昭
    2023 年 60 巻 2 号 p. 33-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    子宮頸癌はHPV感染が原因となることから,若年層より,知識の習得と予防対策をとることが重要である。また,子宮は生殖に欠かせない臓器であることから,子宮頸癌に関連する知識は,男性にとっても必要である。本検討では,大学生における子宮頸癌に関する知識についての現状を男女別に把握することを目的とした。また,女性において,ワクチン接種の有無と子宮頸癌予防に関する知識との関連について検討した。対象は非医療系学生男女265人とした。子宮頸癌という疾患名は,男女ともに90%以上の者に認識があった。しかし,その他の臨床病理学的知識の認知割合は,男女とも低値であった。子宮頸癌検診については,男女共に60%以上に認識あったが,検診開始年齢が20歳であることを知っている女性の割合は,17.1%と低値であった。一方,ワクチン接種者においては,非接種者に比べて検診年齢が20歳であることを認識している割合が,有意に高かった。ワクチンを接種することが,子宮頸癌検診受診に対する動機付けへ向かう可能性が示唆された。また,検診受診年齢を迎える高等教育の時期において,子宮頸癌予防についての知識を習得する場を提供することが,重要であると考えられた。
  • ―大学教員向け動画教材の開発と評価―
    水野 雅之, 水野 裕子
    2023 年 60 巻 2 号 p. 40-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,大学教員の発達障害に関するメンタルヘルスリテラシーを高める動画教材を開発し,その有効性を確認することであった。2020年3月にインターネット調査会社が保有する調査モニターを対象に研究参加者を募集し,常勤の大学教員100名(男性89名,女性11名,平均年齢50.41歳,SD=8.86)が研究に参加した。直接的支援提供意図と支援機関の利用の勧め,発達障害に関するメンタルヘルスリテラシーの下位尺度を従属変数とした,対応のあるt検定を実施したところ,いずれの変数に関しても,動画の視聴後の方が視聴前よりも有意に高い得点を示した。以上より,本研究で作成された動画教材の有効性が確認されたと言える。
  • -大学生を対象とした在学3年間の追跡調査
    森 俊明, 山本 裕之, 野上 愛里子, 松本 百合子, 石神 直子, 菅 美代子, 内藤 有美, 高山 佳子, 田中 千恵
    2023 年 60 巻 2 号 p. 46-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    Na,Kの摂取量と血圧,腎機能の関係は多数報告されているが,それらは主に中高年を対象にしたものであり,若年健常者に限定して観察した検討は少ない。そこで疾病を有さない大学生を対象に一日推定塩分摂取量,尿中Na/K比と血圧,腎機能の関連を縦断的に検討した。対象は当大学学部生1063名。入学時健康診断の際に血液尿検査から推定1日塩分摂取量と推定24時間尿中Na/K比を算出。これらを四分位で4群(Q1-4)に分け,入学時のBMI,血圧,血液検査等の健診指標,3年後の血圧上昇率,eGFR低下率と比較した。入学時点では塩分摂取量,尿中Na/K比と血圧は正の関連を示さなかったが,これらミネラル摂取指標が高くなると糸球体濾過量の増加を認めた。3年後の血圧上昇とeGFR低下に関して,Q1に比べQ4のオッズ比はいずれも1以上を示し,男性の塩分摂取量と血圧の関係において有意に高値であった。健常若年者でもNa過剰摂取とK摂取不足は血圧上昇のリスク要因になると考えられた。そしてこのようなミネラル摂取状況にあると,腎機能が正常な段階では糸球体過剰濾過を惹起し,その後の血圧上昇と相まって腎機能低下をきたす可能性が示唆された。
  • 布施 泰子, 平井 伸英
    2023 年 60 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    COVID-19のパンデミックの影響を受けて,入構規制,オンライン授業,アルバイト収入の減少など,2020年度の日本の大学生の生活は例年とは大きく異なった。国立大学の学部学生を対象とした休学・退学・死亡に関する調査結果を通じて,パンデミックが大学生に与えた影響を考察した。
    学部を有する全ての国立大学に,休学・退学・留年(過年度在籍)学生数,休学退学の実態,学生の死亡の実態についての調査を依頼した。
    2020年度の学生の自殺死亡率は,過去7年間で最高となった。自殺に対するCOVID-19の影響は,不明なケースが多かった。休学や退学が増えることが懸念されたが,休学率も退学率も前年より減少した。経済的理由での休学や退学も増加しなかった。各大学は,困窮している学生に対して,授業料の減免などの経済措置を講じた。経済措置は,自殺者数には反映されなかったが,経済的理由による休学や退学に対しては,効果があったと考えられる。渡航目的で休学する学生の割合は,前年までの半分程度となった。
    パンデミックは長期化しており,調査結果の比較を継続する必要がある。
  • 工藤 欣邦, 河野 香奈江
    2023 年 60 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    大分大学の学生を対象とした新型コロナワクチン接種に関する実態調査を行った。2022年6月の時点で3回接種していた学生は,男性50.3%,女性63.1%であり男性の割合が有意に低かった。ワクチンを接種した学生のうち男性の50.0%,女性の55.0%が「接種してよかった」と回答した。その理由として,男女ともに「新型コロナウイルス感染症に感染するリスクやかかった時の重症化のリスクを低下させることができるから」が最多であった。一方,男性の10.5%,女性の9.2%がワクチンを一度も接種していなかった。その理由として,男性は「特に理由はないが,現状しないままになっている」,女性は「副反応が心配だから」が最多であった。3回とも同じ製薬会社のワクチンを接種した学生について接種後の副反応を調査した結果,何らかの副反応を認めた学生の割合は2回目の接種時が最も高かった。2回目接種時の副反応の頻度を男女別にみると,多くの副反応において女性の方が高かった。また,副反応により日常生活に支障をきたした学生の割合は,ファイザー社製ワクチンと比較してモデルナ社製ワクチンの方が高かった。今後,学生に対してワクチン接種を推奨する上で,ワクチン接種に関する実態を周知させ,その安全性や副反応を十分に理解させた上で,最適と思われる接種方法を学生自身が選択できるような教育啓発活動の強化が重要と考えられる。
  • 堀田 亮, 今村 七菜子, 栗木 由美子, 岡本 綾子, 足立 美穂, 三輪 貴生, 田尻下 聡子, 深尾 琢, 山本 眞由美
    2023 年 60 巻 2 号 p. 66-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    学生の悩みの種類や程度と,カウンセリングの利用回数の関係を検討することで,限られた人員で対応するカウンセラーがカウンセリングの期間や回数についての見通しを持てると考えた。2021年度に新規に学生相談を利用した学生のうち,同意を得た141人に初回来談時にCounseling Center Assessment of Psychological Symptoms-Japanese (CCAPS-Japanese) への回答を求めた。その結果,短期終了群(3回以内に終了)よりも中長期継続群(4回以上継続)がすべての因子(抑うつ,全般性不安,社会不安,学業ストレス,食行動,敵意,家族ストレス,飲酒)で高い得点を示した。平均値がカットオフ値を超えている因子数も中長期継続群の方が多かった。両群を対応のないt検定(Bonferroni法)で比較した結果,学業ストレス因子と希死念慮項目は,短期終了群よりも中長期継続群が有意に高い得点だった。社会不安因子でも同様の傾向が推察された。学生相談の現場においては,本研究知見により,根拠に基づいて担当者ごとの予約枠の調整や,ケース数の偏りの是正を実施することが可能となる。
  • −専攻,修業期間,性別,学年別3年間の比較−
    山田 裕子, 守屋 達美
    2023 年 60 巻 2 号 p. 72-78
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    就学状況とメンタルヘルスの関連が深いことは指摘されているが,留年とメンタルヘルスの関連についての詳細は明らかではない。本研究では,留年経験とメンタルヘルスとの関連について,専攻,修業期間,性別,学年の観点から考察し,特に医療系の留年者への学生支援方策を中心に検討した。北里大学相模原キャンパスで2017〜2019年度に全学部生対象に実施したこころの健康に関する調査で研究利用に同意を得た回答を分析対象とした。K10(高群/低群)と留年経験の有無について年度毎に2×2分割表に対する分析を実施し,医療系/生命系,4/6年制,性別,学年別に検討した。全体では,全ての年度でK10高群に留年経験者の割合が有意に高かったが,オッズ比では K10と留年経験の関連は年々弱まっていた。医療系では,4年制より6年制の方が留年率は高く,K10高群に留年経験者の割合が有意に高かったが,生命系では2018年度以降K10と留年経験の間に関連はなかった。医療系については,学習上の困難やメンタル不調を感じている学生が早期に自分の状態に気づき相談できるように支援することが重要と思われる。留年とメンタルヘルスの問題の背景と支援策を実証するには,大学や学部の特徴,留年の時期,理由,衝撃度等を含む量的研究と,留年者へのインタビュー調査による質的研究を複数の大学で協同して行うことが課題である。
  • 福田 直子, 高橋 友子, 小室 理恵子
    2023 年 60 巻 2 号 p. 79-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    2021年に始まった新型コロナワクチンの大学生の接種行動における船舶実習と職域接種の影響を検討するため,東京海洋大学越中島キャンパスの学部学生を対象に2022年4月,接種歴と接種時期をWEB問診で質問した。本調査の1年生はワクチンの接種時には大学入学前,2年生以上は大学生である。543名(対象の83.4%)の回答者のうち2回接種済みの割合は84.7%,性・学年・船舶実習の有無・居住形態による差はなかった(χ²検定)。1回目の接種人数は1年生が2021年9月に最多(41.2%),2年生以上が2021年7月に最多(42.4%)であった。2年生以上は7月に開始した職域接種に参加できたため1年生より早く接種を開始したと考えられた。また2年生以上の学生では7~9月の月別の1回目接種人数は性別と居住形態では差が見られず,学年と船舶実習の有無で有意な差が見られた(χ²検定,p<.001)。2年生以上において夏に船舶実習のなかった学生は7月の接種が最多であったが,船舶実習のあった学生は7~9月に分散していた。船舶実習のある学生は接種後の副反応が実習に重ならないようにするため日程調整が困難だったと推測されたが接種率は低下しなかった。船舶実習や職域接種は予防接種の心理社会的要因を通して接種行動に影響した可能性が示唆された。
  • 茅野 理恵, 宮﨑 紀枝, 大場 航, 大場 美奈
    2023 年 60 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,ピア・サポーターによる大学生のためのゲートキーパー養成プログラムを開発することであった。大学生・大学院生30名を対象としたインタビュー調査と大学生233名を対象としたアンケート調査を実施し,相談のしにくさや友人へのサポートの回避理由等を明らかにした。これらのデータをもとに臨床心理学を専攻する大学院生17名が中心となりプログラムの開発を行った。開発されたプログラムは,3つのテーマからなり,1テーマあたり1時間で構成された。プログラムの効果測定として,ゲートキーパー養成講座を6回開催し,参加者した大学生124名を対象に講座参加の前後でゲートキーパーとしての意識や行動に関するアンケート調査を実施した。その結果,プログラム受講後にすべての項目について有意に高い結果となった。ピア・サポーターによって開発・実施されたプログラムが大学生のゲートキーパーとしての具体的な行動イメージの獲得や行動することへの自信の獲得につながることが示唆された。
  • −計量テキスト分析による内容の検討−
    山﨑 勇, 大場 美奈, 野村 華子, 山﨑 暁, 森光 晃子, 高橋 徹, 高橋 知音, 森田 洋
    2023 年 60 巻 2 号 p. 92-99
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    大学生の自殺が発生した際に,関係学生の心理的ケアを目的としてポストベンションを実施することがある。本研究は,信州大学で自殺が発生した際に実施されたポストベンション対応の面接記録を,計量テキスト分析ソフトウェアKH Coderを用いて分析することで,ポストベンション面接で話題となっている内容を明らかにすること目的とした。共起ネットワーク図から,面接では「症状の確認」「現在学生が置かれている状況」「相談に関する話題」「学生間のネットワーク」「自殺の原因」などが話題とされていた。「自殺学生への感情」の有無とIES-Rの得点を検討したところ,「自殺学生への感情」に言及している学生は有意にIES-Rの得点が高いことが示された。ポストベンション面接では,学生の状態を把握する他,ポストベンション対象以外で支援ニーズのある学生,自殺の背景に関する情報などを把握するといった副次的機能を持つものと推察される。面接時に「自殺学生への感情」への言及がある場合は重症化リスクの推定に役立つものと考えられた。
  • 佐藤 弘恵, 大島 さちえ, 田中 典子, 田中 智美, 神主 京子, 油谷 元規, 黒田 毅
    2023 年 60 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    本学の新型コロナワクチン職域接種における急性期副反応発生について,学生定期健康診断および「生活と気分の調査」の結果を用いて,急性期副反応を生じた学生の接種前の生理的素因を明らかにし,対策に役立てることを目的とした。対象は2021年度定期健康診断と「生活と気分の調査」(4~5月に実施)を受検した学生のうち,本学の新型コロナワクチン職域接種(7~11月に実施)を受けた6,574人,年齢21(20-22)歳,男性59%。急性期副反応は1回目接種で1.7%,2回目接種で0.2%,合計127人(1.9%)に生じ,ほとんどが血管迷走神経反射や急性ストレス反応であった。急性期副反応発生は,男性1.6%,女性2.4%に認められ,女性に多かった(p=0.028)。ロジスティック回帰分析で,男性では身長[OR(95%C.I.),0.95(0.91-0.99)],体重[0.94(0.91-0.97)],BMI [0.84(0.75-0.93)]が低いこと,「気分が落ち込んで,何が起こっても気が晴れないように感じる」[1.68(1.02-2.78)]ことがリスクであった。女性では「しばしば眠れない・ほとんど眠れない」[2.86(1.4-5.7)]ことがリスク因子であった。大学生の新型コロナワクチン接種に伴う急性期副反応発生の接種前生理的素因として,男性では体格が小柄であること,気分の落ち込みを感じやすいこと,女性では熟睡感が低いことがリスク因子であった。急性期副反応の既往がある場合に加え,上記に該当する場合には,積極的な声掛けや臥位接種の勧奨が急性期副反応予防に有効である可能性が考えられたが,今後のさらなる検討が必要である。
  • 足立 由美, 吉川 弘明, 藤原 智子, 藤原 浩
    2023 年 60 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,コロナ禍に日本の大学生のBody mass index(以下,BMI)がどう変化したのかを,2018-2022年度の5年間の定期健康診断データと質問形式の健康調査データから把握することを目的とした。分析対象者は,男性24,648名,女性16,036名であった。ストレス,不安・抑うつとBMI(「低体重」<18.5,「普通体重」18.5≦かつ<25,「肥満」≧25)を男女別に解析した。男性は2020年度以降「低体重」群の割合が増加していた。女性は2020年度に「低体重」群の割合が多かった。全年度を通じて,男性は,「低体重」,「肥満」,「普通体重」の順にストレス,不安・抑うつ度が高かった。女性は,2020年度は「肥満」,「低体重」,「普通体重」の順に不安・抑うつ度が高く,強い痩身願望が示された。BMI 15以下の「最重度低体重」群において男女はほぼ同数で,診断を有する人もいたが,診断名は摂食障害に限らなかった。一方で,未受診の学生が多かった。低体重は生命の危険があるため,健診をきっかけに受診を勧奨することは重要である。
  • ―精神的健康度のスクリーニング検査による効果検証―
    田沢 晶子, 緒方 康介
    2023 年 60 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    大学の学生相談における心理カウンセリングの効果を検証するために,精神的健康度のスクリーニング検査を指標とする調査を実施した。2021年度の新入生を対象として同一年度内に精神的健康度のスクリーニング検査を反復測定した。使用尺度はK10日本語版とCCAPS-Japaneseであり,調査対象のうちK10を2回測定できた168名を分析対象とした。本研究では,初回と2回目の測定値における変化量が有意に低減していた場合を「心理カウンセリングの効果」と操作的に定義した(変化量が+は悪化,-は改善を示唆)。初回のK10得点がcutoff値以上であった者を精神的不調に陥る可能性がある学生(要心理支援群)とし,cutoff値未満であった健常群との2群間における変化量を比較した。
    その結果,各尺度の総得点とCCAPS-Japaneseの下位尺度得点の変化量に有意な差が認められたため,要心理支援群を下位4群(継続面接群,他3群)に分類後,健常群を合わせた5群間での比較を実施した。K10,CCAPS-Japaneseの総得点と下位尺度得点における変化量を従属変数とした分散分析の結果,K10では,健常群(+1.5)に比べて継続面接群(-7.1)の精神症状が有意に改善していた。CCAPS-Japaneseでは,健常群に比べると,継続面接群において,総得点と「抑うつ」の症状が有意に改善していた。以上の結果から,大学生の心理・精神症状全般,特に「抑うつ」の症状に対しては,学生相談機関が心理カウンセリングを継続することに一定の効果が見込めると結論した。
  • 高橋 徹, 山﨑 勇, 高橋 知音, 徳永 まゆ子, 金井 美保子, 山﨑 暁, 糸川 航平, 森光 晃子, 小幡 興一, 森田 洋
    2023 年 60 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    信州大学の新入学生に実施してきた「大学生活に関する調査」について,過去10年分(2012-2021年)の「ASD関連困り感尺度」(対人的困り感尺度・自閉的困り感尺度)「ADHD関連困り感尺度」「希死念慮項目」「カウンセリング希望」を抽出し,学部による違いの有無を調べた。結果,「対人的困り感尺度」「自閉的困り感尺度」「ADHD関連困り感尺度」「希死念慮項目」において,学部間の平均値に有意差を認めた。全ての項目において,人文学部がもっとも高値であり,また医学部(医学科・保健学科)と教育学部が低値であった。入学時には既に,学部によって発達特性の違いが潜在的に存在している可能性を考察した。学生相談においては,学部の特徴を考慮した対応が必要と考えられた。
  • 嶺 哲也, 谷崎 摩季, 能祖 美幸, 木村 真人, 青野 明子
    2023 年 60 巻 2 号 p. 127-133
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,大学新入生のUPIとADHD/ASD困り感が学業成績と休学や退学に及ぼす影響について検討することであった。近畿圏にある私立A大学における2018年度新入生1000名を対象に実施された質問紙調査のデータの内,欠損値の無い907名(男性343名,女性564名)のデータを分析に用いた。分析の結果,大学入学時のUPI得点は休・退学を直接予測すること,ADHD困り感は初年次前期GPAを完全に媒介して休・退学を予測することが示された。一方,ASD困り感は初年次前期GPAを完全に媒介して休・退学に負の影響を及ぼすことが示された。
症例報告
  • ―介入手法としての「休学」「問題の単純化」「森田療法」―
    高橋 徹, 山﨑 暁, 森光 晃子, 徳永 まゆ子, 山岡 俊英, 野村 華子, 下平 憲子, 大場 美奈, 金井 美保子, 山﨑 勇
    2023 年 60 巻 2 号 p. 134-140
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    就職活動のつまずきから学生相談につながった大学4年生の症例を報告した。焦燥感や対人不安,劣等感などが語られたが,面接においては具体的に対処可能な問題に焦点化し,まずは休学にむけて行動を起こすよう促した。本人が親や担当教員と話し合い,次年度前期の休学を決めた。休学期間に内定を獲得し,さらに復学した後期授業で卒業に必要な単位を取得した。複雑化・抽象化したようにみえる状況を,「休学」「就活」「修学」として「問題を単純化」させ,具体的で対処可能な課題に集中するよう促し続けた。劣等感を抱きやすい心理特性は最後まで残存したが,それでも一連の経験を経て,心理的に変化したことを本人も自覚した。「思考」と「感情」は棚上げにし,具体的な「行動」へと意識を向けさせる森田療法は,学生相談においても有用な介入手法になると考えられた。
報告
  • -国際連携委員会の活動を中心に-
    山本 眞由美, 春原 光宏, 柳元 伸太郎, 堀田 亮, 丸谷 俊之, 布施 泰子, 山崎 恵, 本田 善一郎, 中川 克
    2023 年 60 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/09/19
    ジャーナル オープンアクセス
    全国大学保健管理協会(JUHA)の国際連携委員会は,国立大学保健管理施設協議会の国際交流推進特別委員会と協働して活動を進めている。そのひとつの活動として,米国大学保健管理協会の年次学術集会(ACHA2022)(2022年5月31日~6月4日,サンディエゴ)に参加したので報告する。「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を日本の大学がしてきたこと」と題して,90分のJUHAセッションを企画実施した。また,4つのポスター発表も採択された。COVID-19の影響でACHA2020は中止となり,ACHA2021はオンライン・バーチャル開催となった2年ぶりの現地開催であったが,感染対策に留意してではあるもののCOVID-19 以前とほぼ変わらない質と量を保った研究集会であった。ACHAが企画してくれた海外からの参加者向けのレセプションおよび開会式の基調講演についても報告する。
feedback
Top