日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌
Online ISSN : 2189-9568
Print ISSN : 1344-9109
33 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • Daniel Cassany
    2022 年 33 巻 p. 5-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/23
    ジャーナル オープンアクセス

    デジタル化、グローバル化の進展、また様々な種類の文化的産物や文化活動へのアクセスが可能になったことより、世界のどこからでも、あらゆる活動や分野において、スペイン語圏の言語や文化に触れることが容易になった。近年の若者の多くは、スペイン語のテレビドラマに興味を持ったり、サルサを習ったり、スペイン語で音楽を聴いたり、スペイン語を話す仲間と一緒に好きなビデオゲームを行ったりしている。この種の(オーセンティックで、洗練されており、多言語で、多様な形式の)社会的・余暇的活動により、多くの若者は教室外で、教科書や公的なカリキュラムなしに、協調的かつ意欲的にスペイン語能力を向上させている。

    本稿では、このような活動のいくつかの例を、スペイン語(Zhang & Cassany, 2019a, 2019b, 2019c)および他の言語(Shafirova et al, 2019 and 2020a; Vázquez et al. 2020)で収集し、民俗学的アプローチ(生態学的及びイーミック)から、New Literacy Studies の視点を採用して分析し、最後に新しい現実に対して教師が取るべき態度について考察を行う。その目的は、これらの有する多大な可能性を活用し、学習者の興味や日々の活動に結びついた、よりグローバルで統合されたELEの教育へと移行していくことである。

  • Alba de Diego Pérez de la Torre
    2022 年 33 巻 p. 25-36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/23
    ジャーナル オープンアクセス

    日本文化が西洋文化に与えた影響として一般的には、19世紀のジャポニスムが与えた文化的インパクトに言及されることが多い。しかしながらラフカディオ・ハーンやジュディット・ゴーチエの作品が最初に翻訳されて以来、西洋の詩、特にスペイン語の詩における日本の叙情詩の影響は顕著である。本稿ではスペインの詩人ルイス・セルヌダのUn momento todavía(Con las horas contadas (1950-1956) 収録)と Bagatela (Desolación de la quimera (1962) 収録)の2編の詩を分析する。これらの作品の俳句への歩み寄りは、この詩人の作品のみならず、この時代の文学的傾向を概観する上でも非常に興味深いものであるといえる。

  • Marta Añorbe Mateos
    2022 年 33 巻 p. 37-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/23
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は、モチーフM341「死の予言」に関して、12世紀末に書かれた日本の説話集『今昔物語集』の巻26第19話 (「東下者宿人家値産語」) と、スペイン語圏諸国に古くから伝わる3つの物語、「La loba negra」、「Los astrólogos y el hijo del rey Alcaraz」、「O presaxio da meiga」を比較検討した研究である。これらの比較を通じて、同じモチーフに基づく様々な表現の在り方を分析し、日本とスペインの文学作品におけるテーマの類似性の要因を探る。それは文化の多起源説に対抗する合理的な代替案として、インドヨーロッパ系の基層に共通起源を見出せる可能性について検討するものである。

  • Veri Farina Becski
    2022 年 33 巻 p. 51-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/23
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、日本における継承スペイン語話者である大学生を対象とした「継承語話者のためのスペイン語」クラスでの授業活動を分析したものである。イスパノアメリカのコミックを用いることで、学生とその家族間のコミュニケーションを促し、批判的思考を活性化させ、学生自身のアイデンティティについて考えさせることがねらいである。さらに、彼らの社会文化的ルーツの発見とクラスメートとの関係強化というねらいもある。今回の質的研究では、アイデンティティ・レポート作成を目標にしたプロジェクト型学習とタスクベースのアプローチを組み合わせている。その結果、授業活動の中で学生の学習ニーズに応じて言語運用能力が統合されていくことが示された。また、イスパノアメリカのコミックは家族の習慣やユーモア、在り方、行動を反映しており、学生自身の内省と(再)認識の手段として機能した。学生は学期末に授業活動の最終成果物としてアイデンティティ・レポートを作成することにより、継承語でアイデンティティについての批判的思考を実践することができたと言えるだろう。

  • Kazuko Yonekawa, Alicia San-Mateo-Valdehíta
    2022 年 33 巻 p. 71-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/23
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿の目的は、日本語を母語とする49名の第二外国語としてのスペイン語学習者の作文コーパス(CEDEL2のサブコーパス、5763語)における冠詞使用について、習熟度レベル別に正用と誤用を特定し、冠詞のない母語を持つ学習者を対象とした類似の先行研究の結果と比較することである。分析はCorder(1971)に従い、冠詞使用を正用・誤用に分別し、欠落、過剰使用、誤選択の記述観点により分類した(Alexopoulou, 2006)。1109の冠詞使用のうち925の正用と184の誤用が認められた(平均誤用率16.59%)。習得レベルが上昇するに伴い誤用率は、Aレベル28.33%、Bレベル21.65%、Cレベル9.06%と低下し、レベル間の誤用率には統計的有意差が認められた。誤選択による誤用の頻度が最も高く(64.13%)、欠落(33.15%)、過剰使用(2.72%)がそれに続いた。初出の名詞に定冠詞を用いる誤選択が、全ての習得レベルにおいて頻度が最も高い誤用であった。日本語、中国語、スロベニア語、セルビア語、トルコ語など冠詞のない母語を持つ学習者が、スペイン語で名詞を指示する際に持つ困難さは共通していることが確認された。

  • Gisele Fernández Lázaro
    2022 年 33 巻 p. 91-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/23
    ジャーナル オープンアクセス

    学習グループとして同じような特徴を有していても、教師がリラックスした雰囲気で教えることができるグループがあるのに対し、動機づけが低く、学ぶことを嫌うグループがあるのは何故か。第二言語教育はカリキュラムや教授法など様々な要因の影響を受けるが、いずれもこうした現象を説明するには不十分である。いったい教室では何が起こっているのか。学習グループの態度の違いを決定する要因は何か。本論文は、日本の大学でスペイン語を学ぶ学生(17名)を対象に、グループ形成プロセスを分析したケーススタディの結果を報告する。本研究では、グループ・ダイナミックス理論を枠組みに、ネットワーク・アプローチを採用し、データ収集と分析には計量社会学およびエスノグラフィーの手法を用いた。調査分析の結果、動機づけの低いグループは結束力が低く、メンバーに大きな不安を与えるグループ内の社会的葛藤が認められた。その原因は、学生同士のライバル意識、グループ内でのグループ形成、リーダーの影響、文化的・教育的背景の違いであることが導き出された。

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