コモンズ
Online ISSN : 2436-9187
2023 巻, 2 号
コモンズ 第2号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
特集テーマ:余白
エッセイ
  • 読む・思う・書くのループ
    山本 貴光
    2023 年 2023 巻 2 号 p. 5-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
    書物の余白への書き込みを「マルジナリア」という。それは読書の痕跡、つまり書物を読んだ人の感情や思考といった精神の動きの痕跡である。本稿では、マルジナリアをインクの染みとしてだけでなく、人間の営みという観点から眺めてみる。こうした検討は、デジタル環境が普及した現在、人がものを読み、考え、書くための条件を再考する手がかりになるだろう。
  • 大森 文彦
    2023 年 2023 巻 2 号 p. 13-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、都市空間における「余白」のありようを検証することを目的とした。余白がありそうな都市空間を網羅するため、公有地・私有地・郊外のトピックで実際の事例を参照しながら、都市で「余白」を見出すために必要な要素を抽出した。まずその前提として、経済・政治の両面から都市の成立要因を定性的に理解した。次に、公有地として道路・公園・公共施設・都市河川、私有地として店舗・住居・銭湯、郊外として住宅団地・市街化調整区域・スプロール住宅地から複数の事例を挙げ、その成立要因や経緯を分析した。その結果、余白は①それを提供する人・利用する人という複数以上の関係性においてのみ成立しうること、②常に現状を変えようと模索する「プロセス」だということ、③将来に対して可能性を残し続けるという「ウィリング(意思)」であること、④一定の地域への「愛着」が必要な構成要素であり空間と固有のものであること、が見いだされた。実際の都市空間で何らかの余白を生み出すためには、こうした要素を考慮に入れて、取り組む必要がある。
対談
論評
査読論文
  • 日中戦争・「大東亜戦争」下における道院・世界紅卍字会の「日本化」
    玉置 文弥
    2023 年 2023 巻 2 号 p. 95-131
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本論文では、戦前期日本最大の宗教弾圧たる第二次大本事件(以下、事件)が残したものとしての世界紅卍字会後援会(以下、後援会)に着目し、その経緯・活動実態を明らかにする。
    後援会は道院・世界紅卍字会の「後援会」であるが、道院とは 1921 年済南において正式に発足した中国の宗教・慈善団体である。扶乩や静座を活動の核心とし、「五教合一」や慈善による「救世」を主唱した。それを担った世界紅卍字会は、信者および会員に政治家や軍人、資本家など有力者が多かったことから、災害救援や病院、学校、銀行の経営など幅広い慈善事業を展開出来た一方で、政治にも関与した。その過程で紅卍字会は 1923 年に大本教と提携し、「連合運動」(1923-1935)を展開する。両団体は、組織・教義の両面で影響しあいながら、政治的には「満蒙独立」、宗教的には「宗教統一」の目的を創出・接合して融合し、「満洲国」建国運動など様々な活動を行った。
    その後事件によって大本教が壊滅したのちは、連合運動も消滅したが、そこに現れたのが後援会である。そこには旧大本教信者や心霊研究者、軍人、政治家など多種多様な人物が参加し、それぞれの思惑が交錯する中で、外務省文化事業部の助成を受けて活動していた。中国本土の紅卍字会に対する寄付や、その紹介、また心霊実験などを行っていたようであるが、その目的は、「日満支親善」「大東亜戦争完遂」にあった。こういった活動はしかし、中国本土の紅卍字会とはほとんど関係なく行われ、やがて神道系サークル篁道大教に合流していく。
    すなわち、事件の残した連合運動を、紅卍字会の「日本化」によって「復活」させようとしたのがこの活動であったと考えられる。本論文ではその観点から後援会の実態を明らかにし、日中戦争・「大東亜戦争」期における、宗教・信仰・心霊と政治・国家・戦争の複雑な絡み合いを浮かび上がらせることを目指す。
  • 玉木 真穂
    2023 年 2023 巻 2 号 p. 132-152
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、「親子」とは何か、「家族」とは何かを法律的な観点から問い、第三者が関わる生殖補助医療から生まれ た「子」の権利について考察することを目的とする。具体的には、日本における「出自を知る権利」を親子関係と家 族法からその位置付けと課題を検討する。研究方法として文献調査を行い、第三者が関わる生殖補助医療から生まれ た子どもたちの「出自を知る権利」、その周辺権利となる「出自を知らない権利」について分析する。民法における「親子」 は、単に血縁関係だけでなく、法的根拠の存在する複雑な人間関係であり、社会の仕組みだと理解する。新たに議論 され始めた子の権利である「出自を知る権利」を日本の家族関係と家族法上の問題点を考察し、「子の利益」確保の ためには、「出自を知らない権利」との関係を明確にし、さらに公的機関による生殖補助医療の管理が必要と論じる。
  • 支配/従属からの脱構築
    小埜 功貴
    2023 年 2023 巻 2 号 p. 153-180
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では、社会学およびジェンダーの観点からジャニーズアイドルを愛好する男性ファンの心理的作用について論じる。
    主に年齢が 20 代のメンバーを占めるジャニーズのグループを愛好する3名のインフォーマントにインタビューを実施した結果、彼らは同性であるジャニーズアイドルに対して「かわいい」と評価していることがわかる。一般的に男性が同世代の男性を「かわいい」と評価する機会が希薄であるなかで、彼らがジャニーズアイドルから見出す「かわいい」を紐解くと、そこにはアイドル同士の「いちゃいちゃ」や「姫キャラ」といった規範的な男性性にあてはまらない言動や行動を愛でていることが確認された。以上の社会的背景について、本研究ではリキッド・モダンの理論的枠組みを引用し、現代における男性の被抑圧問題と関連づけて論じている。
    同性としてのジャニーズアイドルを「かわいい」と評価する実践を分析対象として着目したとき、「非男性性」という規範的な男性性に該当しない、男性性における支配/従属のヘゲモニー的な二元論から脱構築された男性アイデンティティーを承認していることが判明する。この非男性性の承認実践は、自己に内在する女性的な視座から男性としてのジャニーズアイドルをまなざすという「女性性からのまなざしを介した非男性性の承認」と、男性としての視座からジャニーズアイドルに内在する女性性をまなざす「女性性へのまなざしを介した非男性性の承認」の2つに分類することができる。
    以上の男性ジャニーズファンについてのジェンダー的考察から、社会構築主義的観点からの議論が捉え損なってきた男性の内にある女性性の存在や、レイウィン・コンネルの提唱するヘゲモニックな男性性における支配/従属の二元論から脱構築された非男性性の内実とその承認実践について指摘した。
  • 鹿島 理佳子
    2023 年 2023 巻 2 号 p. 181-210
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、上肢切断・麻痺者が持つ幻肢の「経験」を、フィールドワークで収集した当事者の主観に即して分析する。幻肢とは、上肢切断や麻痺後もなお当事者に感じられている、存在しないはずの手の感覚を指す。幻肢は物理的な対応物をもたない極度に主観的な感覚であるにもかかわらず、当事者の経験を分析対象にした研究はほとんど存在しない。幻肢の先行研究は、治療の対象として脳の電気的な活動や筋電位の変遷など数値が問題にされるものと、「無い手を感じる」という特異な表象として過去の身体との連続性だけを論じるものに大きく二分され、変化を伴う経験としての幻肢は主題にされてこなかった。
    本稿では、「経験」という時間的な視点において幻肢を捉え、当事者にとって幻肢とはどのような「手」であるかを固有性に即して明らかにした。幻肢痛緩和に一部効果が見られている VR リハビリテーションの回数を重ねることにより、かつての手の記憶が薄れ、当事者にとって動かすことができる手は VR の「画像の手」に置き換わる。つまり、当事者が持つ幻肢は、認識的にも「失われた手」を恒常的に保ったものでは決してないのだ。
    ただし、かつて物理的に存在した手と完全に関係が断絶するわけでもない。たとえば麻痺者においては、麻痺した患肢と形のない幻肢のどちらを「本物の手」として捉えるかの「葛藤」を抱えるケースも見受けられた。当事者がもつ幻肢は、何を「本物の手」として捉えるか、すなわち再身体化された身体への距離感の差が「わたしの手」として再獲得された手の違いとして現れている。
  • フランシス・ベーコンの「苗」のアナロジーの導入
    多久和 理実
    2023 年 2023 巻 2 号 p. 211-227
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
    歴史資料とそれを保存する場である博物館や文書館には、利他的な側面がある。これまで未来の人類研究センターでは、利他が生じる場の例えとして「余白」「うつわ」そして「通路」という言葉が用いられてきたが、これらのアナロジーでは歴史資料に特有の失われやすさのニュアンスが伝わりにくい。本論考では、新たな利他のアナロジーを探究するため、フランシス・ベーコンを参照して、歴史資料を「苗」に、保存の場を「苗床」に、歴史記述を「庭園」に例える。失われやすい歴史資料の代表例は、兵器開発、公害、研究不正のような「負の歴史」を伝える記録である。記録が失われた事例として、東京工業大学関係者の戦争体験を取り上げる。失われた記録の痕跡たどる方法を、筆者の経験に基づいて、(a) 消されたはずなのに残ったモノ、(b) ひっそり残されたモノ、(c) 書き換えられたモノ、という 3 パターンに分けて紹介する。これらの事例から、歴史資料の保存について「苗を苗床で保存し、庭園が造られるのを待つ」というアナロジーの有効性を確認する。最後に、記録という「苗」を未来に残すために筆者が実践している、「横断科目:東工大のキャンパスに親しむ」の取り組みを紹介する。
  • 2023 年 2023 巻 2 号 p. 228-229
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2023 年 2023 巻 2 号 p. 230-231
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
  • 2023 年 2023 巻 2 号 p. 232
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/06
    ジャーナル オープンアクセス
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