道徳と教育
Online ISSN : 2435-1199
Print ISSN : 0288-7797
339 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 萩野 奈幹
    2021 年 339 巻 p. 3-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は、道徳科と音楽科の関連授業を支える核となる考え方を抽出することである。そのため、音楽による感情経験を重視することによって、道徳性の育成や人間形成のあり方を提案したアメリカの音楽教育学者ジェームス・L・マーセルの道徳教育原理を手掛かりとする。具体的には、1 .音楽を生かした道徳授業に関する課題を整理した上で、2 .マーセルの道徳教育原理を整理し、3 .道徳科と音楽科の関連授業をプロジェクトメソードとして捉え、有意義な感情経験の機会として、「創造的な社会的自己表現creative social self-expression」や「達成感experience of achievement」を生み出す関連授 業を試みた。これにより、関連授業を支える条件として、達成感を呼び起こす感情経験と、児童自らが創造し自己表現から生じた感情の存在に喜びと価値を生み出すことの必要性が明らかになった。
  • 谷口 雄一
    2021 年 339 巻 p. 15-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿の目的は、道徳科の模擬授業を通して児童生徒を体験することが教員の道徳科の授業づくりにどのような影響を及ぼすのかについて検討することである。そのために、教員免許更新講習において受講生である教員が模擬授業を通じて児童生徒を体験できるように試みた実践をもとに考察した。考察の結果、以下の4つが教員にもたらされたことが認められた。(1)指導方法についての理解(2)物事を多面的・多角的に考えることについての理解(3)対話的な学びについての理解(4)児童生徒相互の温かい人間関係を基盤とすることについての理解
  • 飯塚 秀彦
    2021 年 339 巻 p. 29-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    人工知能(AI)やIoTが中心的な技術として担うSociety5.0は、社会的課題を克服し、「超スマート社会」を実現するという。その一方、Society5 .0を実現させるためには、子供たちが共通して身に付けるべき力をどのように育成するかなども喫緊の課題となっている。そのような中で、文部科学大臣の諮問を受け中央教育審議会では、新しい時代の初等中等教育の在り方が、Society5 .0時代の到来を踏まえ審議されている。これらの議論を踏まえ、Society5.0時代の道徳教育は、道徳科の「見方・考え方」を働かせ、子供たちが自分の、人間としての、人間としての在り方生き方について考えを深めることが重要である。
  • 鈴木 由美子
    2021 年 339 巻 p. 39-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本論の目的は、Society5 .0といわれる時代の変革期に、変わらず重視されるべきものは何かを検討することであった。そのために、農業から工業への時代の変革期に生きたペスタロッチーの見解を取り上げ、検討した。その結果、以下のことが示唆された。第1に、時代が人々にもたらす恩恵を肯定的に捉えるとともに、それが肯定的な結果をもたらすために必要な条件を明らかにする必要があることであった。第2に、ペスタロッチーの場合、その条件とは家庭的な自然な人間関係から生じる道徳的感情だということであった。第3に、そのような道徳教育を可能にする一つの方法として、価値観の構造的理解に基づく道徳学習プログラムの展開があげられるということであった。以上から、Society5 .0の時代にあっても不易とされるものは、根本的な道徳的感情の育成であり、そのために価値観の構造的理解等、道徳教育の開発が必要であることが示唆された。
  • 柳沼 良太
    2021 年 339 巻 p. 49-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合したSociety5.0時代を見据えつつ、コロナ禍という未曽有の事態を踏まえて、これからの道徳教育で育成すべき資質・能力について検討する。まず、学校Ver3 .0に示された「人間としての強み」を、「主体的に考え判断する資質・能力」「信頼関係を築き協働する資質・能力」「社会に貢献する資質・能力」の三つに再構成し、そこに含まれる道徳的諸価値と関連づけて吟味する。次に、この「人間としての強み」を道徳的な問題解決の際に機能する資質・能力として捉え直し、「知識の理解力、読解力、技能」「集中力と持続力」「論理的思考力と分析的思考力」 「批判的思考力と多面的思考力」「直観力・創造力」「共感能力と美しい心(良心)」「汎用力・遂行力」「豊かな感性や芸術性・崇高さ・美意識」の八つに分類して検討する。さらに、こうした実際の道徳的問題解決に役立つ資質・能力を育成する指導法についても具体的に提示する。
  • 片山 健治
    2021 年 339 巻 p. 61-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2020年現在、Society5 .0と呼ばれる「超スマート社会」が到来しようとしており、科学技術の発展がもたらす、夢や映画のような利便性の高い生活が現実化しつつある。同時に、こうした社会の急激な変化に対応するために、私たちは生き方・働き方の転換点を今まさに迎えており、新たな教育改革が求められている。ゆえに、徳育の推進を中核として担ってきたといえる道徳科についても対策が急務となっている。本稿では、筆者が継続・更新してきた「考え議論する問題解決型の道徳授業」における研究実践のうち、Society5.0時代の公教育(学校ver.3.0)として求められる道徳授業として、参考例となりうるであろう実践事例を2例、提案する。1つ目は、異なる主張を並記した新聞記事を教材として、話し合いの論点を示して討議を促していった道徳授業実践事例である。2つ目は、ICTを活用した実践事例として、急ピッチで普及が進んでいるデジタル教科書を活用して実践を行った道徳授業の例を紹介する。最後に、こうした授業実践の成果と課題をふまえ、Society5 .0時代やwithコロナ時代の公教育において求められる道徳授業の展望を示す。
  • 幸阪 創平
    2021 年 339 巻 p. 71-
    発行日: 2021年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新型コロナウィルスの感染拡大により、ICTの活用は教育現場の喫緊の課題となっている。また、 Society 5 .0に向けた学校教育の在り方を考える上でも教育情報ツールは必要不可欠である。しかし、全国規模で見てもその環境整備や授業実践は乏しい。特に、道徳科においては、従来の活用形態として映像やBGM等の教材提示が挙げられる。しかし、このような教師主導的な活用だけでなく、これからは児童の主体性を生み出す活用が求められる。そこで、本実践研究では、主体的・対話的で深い学びを促すICTの活用とその学習効果について考察することを目的とした。そのために、道徳科の主体的・対話的で深い学びを検討し、学びを促すためのICTの活用の目的を定立した。そして、2つの検証授業からその学習効果を分析した。結果、ICTの活用を通して、少数意見に含まれる言葉の可視化から問題意識を引き出したり、情報の共有化から自己表現の多様性を高めたり、自己の振り返りを深化させたりすることができた。
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