高齢者における尿酸代謝にっいて,筋肉エネルギー消費との関連性および尿酸の合成あるいは排泄の障害の有無の観点より検討した.
対象は70歳以上の男性28例,女性50例の,合計78例で,日常活動度によって,次の3群に分類した.第1群は24時間寝たきり状態で,経管栄養を受けている26例,第2群は補助具の使用によって独立歩行が可能な14例,第3群はほぼ通常の日常生活が可能な38例である.
各々の患者にっいて24時間尿酸クリアランス試験を施行し,同時に上腕周囲径および上腕皮下脂肪厚を測定して筋肉量を算出した.更に,第1群の5例について3日間のイノシン経口負荷試験を実施した.
高齢者全体の血清尿酸は1.5から6.9mg/d
lの間に分布し,高尿酸血症を示したものは1例もなかった.一方,低尿酸血症は5例の女性にみられた.尿酸排泄量は極めて低値で平均値は97.9±115.2mg/dayであった.血清尿酸と筋肉量との間には負の相関傾向が認められ,ほぼ通常の日常生活が可能な第3群では,男女いずれも他の群に比較して,血清尿酸は有意に高値であった.また,筋肉量は年齢と有意な負の相関関係を示した.
イノシン負荷試験では,全例で負荷後血清および尿中尿酸は有意に増加し,尿酸クリアランスも上昇した.
これらの成績より,高齢者,特に寝たきり状態では一般に血清尿酸は低値を示し,尿酸排泄量も減少するが,その主要因としては,尿酸の合成過程そのものに異常があるのではなく,加齢とともに筋肉量が低下し,それに加えて日常活動性が減少し,筋肉エネルギー消費の低下の結果,主として筋原性の尿酸合成が減少することが大きく関与していると推定される.
抄録全体を表示