支援工学理学療法学会誌
Online ISSN : 2436-6951
1 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
総論
  • 松田 雅弘
    原稿種別: 総論
    2022 年 1 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    2021年4月に一般社団法人日本支援工学理学療法学会が設立し、理学療法領域のなかでも装具、義肢、福祉用具、車椅子、住宅改修や街づくりを含む生活環境、リハビリテーション工学などの領域の学術的な発展のための貢献を目指している。科学技術の発展は著しく、情報通信、ロボットなどの知見はリハビリテーション医療を顕著に変革している。それは対象者の支援だけではなく、理学療法の手法も変えている。今後、この領域の発展のためには、私たち理学療法士も工学の専門家などと協働し、新しい機器を生み出すときの手助けや、その効果の検証への協力が必要不可欠である。さらには、その恩恵は私たちが対象とする障害者や健康に生活をしたいすべての人々へWell-beingを提供することにつながり、積極的に科学技術を活かした理学療法の展開を常にアップデートしながら提供していかなくてはいけない。このことにより、社会のなかで理学療法の知見を活かした豊かな生活環境を支援することにつながり、活力のある社会を創造できる組織となっていくことが望まれている。

短報
症例報告
  • 小川 秀幸, 新藤 善之, 中野 克己
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 1 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    【はじめに】下肢装具による医療関連機器圧迫創傷の発生は、歩行練習の中断やADLの自立を妨げる要因となる。【症例】60歳代男性、右視床出血、左片麻痺。初期評価は、下肢BrsⅣ、感覚は表在・深部共に中等度鈍麻であった。【経過】第45病日に備品装具使用中に創傷が発生した。対策として購入したサポーターを着用し、練習後は目視による確認を徹底した。本人用装具作製時には、下腿ベルトの取り付け位置とベルト内側のフェルト部分の2点を工夫した。【考察】創傷は、感覚障害により軟部組織が下腿ベルト部に挟まれたことを知覚できずに歩行練習を実施したことが原因と考えられた。骨突出部や直接圧迫が加わる部位だけでなく、皮膚や軟部組織の状態も確認し装具との適合を評価する必要がある。【結論】本人用装具作製時に下腿ベルト部を工夫することで、創傷の発生を防止し、歩行の自立や自宅退院につなげることが可能となった。

原著
  • 松岡 瑞雄, 橋爪 祐美, 柳 久子
    原稿種別: 原著
    2022 年 1 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】下肢装具の処方からフォローアップにおける課題が指摘され続けているが、未だに解決に至っているとは言い難い現状がある。本研究は、それらの諸課題を惹起する要因、またはその解決を阻害する因子について理学療法士の視点から質的に明らかにする。

    【方法】急性期・回復期病院、訪問リハビリテーション事業所、介護老人保健施設、行政機関で勤務する理学療法士9名に対し、半構造化面接を行った。分析はグラウンデッド・セオリー・アプローチの継続的比較分析を援用した。

    【結果】中核カテゴリ「ユーザーを難民化させる」を構成する4つの主要カテゴリ、16のカテゴリ、58のサブカテゴリが抽出された。

    【結論】卒前から卒後における系統的教育体制が整っていないことや、フォローアップを中心的にマネジメントする職種が不明確なこと、心身機能や経済状況等のユーザー側の課題など、多岐にわたる課題が抽出された。

  • 松田 雅弘, 新田 收, 米津 亮, 楠本 泰士, 松浦 孝明, 阿部 広和, 西川 康博, 大島 浩幸, 酒井 日出子
    原稿種別: 原著
    2022 年 1 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】障害のある子どもが屋外やスポーツで使用できる歩行器を2つ開発してアンケート調査することと、走行性能を既存の歩行器と比較することを目的とした。【対象と方法】実験1:理学療法士4名、脳性麻痺児者13名、保護者13名から歩行器の性能について記述式でアンケートを行った。実験2:対象は脳性麻痺児者6名とし、既存の歩行器(PCW;Postural Control Walker)と開発した歩行器の2種で5条件の走行路で比較した。【結果】実験1:開発した機器1において方向転換、小回り性の改善点が評価された。実験2:機器1で行った走行比較で従来型(PCW)と比較し、段差走行路において所要時間が短縮していた。【考察】従来の歩行器の屋外やスポーツで使用する際の問題点として挙げた性能が開発した歩行器で改善がみられ、開発した歩行器がこれらの目的に合致して使用できることが考えられる。

  • 須江 慶太, 宮坂 翔太, 関塚 祐, 宮川 大地, 塚原 貴彦, 斎藤 文樹, 森泉 秀太郎, 百瀬 公人
    原稿種別: 原著
    2022 年 1 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は、回復期リハビリテーション病棟に入院する脳卒中患者の下肢装具作製時期に担当する理学療法士(PT)の経験年数が影響を及ぼすかを検討することを目的とした。研究デザインは後方視的観察研究として、61名の脳卒中片麻痺患者を対象にした。入院日から下肢装具作製までの要した日数を従属変数として、入院時Functional Independence Measure (FIM)の運動項目ならびに認知項目、年齢、下肢麻痺の重症度(12段階式片麻痺grade)、そして担当PTの経験年数を独立変数とした重回帰分析を実施した。その結果、下肢装具作製時期に影響を与える要因として入院時FIM運動項目と担当PTの経験年数が抽出された。本研究の結果から、経験年数が浅い担当者に対する下肢装具作製判断を促す教育支援体制の構築や経験に依存しない客観的指標を開発する必要性が示唆された。

  • 春名 弘一, 田中 亮人, 佐藤 健斗, 三富 菜々, 昆 恵介, 阿部 由依, 田中 勇治
    原稿種別: 原著
    2022 年 1 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    近年、生活期の下肢装具ユーザーに関するフォローアップ体制の不備が指摘されていている。しかし、装具フォローアップの実態や、装具ユーザーの意識については不明な点が多い。そこで、①居宅サービスを受けている要介護者の短下肢装具ユーザーの割合、②装具フォローアップの実態、③リハ系サービスの非利用者の意識を調査した。結果は居宅サービスを受けている要介護者の短下肢装具ユーザーの割合は2.8%であった。在宅生活中の装具ユーザーの装具に関するフォローアップは、介護保険分野の療法士が積極的に関わっていた。在宅生活中の装具ユーザーのうちリハ系サービスの非利用者率は9%存在し、装具の必要性は認識しているが定期的なメンテナンスは不要と考えていた。生活期の短下肢装具ユーザーに対する訪問リハ・通所リハといったリハ系サービスの利用は、装具の適切なフォローアップに寄与すると考えられた。

  • 阿部 紀之, 細矢 貴宏, 松田 雅弘
    原稿種別: 原著
    2022 年 1 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】脳卒中後遺症者の装具フォローアップの不十分さが指摘されている中、入院中の患者指導内容や長期的な装具管理状況に関する知見は乏しい。本研究の目的は、入院中に受けた指導内容や生活期の装具管理状況を明らかにすることとした。【方法】要介護認定を受けた生活期脳卒中後遺症者92名に対し、装具を作製した医療機関で受けた装具に関する指導内容、下肢装具の状態を調査した。【結果】下肢装具の状態で最も多かったのが装具装着時の足の痛み(29.7%)、次にベルクロの摩耗(22.8%)、足のキズや発赤(16.5%)の順であった。医療機関で受けた指導内容に対して「指導を受けていない」または「覚えていない」と回答した者は装具の耐用年数で最も多く72.8%であった。【結論】本調査対象の約3割に装具が不適合である可能性が示唆され、装具の耐用年数に関する医療機関での説明や方法を工夫する必要があることが明らかとなった。

総論
  • 倉山 太一, 小宮 全
    原稿種別: 総論
    2022 年 1 巻 1 号 p. 64-72
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿はGarcia等が提唱した歩行についての数理モデル「Simplest walking model」の解説である。主な読者として、物理や数学に興味のある理学療法士・作業療法士を想定した。また普段数学になじみのない方でも、その導出の概略を理解できるように、式変換などについて逐次説明するよう心掛けた。解説中に出てくる数学的用語や解法を元に、適宜、専門書などを参照頂ければ、最短経路で歩行の数理を理解できる内容となっているので、意欲のある方は、ぜひ紙とペンを使って式の導出を追って頂きたい。もし、大学の物理に興味のある高校生や、教員がお読み下さったならば、本稿を解析力学の簡単な例題としてお使い頂ければ幸いである。

  • 小宮 全, 倉山 太一
    原稿種別: 総論
    2022 年 1 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2022/03/25
    公開日: 2022/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿はGarcia等が提唱した歩行についての数理モデル「Simplest walking model」を題材にした微分方程式の数値計算の解説である。モデルから導出された微分方程式を数値計算が可能な形まで変形する過程を詳しく示した。主な読者として、ウェブサイトなどの情報をもとに自身でプログラムを動かすことはできるが、その原理に精通しているわけではなく、プログラムを自分で改良することや、応用的な問題解決能力をこれから身につけたいと考えている段階の方を想定した。具体的なプログラムコードは、付録として文末に示したウェブサイトより配布するので興味を持たれた方は是非ご自身で実際にプログラムを実行していただきたい。もし、数値計算に興味のある高校生や大学生、および大学院生や、その指導教員がお読み下さったならば、本稿を数値計算の導入的な例題として参考にして頂ければ幸いである。

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