支援工学理学療法学会誌
Online ISSN : 2436-6951
3 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 白銀 暁, 木戸 聡史, 村田 健児, 宮坂 智哉, 佐賀 匡史, 濱口 豊大, 田中 敏明
    原稿種別: 原著
    2022 年 3 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    トイレは転倒が生じやすい場所の1つだが、プライバシー性が高く、それを監視するシステムの導入が難しい。一方、熱画像は人体の検出に用いられるが、顔などの細部が判別できないためそのような環境への適用可能性が高い。本研究は、この熱画像センサを応用した転倒検出システムに関して、車椅子使用者を想定した際のトイレ室内センサ設置位置による検出精度の違いを確認した。室内の向きと高さが異なる4カ所にセンサを設置し、健常成人8名を対象に車椅子を用いた排泄動作と転倒姿勢を記録し、判別分析を行って転倒検出率を比較した。結果、車椅子を使用する対象者では正面方向で天井に近い高さに設置した場合の判別率が最も高く、同じ対象者の正面方向でも低い位置では判別率が最も低かった。本結果は、センサの単純な向きや高さでなく、転倒姿勢の全身が撮像可能であるかなど、トイレの室内環境や想定される転倒状況などを踏まえた検討の必要性を示唆する。

  • 小野塚 雄一, 井上 和久
    原稿種別: 原著
    2022 年 3 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    目的:脳卒中片麻痺者において、長下肢装具の有無が静的立位時の重心動揺と前額面アライメントに与える影響を明らかにすること。

    方法:対象は初発脳卒中片麻痺者9名。方法は長下肢装具の有無にて、重心動揺計を用いて測定し、前額面アライメントをデジタルカメラにて撮影し、ImageJにて解析を行った。統計解析は2群間比較をWilcoxonの符号付順位和検定にて分析し、各項目をSpearmanの相関分析で行った。

    結果:総軌跡長、外周面積、矩形面積、実効値面積、単位面積軌跡長、荷重率に有意差は認められ、体幹傾斜角度、骨盤傾斜角度および非麻痺側股関節内転に有意差が認められた。また重心動揺と麻痺側の股関節内転角度に高い相関が認められた。

    結論:長下肢装具によりアライメントが修正され、麻痺側への荷重率が増加し、静的立位の重心動揺は安定した。重心動揺との関係では麻痺側の股関節内転角度が関与する可能性があった。

  • 小原 謙一, 石川 琴美, 塩谷 文香, 大坂 裕, 黒住 千春
    原稿種別: 原著
    2022 年 3 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    目的:膝部動揺の制限方法の違いが片脚立位時の足圧中心動揺および下肢関節作用に及ぼす影響を検討すること。

    方法:対象は、若年健常成人女性15名(20.2±0.7歳)であった。測定課題はバランスパッド上での30秒間の片脚立位とし、その際の足関節作用の指標として重心動揺計を用いて足圧中心動揺(総軌跡長、矩形面積)と、股関節および膝関節作用の指標として三軸加速度計を用いてそれぞれ骨盤部動揺および膝部動揺を測定した。実験条件は、壁面に貼付した円内に膝部から照射したレーザーを留めるように指示して膝部動揺を制限した能動的制限条件と、膝装具にて外的に膝部動揺を制限した外的制限条件の2条件とした。

    結果:総軌跡長、骨盤部および膝部動揺には有意差は認められなかった。矩形面積のみ能動的制御条件が有意に高値を示した(p<0.05)。

    結論:膝部の能動的制限下での片脚立位保持運動は、足関節戦略を賦活する可能性が示唆された。

  • 宮原 拓也, 高島 恵
    原稿種別: 原著
    2022 年 3 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    本研究では義肢装具学講義の効果判定及び改善点の検討を目的に、講義・実習実施前後における学生の下肢装具に対する自己効力感を調査した。対象は3年制養成校2年生38名とし、義肢装具学講義前、講義後にwebアンケートを実施した。講義前調査では年齢、性別、下肢装具に関する自己効力感を調査した。義肢装具学には実技の回があり、下肢装具の使用・調節の動画を事前に閲覧し、授業時間に下肢装具の選定、使用、調節の実技を実施した。講義後調査では講義前調査の項目に動画の閲覧有無、下肢装具の体験有無を追加した。その結果、講義前後の比較では全項目で有意に自己効力感は向上した。しかし、項目間の比較の結果、選定の工程や足継手角度の決定などが課題として抽出された。義肢装具学の一定の効果が示されたが、項目間の差が課題となった。

短報
  • 山本 裕晃, 善明 雄太
    原稿種別: 短報
    2022 年 3 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    【目的】臨床実習を通じ、理学療法学生の装具に関する知識や能力の自己評価がどのように変化したのかを明らかにし、卒前教育における装具学の学内および臨床の領域検討の一助とすることを目的とした。

    【対象と方法】対象は、臨床実習を終了した3年制専門学校理学療法学科の学生20名とした。集合調査にて、理学療法学生に必要とされる装具の知識・能力に関する20項目について、どの程度持っているかを質問紙によりリッカート尺度にて調査した。

    【結果】理学療法学生が臨床実習を通して向上した項目は、「装具が必要かどうかを判断する能力」、「装具の活用に関して他職種に説明する能力」であり、その他の多くの項目は減少する傾向を示した。

    【結論】「装具が必要かどうかを判断する能力」、「装具の活用に関して他職種に説明する能力」は、臨床教育を通して向上させることが適している可能性があることが確認された。また、装具に関する知識や能力が向上しない内容が多々あることが確認され、臨床実習では装具の経験が不十分である可能性がある。養成校は、臨床実習を通して経験が少ない内容に関しては、学内教育の実技や演習などで積極的に取り入れる必要性が高いことが示唆された。

症例報告
  • 栗田 慎也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 3 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    目的:糖尿病性神経障害(以下、DN)患者を対象に運動療法と抗力を具備した継手付き体幹装具Trunk Solution Core(以下、TSC)の併用効果を検証した。

    方法:対象は血液透析療法を行う40代男性のDN患者1名とした。研究はAB型シングルケースデザインを用いた。A期は歩行練習を行う従来練習期とし、B期は歩行練習にTSCを使用した介入期とした。介入期間は両期とも2週間とし、非透析日の週3回を頻度で合計4週間とした。評価は快適歩行速度と介入前後の修正Borg Scaleの差とした。効果判定は標準偏差帯法を用い視覚的に分析した。

    結果:各期【A期/B期】の平均値は歩行速度(m/s)が【0.7±0.1/1.0±0.1】、修正Borg scaleの差が【3.5±0.8/2.3±0.8】と介入期に改善を認めた。

    結論:血液透析療法を伴うDN患者にTSCの使用は疲労感少なく、歩行能力改善が得られた。

  • 吉川 大志, 金子 里可
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 3 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2023/09/25
    ジャーナル フリー

    【目的】脳卒中片麻痺者2例に対する短下肢装具(ankle-foot orthosis:以下、AFO)装着の改善を目的とした工夫について報告する。

    【方法】症例1(右片麻痺者)は本人用AFO作製時にクイックリングを採用し、面ファスナーシールを足部外側に貼付したことで、リングにベルトを通しやすく、足部の下にベルトが挟まれないようにした。症例2(左片麻痺者)はAFOを床に立てて装着する方法で練習を行い、AFOベルトへの装着番号シールの貼付や手順書を提示し装着手順を視認できるようにした。

    【結果】症例1は本人用AFO作製後に装着時間が短縮し、AFOの履き易さや愛着が改善した。症例2はAFO自己装着動作を含めた短距離歩行が自立した。

    【結論】脳卒中片麻痺者に対するAFO装着に対して工夫を行った結果、自己装着の自立度や装着時間、履き易さが改善された。

feedback
Top