日本獣医腎泌尿器学会誌
Online ISSN : 2434-0146
Print ISSN : 1883-2652
14 巻, 1 号
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原著
  • 佐藤 よもぎ
    2023 年14 巻1 号 p. 4-11
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/05/08
    ジャーナル 認証あり
    イヌの移行上皮癌は、内科的治療として抗がん剤が選択されることの多い悪性腫瘍であるが、抗がん剤に対する感受性に個体差があるため、投与前の感受性を評価するツールの開発が求められている。本研究では、我々が最近開発した尿サンプル由来のイヌ移行上皮癌三次元オルガノイド培養モデルを用いて、各薬剤の感受性と実際の罹患イヌにおける治療反応性の違いを比較解析することで、抗がん剤感受性検査ツールとしての有用性を検証した。本研究において、ビンブラスチン処置は最も安定してオルガノイドの細胞生存率を低下させたが、ミトキサントロンあるいはカルボプラチン処置では抵抗性を示す個体が複数認められた。さらに、オルガノイドで感受性が良好であった罹患イヌに薬剤を長期投与したところ、顕著な腫瘤退縮効果が複数例観察された。以上の結果から、尿由来の移行上皮癌オルガノイドが投薬前の抗がん剤感受性評価に応用可能であることが示された。
  • 庄司 泰盛
    2023 年14 巻1 号 p. 12-18
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/05/08
    ジャーナル 認証あり
    初期CKDのネコへの麻酔や化学療法後にCKDの急性増悪やAKIに陥ることがあるが、従来法でその予後予測は困難である。ヒトでは、急速蛋白摂取によるGFR上昇を腎予備能(RFR)とし残存する全腎機能の評価法が提案されている。RFRはネコのCKD予後やAKIリスクを予測するツールとなりうるが、報告がないため、基礎研究として測定方法の確立を目的とした。正常ネコ4頭で測定条件を検討後、血中Cre濃度1.6mg/dl未満の10頭で蛋白摂取前後のGFRを外因性Ccr法で測定した。高蛋白食を摂取させた場合、GFRは3.5時間後にピークとなった。10頭中8頭で負荷後 GFRの上昇が認められ、蛋白摂取がネコのGFRを上昇させる可能性が示唆された。しかし、腎機能低下以外の要因で2頭の負荷後GFRが低下していたため、条件設定の修正が必要と思われ、今後は測定方法の再検討ならびにRFRの評価を行う予定である。
総説
  • 桑原 康人
    2023 年14 巻1 号 p. 20-26
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/05/08
    ジャーナル 認証あり
    シュウ酸カルシウム結石の形成に関連する既報をもとに再発予防に有効と思われる10の予防策、および治療過程で予防方針を修正するのに役立つと思われる9つの尿検査項目;①尿比重、②尿中カルシウム/クレアチニン(Cre)比、③シュウ酸/Cre比、④クエン酸/Cre比、⑤マグネシウム/Cre比、⑥尿酸/Cre比、⑦無機リン/Cre比、⑧尿pH、⑨尿培養および感受性試験を提案する。さらに、これらの検査が一般の動物病院でも適切に実施、評価できるよう、実際的な検査手法や外注先を紹介するとともに、各項目の暫定的目標値についても記載する。ただし、本稿で示した予防策、検査項目および目標値の妥当性は、まだ十分に検討されていない。今後、多くの病院でこうした取り組みが採用され、その成果をもとに本稿の提案が修正、推敲されて、よりよい再発防止策として確立されることが望まれる。より多くの動物病院の賛同と協力を祈念している。
症例報告
  • 出浦 知也
    2023 年14 巻1 号 p. 28-34
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/05/08
    ジャーナル 認証あり
    経皮的順行性腎盂造影(PAP)は、腎盂と尿管の良好な視覚化を提供し、尿管内の完全または部分的な閉塞の存在と閉塞の局在化を可能にする。しかし、日本では動物のPAPはあまり使用されておらず、報告も少ない。尿路の評価として静脈性腎盂造影(IVP)が一般的に行われているが、病状により良好な造影画像が得られない場合がある。今回遭遇した3例は、すべて腎盂が拡張していたが、既存の検査では確定診断には至らなかった。PAPは診断と治療に役立ち、一定の知見が得られたので、ここに報告する。
ガイドライン
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