本学標茶演習林におけるヤチダモ林の生長は,厚岸町太田地区や旭川営林局の朝日営林署管内のそれらにくらべよりよい成績を示している。ヤチダモは,釧根内陸低山地帯では,広葉樹のうちでハンノキ属,シラカンバに次いで生長が早く,本演での天然二次林を見ると,樹齢45年位で胸高直径25cm,樹高19m,材積0.35m^3位になっているものが多いことや,材価の点でもハンノキ,シラカンバにくらべて有利であることなどの理由から,今までに育林の面で調査検討を加えてきた。ヤチダモ苗は山に植えて2,3年は非常に生長が遅いが,これの一番の原因は山地に植付けしやすいように根の部分を約20%も切るからである。ヤチダモ3年生苗のT/Rは平均0.7で,針葉樹や他の広葉樹にくらべて非常に小さい値を示す。このように,ヤチダモ苗は地上部に比較して,地下部は大きく広がっている。また,開葉する時期も,他の広葉樹にくらべ最も遅く,しかも落葉期が早いというように生育期間が短いにもかかわらず褐斑病にかかる率が極めて大きい。このような観点から,本演の苗畑のようにリン酸吸収力のやや大きい(780),火山灰土壌に適した肥料として熔成リン肥の効果をしらべてみた。
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