科学史研究
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選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 秦 皖梅
    原稿種別: 論文
    2024 年 62 巻 308 号 p. 325-340
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり

     査読制度が誕生し世界的に普及するまでの歴史を科学史的視点から解明しようとする動きの出現はかなり最近のことである。日本の学術雑誌における同制度の歴史に関しては、そのほとんどがまだ知られていないと言ってよい。本稿では、そのような歴史に着目し、Progress of Theoretical Physics における査読制度の導入経緯を考察した。この雑誌において、査読制度が正式に確立されたのは 1955 年 3 月のことだとされているが、本稿では、その試行錯誤が始まったのは実は 1953 年の夏であったということを示す。この時期の欧米では成熟した形式を持つ査読制度がすでに存在していたが、同誌が査読制度を導入したのは欧米の雑誌を模倣したものではなく、戦後日本の素粒子論グループ内部の事情を考慮した結果であると主張する。

  • 猪鼻 真裕
    原稿種別: 論文
    2024 年 62 巻 308 号 p. 341-356
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり

     原子力開発史の総体的記述には、人材養成機関である大学の原子力教育課程に関する調査も必要である。そこで本稿では、東京大学工学部に設置された原子力工学科に着目し、当学科がなぜ、どのように設立されたのかを分析する。そして、設立の目的は初期の時点で達成されたのかについて考察する。東京大学は、最も充実した教育体制を整備した大学の 1 つであるが、原子力関係の動きについては他大学に比べて一歩遅れた。その設置は、産業界からの教育改革を求める声や原子力政策の進展などを背景に、文部省が主導する形で行われた。学内事情における様々なレイヤーの要因は、その設置を遅らせた。教育体制の構想は、附置研究所案、綜合的大学院教育体制案、工学部学科新設案と変遷し、その過程で組織の目的も変質していった。原子力関係の科学技術者を養成するという学科設立の目的は達成された一方で、学問の細分化や研究の蛸壺化が進む結果となった。

  • ――ジャービル文書のバランス理論再考
    渡邉 真代
    原稿種別: 論文
    2024 年 62 巻 308 号 p. 357-371
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり

     古代ギリシア語圏のエジプトで発祥した錬金術は、染色技術一般を指し示す一方、金や銀の生成を限定的に目指す科学と認識されるようになる。中世アラビア語圏に引き継がれた錬金術は、あらゆるものを数に還元するバランス理論に基づき、創造を模倣する学問として発展した。ジャービル文書に描かれたバランス理論は仮想の重さを媒介に性質を量化する思想であり、古代ギリシア医学や哲学の知識に基づいている。名を手掛かりに事物の構成要素の比率を把握しようとするバランス理論は、名が事物の本質を表しているという前提の下、数である文字と諸性質を結びつける。数と言葉はともに分離された量であるというアリストテレスの考えに基づけば、バランス理論とは非連続量の学問と言える。ジャービルは文字に終始せず量を論じており、バランス理論は定量化思想の発現と捉えられるに値する。その科学史における価値を、文字神秘主義とも呼べる要素が減じることはない。

  • 株本 訓久
    2024 年 62 巻 308 号 p. 372-382
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり

     本研究では、筆者が発見した小型竹筒望遠鏡(株本蔵 E)は岩橋善兵衛嘉孝を祖とする岩橋家が製作したことを同定すると共に、本望遠鏡を含む同時期に製作された中小型望遠鏡の歴史的意義を明らかにすることを目的とした。

     株本蔵 E の接眼筒の寸法は『サイクツモリ□』帳記載値とほぼ同じであり、接眼部の模様の一つが伊能忠敬記念館所蔵の一閑張望遠鏡(伊能 A)の鏡筒のものと同じであることから、本望遠鏡は岩橋家製であると判断した。さらに伊能 A の製作年代(寛政 12(1800)年以前)から、株本蔵 E は伊能 A と同様、初代善兵衛が望遠鏡製作初期の段階で製作したものと結論した。

     この結論は寛政 10(1798)年の間重富宛の高橋至時の書状に記載されていた「至時が天体観望に用いた小型望遠鏡」は竹筒製であること、そして、初代善兵衛製の中小型望遠鏡が江戸時代の天文学知識の習得方法を大きく転換した点で重要な歴史的意義を有すること、さらに株本蔵 E はそれらの性能を直接、知ることができる史料であることを意味している。

  • 有賀 暢迪, 河野 洋人, 寺田 鮎美, 吉岡 克己, 廣川 和花
    原稿種別: 小特集
    2024 年 62 巻 308 号 p. 383-413
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり
  • 原稿種別: シンポジウム
    2024 年 62 巻 308 号 p. 414-421
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり
  • ――「5 類移行」後の新たな研究活動様式を切り拓く試み
    青木 滋之, 矢島 道子, 山田 俊弘, 山本 哲
    原稿種別: アゴラ
    2024 年 62 巻 308 号 p. 422-424
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり
  • 小長谷 大介
    原稿種別: 書評・紹介
    2024 年 62 巻 308 号 p. 425-427
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
    ジャーナル 認証あり
  • 原稿種別: その他
    2024 年 62 巻 308 号 p. 428-430,cover
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/10
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