日本知的資産経営学会誌
Online ISSN : 2758-7355
Print ISSN : 2758-6936
2020 巻, 6 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 伊藤 和憲
    2020 年 2020 巻 6 号 p. 8-27
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー
  • 榊原 茂樹, 譚 鵬
    2020 年 2020 巻 6 号 p. 28-40
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー
     本論文は,国際統合報告フレームワーク(IIRC〈framework〉)が意図するように,統合報告書(IR)の発行が財務数値の株式価値関連性を追加的に高めたかどうかを,2004―2016年に初めて統合報告書を発行した日本企業を対象に検証した。  全サンプル企業を対象とした検証の結果は,非正規分布の株価データを正規分布へと補正する程度に応じて,異なった。すなわち,補正の程度が緩いケースでは,財務数値の価値関連性はIR の発行によって「追加的に」高まったが,さらに正規分布へとヨリ近付けると,財務数値の価値関連性の「追加的」増加は消滅した。  次に,全サンプル企業を製造業と非製造業に2 分割すると,製造業企業においては,正規分布への補正の程度に関わらず,財務数値の価値関連性の「追加的」増加が観察された。他方,非製造業企業については,補正を行うと財務数値の「追加的」価値関連性は消滅した。本論文の貢献は,IR の発行は製造業企業の株式投資家にとってヨリ有用性が高いことを示したことにある。
  • 岡本 紀明
    2020 年 2020 巻 6 号 p. 41-53
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー
     企業の知的資産は実践的観点から論じられることが多いが,本稿は主に学術的な遂行性の理論に基づき,知的資産の認識や開示を検討する。まず,特定の社会的動態を表す言説が諸制度により遂行されるという分析視座を概説し,知的資産の認識・開示に向けた制度化を捉える。その結果,例えば多くの企業に一律に適用される財務会計制度は,IFRS の任意適用の数が増加するなど,いわゆる社会のグローバル化や金融化を遂行する形で変遷を遂げてきたと解釈し得るが,知的資産の認識・開示に関する制度に関して,同様の解釈は困難であると指摘する。  その上で本稿は考察対象を拡大し,国内における人的資産情報の「見える化」と国外における「資産化」の動向を分析する。両言説(「見える化」と「資産化」)はともに修辞的に名詞化され,社会の動態をある程度描写すると考えられる。おのおのの取り組みを検討した結果,前者に関して,情報の送り手である企業と受け手である投資家の間で,期待する情報やその効果についてミスマッチが生じている点が明らかになり,社会もしくは資本市場に不可欠であるというよりは,むしろ課題が浮き彫りになった。後者については,社会学者らがあらゆる事物の資産への転換を強調しており,大きなうねりとなって社会的に受容され,関連する制度化に影響を与える可能性を秘めていると考えられる。
  • 無形資産会計の再構築を志向して
    武田 紀仁
    2020 年 2020 巻 6 号 p. 54-66
    発行日: 2020/12/20
    公開日: 2023/05/01
    ジャーナル フリー
     本論文は,「情報の内容」を意味するコンテンツについて,コンテンツの概念を法的位置付けや利用形態等の見地から現状に照らして整理するとともに,日本,米国および国際会計基準におけるコンテンツに関する会計ルールを比較検討することによりその相違点を概観した。つづいて,日本のコンテンツ産業における上場企業の有価証券報告書の分析を通じて,コンテンツに適用されている会計慣行の特徴や現状を明らかにした。  コンテンツを情報財として捉えた場合には,コンテンツとソフトウェアは一括りに扱われる傾向にある。この点につき,両者の相違点を利用形態等から検討することにより,会計および税務上,コンテンツとソフトウェアは区別され,別個の経済価値を有するとされる根拠が明らかになった。また,日本ではコンテンツは法的に「知的財産」として位置付 けられていることを確認した。  さらに,有価証券報告書の分析を通じて次の知見を得た。第一に,各企業でコンテンツに適用される会計処理の方法は税務上の取扱いに準じた会計処理が選択される傾向にあり,課税庁の通達レベルに引きずられた会計慣行となっている点である。第二に,当該会計慣行は従来型の物理的実態に着目した会計慣行となっており,コンテンツの知的資産としての経済的実態を反映しているとは言い難い点である。  その理由として,日本においてコンテンツを含めた無形資産に関する明確な会計ルールが未整備である点を指摘し得る。コンテンツの経済的実態を財務情報として適切に開示していくためには,コンテンツを物理的な実態に化体した資産として捉えるのではなく「情報の内容」そのものとして,すなわちコンテンツが本来有しているはずの知的資産の側面にフォーカスして,コンテンツの会計を再検討する必要がある。
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