本稿の目的は,環境の不確実性に適応するために特徴的な組織観(組織に対する考え方)を有した企業を取り上げ,インタビュー先の組織の意義とインタンジブルズ・マネジメントの関係を明らかにすることである。第1の目的である組織の意義について,本稿では,リサーチサイトの組織観をエマージェント組織と名付け検討を行った。エマージェント組織は,迅速性,創発的,そして職能横断的な連携という3つの特徴を有する。エマージェント組織を運用することで顧客からの要望に迅速に応えるような組織となる。
第2にエマージェント組織とインタンジブルズ・マネジメントの関係について,組織資産,人的資産,イノベーションに分けて明らかにした。組織資産については,第1の目的で示した迅速性,創発的,そして職能横断的な連携という3つの要件がエマージェント組織にとって構築すべきインタンジブルズである。人的資産という側面においては,エマージェント組織であるためスキルの高い特定の人に仕事が集中する可能性がある。そこで,スキルの棚卸による,仕事量の平準化を提案した。
最後にイノベーションについて,エマージェント組織として迅速で創発的な計画を設定する必要があるため,BSC(Balanced score card:バランスト・スコアカード)の考え方による目標設定プロセスを提案した。なお,イノベーションは,従来の延長線上の製品開発にはエマージェント組織が適する。一方,革新的な製品の開発に対しては課題が残ることが明らかとなった。
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