アジア市場経済学会誌
Online ISSN : 2759-6656
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投稿論文
  • 高木 啓介, 鈴木 一央
    2025 年28 巻 p. 1-9
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/06
    ジャーナル フリー

    本稿は,東南アジアで活動する日本人起業家がどのように起業プロセスを進展させているのかについての予備的考察を行うことを目的としている。東南アジアにおける日本人起業家に関する研究はまだその黎明期にある。本稿ではソーシャル・キャピタルを理論的枠組みとして,先行研究レビューを行うとともに,ベトナムもしくはラオスで事業を行う日本人起業家6名(ベトナム3名,ラオス3名)へのインタビューを質的に分析した。分析の結果,ベトナムやラオスで活動する日本人起業家は,人的資本,ソーシャル・キャピタルとベンチャー戦略の整合性を図りながら,起業プロセスを進展させていることがわかった。また,起業の各プロセスで3つの異なるタイプの社会的ネットワークを使い分けていることも明らかになった。本稿は,先行研究の蓄積がほとんどない当研究領域における探索的なアプローチを通じて,理論化のプロセスに貢献することを目指している。

  • 鈴木 一央
    2025 年28 巻 p. 11-22
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/08
    ジャーナル フリー

    本稿は,タイ・プラス・ワン企業戦略において,多国籍企業が,協調・互恵関係に着目して最適な移転先を検討する際に,考慮すべき観点を明らかにすることを目的としている。タイ・プラス・ワン企業戦略において,昨今の企業間の価値連鎖は,互いにアームレングス(arm’s length)な状態で行われてきたにも関わらず,敵対的な関係ではなく,相互依存的かつ共同的な関係に置き換えられた。自社の競争優位を高めるにあたって,価値連鎖(バリュー・チェーン)という概念が必要であり,グローバル・バリュー・チェーンを社会的・制度的・組織的な文脈において,「関係性ネットワーク」と捉える事で,形成する複数のアクター間で価値が共有され,共有価値の実現が重要となる。メコン地域におけるリージョナル・バリュー・チェーンの展開は,ゼロ・サム型の競争関係や主従関係のみでなく,協調的な次元を追加し考察する必要がある(藤岡,2021)。本稿では,エンベデッドネス(embeddedness)を中心的な概念として援用し,グローバル・バリュー・チェーンを再検討した。エンベデッドネスは,「経済活動や経済システムが社会的な関係や環境に埋め込まれている」という考え方であり(入山,2019),タイ・プラス・ワン企業戦略の協調・互恵関係を考察する際に,既存研究に新たな視点をもたらすと考え中心的な概念として採用した。本稿では,体系的な先行研究レビューを行い,重要な要素を抽出し,多国籍企業が最適な移転先を検討する際に考慮すべき観点を帰納的に整理・分類した。本稿を通じて,タイ・プラス・ワン企業戦略に関する学術的・実務的貢献を図りつつ,理論化のプロセスに貢献したい。

  • 章 超
    2025 年28 巻 p. 23-34
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/16
    ジャーナル フリー

    本研究は,中国の西部大開発戦略における政策的特徴とその変遷を,テキストマイニングにより明らかにすることを目的とする。2000年から2023年までの中央および地方政府の1466件の政策文書に頻度分析,共起ネットワーク分析,潜在的ディリクレ配分法を適用した。その結果,第1段階(2000–04年)はインフラ整備や経済発展を中心に,企業優遇策や対外開放が目立った。第2段階(2005–09年)は地域間連携や制度改革,社会主義理念の推進といった制度面の整備が重視された。第3段階(2010–23年)では人的資源の育成や公共サービスの充実などソフト面の整備が進み,デジタル経済の推進,新産業の育成,制度化された環境保護政策や国際的連携の強化など,従来の定性分析では見落とされがちな要素が明らかとなった。全期間を通じて経済発展と並行して政治的安定や国家統合の維持が一貫して存在していた。今後の課題は世論や社会的反応の把握,政策重点と達成状況の検証,HDP–LDAによる動的分析手法の導入である。

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