日本赤十字看護学会誌
Online ISSN : 2433-3425
Print ISSN : 1346-1346
ISSN-L : 1346-1346
22 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
原著
  • 高見 精一郎, 近藤 香苗, 森田 一三
    2021 年22 巻1 号 p. 20-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

    本研究は“赤十字”に対して人々が持つ社会的なイメージを明らかにすることを目的とした.インターネット調査を用いて行い,対象者は男女別,年齢階級ごとに層化し,各ブロック約160人,計2,037人を対象とした.“赤十字”に対する社会的イメージの評定は21の形容詞対について意味微分法を用いて行った.その結果,“赤十字”に対する社会的イメージは,まじめな,思いやりのある,誠実な,親切な,助けるであった.また,16–19歳群は他の年齢群に比べ“赤十字”に対し肯定的なイメージを持っていた.16–19歳群の女性に比べ,その保護者層にあたる40・50歳代群は否定的なイメージを持っていた.赤十字のボランティア参加者は肯定的なイメージを持っており,人々が赤十字と関わる機会の増加は,赤十字や日本赤十字学園の社会的イメージ向上に寄与する可能性が示唆された.また,40・50歳代の“赤十字”に対する社会的イメージの改善は,日本赤十字学園への受験を志す受験生とその保護者の志望大学選択理由の意識の乖離の縮小につながる可能性がある.

  • 阿部 オリエ
    2021 年22 巻1 号 p. 29-40
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    目的 成人看護学(急性期)実習における看護系大学生の看護上の判断力を育成するために,学生と共にケアを実施している臨地実習指導者に焦点をあて,臨地実習指導者が,学生が行う受け持ち患者への「ケア実施に伴う決定」をどのように捉え,学生に関わっているのかを明らかにすることを目的とした.

    方法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた質的探索的研究.

    結果 学生の看護上の判断力育成に向けた臨地実習指導者の関わりは,ケア実施前の〈学生を患者理解に引き寄せたすり合わせ〉,ケア実施中の〈患者の安全を前提とした上での学生とのケア実施〉,ケア実施後の〈学生の意識化を促し患者の状態理解へとつなげていく〉というプロセスで示された.

    結論 学生の看護上の判断力育成に向けては,看護上の判断自体の妥当性を検討するためにも深い患者理解と,判断するという1点だけではなく,継続的な学生へのおさえが不可欠であることが示唆された.

研究報告
  • 小山 理英
    2021 年22 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,Walker & Avantの概念分析法を用いて“collaborative reflection”という概念の構造を分析し,定義を明らかにすることである.“collaborative reflection”をキーワードにして検索できた日本国外のArticleとPaperの16文献から,3つの先行要件,7つの属性,4つの帰結を導き出した.その結果から,“collaborative reflection”を,“ジレンマや困惑をきっかけに自分自身をリフレクションして問題解決に向けて行動し,その経験を多種多様な人々と語り合うことで,他者の経験をも自分の学びに転換し,リフレクションの相乗効果をもたらす一連の思考過程”と定義した.多職種連携が重要視される看護実践の場においては,“collaborative reflection”が有用であることが示唆された.

  • 西山 史江
    2021 年22 巻1 号 p. 10-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    目的:看護師とセラピスト間に存在する患者の転倒・転落に関するコンフリクトに対し,コンフリクト・マネジメントを介入として行い,その効果を明らかにする.

    方法:回復期リハビリテーション病棟の看護師とセラピスト105名に,研修会,グループワーク,患者アセスメント共有シート,事例検討会という4つの介入を6カ月間実施した.その効果は,介入前,3カ月後,6カ月後に実施した『協調性』『コンフリクトのタイプ』『コンフリクトを引き起こす要因』『コンフリクトの解決方略』からなる自記式質問紙調査の変化で示した.分析は,Friedman検定,重回帰分析を用いた.

    結果:3回の調査全てに回答した看護師とセラピスト71名を分析対象とした(有効回答率85.5%).分析の結果,3カ月後(p=0.013),6カ月後(p=0.004)に,『コンフリクトの解決方略』が有意に高まった.

    結論:看護師とセラピストは,コンフリクト・マネジメントにより,コンフリクトを顕在化させ,コンフリクトの解消へと行動を変化させた.

資料
  • 佐藤 直子
    2021 年22 巻1 号 p. 41-49
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,日本の医療提供体制に伴う計画的な病院統合・病棟再編において何が起こっているかを明らかにした研究の動向を探り,今後に必要な研究の示唆を得ることを目的に,「病院統合」,「病棟再編」などをキーワードにして得られた国内の原著論文12文献を対象に文献検討を行った.

    その結果,文献は2002年以降から発行され,明らかにされている内容は,「取り組みとその評価」,「看護職の行動」,「看護スタッフへの影響」,「看護スタッフの認識」に大別され,看護スタッフへの影響を明らかにしたものが多かった.

    病院統合・病棟再編に関する研究報告は,未経験で不確実性を伴う病院統合・病棟再編を行う際に重要な視点を提供する.また,看護スタッフにストレスや不安を与えるが,時間の経過と共に役割を受け入れ積極的に活動し始めることが明らかとなっていた.そのために,看護管理者の支援は重要であるが,看護管理実践に焦点をあてた研究は少なく,今後の課題である.

  • 岩原 由香
    2021 年22 巻1 号 p. 50-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    本研究目的は,地域包括支援センターの看護職が行う,認知症が疑われる独居高齢者の在宅生活継続にむけた支援の実際を明らかにすることである.6名の看護職に半構造化面接を実施し,M-GTAを参考にして質的記述的に分析した.その結果,地域包括支援センターの看護職は,認知症が疑われる独居高齢者に対して,〔無理をしない〕〔チャンネルを合わせる〕〔安心させる行動を示す〕ことをし,自らの存在や提案を【受け入れてもらう】とともに,〔高齢者の人となりを知る〕〔緊急性を見極める〕ことをし,【必要なことを診る】ことを行っていた.これらを繰り返しながら,【社会資源につなげる】ために,周囲の社会資源を〔見定める〕,新たに〔うみだす〕ことをしていた.その後も〔心の隅で気にしている〕ため状況を確認し,〔つかず離れずいる〕関係を保つことで,認知症が疑われる独居高齢者の在宅生活継続にむけた支援は,細く長く【つながっている】ことが明らかになった.

feedback
Top