内観研究
Online ISSN : 2435-922X
Print ISSN : 2432-499X
16 巻, 1 号
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巻頭言
特別寄稿
特集①
特集②
原著
  • − 川原モデルと動機付け面接法の関係 −
    塚﨑 稔, 馬場 博
    2010 年16 巻1 号 p. 49-56
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     2007年2月から6月までに当院で内観療法をおこなったアルコール依存症患者5名に対して、内観後に記入した内観感想文および内観面接者評価記録から、集中内観中におこった認知および情動の変化を抜粋した。その結果、各症例は川原モデルにそって否認が克服され断酒という行動の変化が認められた。その機序をアルコール依存症者への行動変化を促す技法としての動機付け面接法理論という切り口から考察すると、内観療法は「その人の価値観に矛盾する事柄に気付き、その矛盾を拡大させ変化を促す」という側面を持つと考えられる。

短報
  • − 詩と短歌における「愛」のテーマを中心に −
    勝見 ひろみ
    2010 年16 巻1 号 p. 57-64
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     内観法の教育活動における活用は、これまでHR(ホームルーム)を中心に行われてきたが、今回は国語科という教科の枠組みの中で内観法を用いた授業の研究実践を行った。高等学校国語科の授業、特に詩歌や小説の単元において内観法を用いることで、学習者は思考力・想像力を豊かに発揮することが可能となり、学習指導要領における「伝え合う力」の育成の一助となるのではないかとの考えに立ち、詩の創作・短歌の創作に取り組ませた。実践の結果、多くの生徒は自らの内面を見つめるようになり、創作対象への興味・関心を掘り起こし、自分に引き付けて授業に臨むようになったと言える。内観法は詩歌の創作において有効な方法であると考えられる。

  • − 臨床心理士の視点から −
    大髙 菜絵, 真栄城 輝明
    2010 年16 巻1 号 p. 65-70
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     臨床心理士である著者が、自分自身の内観を行いながら、ブラインド・アセスメント法による内観面接者の研修を受け、次のような考察を行った。

    1.ブラインド・アセスメント法による研修では、心理療法と内観面接の共通点・相違点について段階を追いながら理解することができる。

    2.スーパーヴァイザーからは、スーパーヴィジョンでの指導のみならず、陪席することによって、態度や所作を身につけることができる。

    3.スーパーヴァイザー-スーパーヴァイジー関係における転移について考えることで自己理解が深まる。

    4.研修と内観を同時に行うことには長短両面があるが、自己理解を深めることで面接技術が向上し、また、多面的に自分を見る機会を得ることで自己理解が深まるという表裏一体の効果があると考えられる。

資料
  • − 公立小中学校における「こころのシート」実施報告 −
    平野 大己
    2010 年16 巻1 号 p. 71-87
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     筆者は、公立小中学校のスクールカウンセラーとして、内観法をベースにしたワークシート「こころのシート」を独自に作成、2006年12月以降の3年間で計6回実施し、児童・生徒の「心の成長」に寄与するための取り組みを行った。短時間のワークではあるものの、子供たちの実施後の感想には、感銘をうけるほど素晴らしい内容が多く見受けられた。人生で最も多感な時期に、子供たちが「内観3つの質問」に触れ、自分を見つめ直し、相手の身になって考え行動する力、および、感謝の気持ちを養う体験をすることは、いじめ等の問題行動の予防とともに、人格の成長やコミュニケーション能力の向上を期待することができ、将来さまざまな人間関係を経験するであろう児童・生徒たちにとって、とても有意義な体験であると考えられた。

  • 長島 美稚子, 尾崎 康子
    2010 年16 巻1 号 p. 89-99
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     筆者は、これまで内観尺度を作成してきたが、内観者の特性による内観の効果を調べることが課題であった。そこで、本稿では、内観者165名に対して、内観前後に内観尺度を調べるとともに、内観者の特性として母親との関係性を土台とする愛着に着目し、愛着スタイルによる内観尺度の効果を検討した。まず、内観尺度の因子分析によって抽出された幸福感と自己認知と陰性感情の3因子について、内観前後の違いを調べたところ、内観による幸福感と自己認知の高まりと陰性感情の低減が認められ、内観の効果が示唆された。次に,成人愛着スタイル尺度を用いて対象者を安定群、両価群、回避群の3つの愛着群に分類し、愛着群別に内観尺度を調べたところ、安定群と両価群は、内観によって幸福感と自己認知が増加し、陰性感情は減少するという有意な効果が認められたが、回避群では、内観による効果は有意傾向に留まった。また、両価群は他の群に比べて、内観前に陰性感情が有意に高く、自己認知が有意に低いにもかかわらず、内観後には有意な差は認められなかった。両価群は、面接者の信頼関係と適度な自我より、内観によって、ネガティブ思考からポジィティブ思考に大きく変化することが推考された。

  • 毛 富强, 李 振涛, 赵 朋, 郄 凤卿, 顾 石松, 榛木 美惠子
    2010 年16 巻1 号 p. 101-108
    発行日: 2010/09/10
    公開日: 2022/09/30
    ジャーナル フリー

     内観認知療法は、1996年に李振涛らが従来の内観療法と認知療法を融合した内観療法の改良法である。これまでの内観認知療法の臨床応用から、青少年の非行やネット依存症などの心理行動障害において治療効果があることがわかっている。本研究は、40名の医学部生に対して7日間の内観認知療法を行い、治療前後の評価を比較したものである。内観認知療法が行なわれることで、内観者の精神症状が軽減され、自尊や自己調和及び感情バランスなどの心理特徴が高められ、ソーシャルサポートが知覚され、他人受容性等の人間関係が明らかに改善された。この療法は短時間かつ低コストにもかかわらず、治療効果が高いので、東方文化人群に相応しい心理療法と考えられる。

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