内観研究
Online ISSN : 2435-922X
Print ISSN : 2432-499X
24 巻, 1 号
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巻頭言
巻中言
巻尾言
シンポジウム
特別寄稿
  • 高橋 美保
    2018 年 24 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     本論では、筆者の内観療法との出会いから現在に至るまでの内観療法とのかかわりを、研究者として、教育者として、実践者の3つに分けて振り返った。それを元に、内観療法が心理療法にもたらすものについて、「東洋的全人的モデル、全体性への回帰」「「問題」は本当に問題なのか」「パラドクス」を提示し、パラドクスを孕んだ療法としての内観療法の特異性について論じた。また、心理療法における内観療法の意義を考察し、臨床心理学の中で看過されてきた東洋的なアプローチの意義を再考するための希少な心理療法の一つであること、内観療法が心理療法を相対化する軸となりうること、多様な援助者間の協働の在り方について考えるきっかけとなりうることを指摘した。最後に、筆者にとっての内観療法は、自身の無力さに直面化させられる貴重な存在であり、対極にあるものを常に横に置き、相対化することを忘れない人生の装置としての意義があると考えられた。

  • 盧 立群
    2018 年 24 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     1992年により、内観療法は中国に導入されてから、医療分野だけでなく、教育や矯正などにも取り入れられ、全国で広がっている。本論では、中国における内観療法がこれまで発展してきた歴史を紹介しつつ、中国の内観療法の実情を調査研究することにした。これまで内観療法を取り入れてきた施設(5ヶ所)を対象として調査を行った結果、中国に導入された内観療法は、自国の実情に合わせた、いわゆる「変法内観」として展開されていることが明らかになった。これをどのように理解するか、本論では、文化の視点を持ち込んで考察を試みた。

論点
  • 河合 啓介
    2018 年 24 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿では、今後の内観の方向性について三点に分けて述べます。1.内観の普及とそのための資格制度の推進 内観は、精神修養や自己啓発から始まり、疾病の治療に発展しました。再度メンタルヘルスに貢献することも重要です。そのためにも資格制度を充実させることは必要です。2.内観療法の有効性を客観的指標で示す。ランダム化比較試験や脳機能イメージング検査は内観療法の効果を一般にアピールする手段になります。さらに、内観療法の新たな理論体系を構築する機会となる可能性があります。3.内観療法の国際化 内観療法の国際的な発展は、内観療法をわかり易い治療法にしていく過程を推進すると思われます。加えて、日本特有の価値観を踏まえて、内観の真意を深く理論化することを我々は続ける必要があると考えます。

短報
  • 〜絵本からの気づき〜
    藤 惠子, 湯浅 啓子, 光岡 亜希子
    2018 年 24 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     NPO法人マザーリーフは、傾聴ボランティア・相談員の実践と育成を目的とした団体であり、相談員・スタッフの必要課題として、集中内観を勧めている。内観法の拡がりや、内観へのアプローチを模索する中で、平成21年より内観絵本心理研究会を立ち上げた。絵本を題材とし、自分の人生や生い立ちの物語から、主人公=自分を、絵=原風景を思い返し、様々な登場人物の立場、気持ちなどを丁寧に観ていくことで、日常内観に繋がり、参加者が自己を見つめ、他者を思いやり、いただいた命と愛に気づき、赦されて生かされていると気づいた時、依存・被害者意識・自己本位から自立に向かおうとする傾向があった。育ち合い、学び合うことで研究会が発展し8年目を向かえ、岡山刑務所の受刑者に対する内観絵本心理講座は7年目である。参加者が、日常内観を身につけるひとつの方法として、内観絵本心理講座という出会いの場をきっかけに、日常内観で日々気づきを得ながら、自己の解放に向かう様子を考察した。

  • −内観面接士養成研修に参加して−
    土橋 義範, 佐藤 章世, 真栄城 輝明
    2018 年 24 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2018/09/01
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     筆者らは大和内観研修所の実施する内観面接士養成研修を受講した。研修中のこと、筆者らは、自分の挙げる三項目の内容が、内観者の面接の影響を受けていることを改めて知る機会を得た。面接士養成研修では、内観面接に陪席して内観面接を聴くことと自分の内観をすることが求められる。この独特の環境で内観を行うことは研修生にどのような影響を及ぼすのか、といった問題についてその時に行われたミーティングの様子を録音して、研修生同士のやり取りの中から二つのエピソードを抽出して検討することにした。その結果、「自分の代わりに内観者さんが内観をしてくれている」(吉本伊信の言葉)というエピソードや意味のある偶然の出来事(共時性)に遭遇するエピソードが語られた。これらのことから内観に備わる構造には、独特なものがあるように思われた。さらに、内観面接に陪席しながら自分の内観を行っていると、内観者の面接を聴くということは、研修生自身の内観にも影響を与え、内観が加速されるという循環を生む「豊かな空間」でもあるが、同時に、研修生が被るリスクについても考慮する必要があるのでは、という見解が生まれた。

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