内観研究
Online ISSN : 2435-922X
Print ISSN : 2432-499X
21 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
特別講演
シンポジウム
論点
原著論文
  • − 内観面接での「語り」の変化に焦点を当てて −
    森下 文, 蘆 立群, 真栄城 輝明
    2015 年 21 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究は、内観面接における内観者の「語り」の変化に焦点を当て、集中内観中に内観者がたどる心理的変容プロセスを明らかにすることを目的とした。集中内観終了後のアンケートで内観効果を実感したと回答した15名の内観者を対象に半構造化面接を実施した。収集した発話データはM-GTAを用いて質的分析した。内観者の内観面接での「語り」は『面接者との相互関係』『内観面接の場の特殊性』『<過去>認識変化』という3要因から影響を受け、内観者の内観の深まりによって3段階で変化することが示された。同時に、其々の影響要因に対する内観者の認識も変化も示された。内観者の「語り」の変化過程と影響要因との関係を仮説モデルに示し、内観面接における内観者の「語り」と内観者の心理的変容過程との関連について考察を加えた。

  • − 罪悪感に焦点を絞って −
    盧 立群, 森下 文, 真栄城 輝明
    2015 年 21 巻 1 号 p. 43-57
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     1950年代初頭、日本に生まれた内観療法は、1992年頃より、中国に導入され広がっている。中国で発展している内観療法は日本での原法に独特の変形が加えられた「変法内観」であるが、内観三項目という重要な治療構造は日本での内観療法と同様に取り入れられている。

     本研究では、日本人大学生62人、中国人大学生111人を対象に内観三項目に関するアンケートを実施した。その結果、①中国人にとっての「迷惑」は日本人の感覚よりも遥かに重い、②「迷惑をかけたこと」の想起から生じる「罪悪感」は、中国人の場合、親に対する「不孝」と関連が深い。③中国での内観療法は中国の家族関係や中国なりの「迷惑」観との関連中で独自の発展を遂げているということが示唆された。

     本研究の結果から導き出されたことは、内観三項目の捉え方は中国の文化的背景の影響をうけ日本とは違ったものになっているということである。特に「迷惑をかけたこと」を想起から生まれるとされる「罪悪感」は、日中間で認識に顕著な差が見られた。

短報
  • − 実践を通じて −
    吉田 恵里子, 古川 美奈子, 大石 裕代, 大石 雅之, 河本 泰信
    2015 年 21 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     当院では平成25年7月より、集団形式の内観療法プログラムを開始した。プログラム参加者のほとんどは内観療法への参加が初めてだったが、互いに心理的変化を共有し共感することが依存症治療に有効であることがわかった。 患者は、感情変化群、認知変化群、特殊型、時期尚早群の4つの傾向に別れ、内観するうちに家族関係を見直し自分自身と対峙する様子が見られた。当院での取り組みについて、今後の課題を含めここに報告する。

  • 谷口 大輔, 馬場 博, 塚﨑 稔
    2015 年 21 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル 認証あり

     我々は、ひとりの触法精神障害者に対して社会復帰を目的に内観療法をおこなった。内観療法の評価法として、面接評価のほかに内観療法前・5か月後・10か月後で内観の深化を調査した。また心理検査としてYG性格検査、バウムテスト、心の健康自己評価質問紙を用いて心的変化も比較した。その結果、それぞれの評価項目で、対象者の良好な心的変化が現れ、内観療法後、再犯はなく安定して通院を継続するようになった。内観療法は触法精神障害者に対する再犯予防の効果的なプログラムとしての可能性が示唆された。

  • 宮崎 弘美, 塚﨑 稔, 小澤 寛樹
    2015 年 21 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     本研究は、当院外来に通院中の注意欠如多動性症(AD/HD)および自閉症スペクトラム症(ASD)の診断を受けた親子間の葛藤を抱えていた20代の女性に内観ワークを行い、内観ワーク実施前と実施後にBDI-Ⅱ(ベック抑うつ質問票・第2版)とSD法(Semantic Differental法 / 意味微分法)を実施し、抑うつ状態の変化と自己および両親に対するイメージの変化を検証した。内観ワーク実施前と実施後で、抑うつ状態が23点から10点となり、自己イメージが「どちらでもよい」から「よい」「悪い」に評価が分かれるようになった。両親に対するイメージに大きな変化は見られなかった。内観ワークを3回行うことで、抑うつ状態の改善、自己イメージの変化、セルフモニタリングの出現が認められ、服薬管理や時間管理の面談(コーチング)をスムーズにすすめることができるようになった。

  • 村井 久晃, 中地 展生
    2015 年 21 巻 1 号 p. 83-91
    発行日: 2015/09/10
    公開日: 2020/12/26
    ジャーナル フリー

     子どもの健全な成長や発達には養育者から安定した愛情が注がれることは不可欠である。そのためには、養育者の日常生活や社会生活でのストレス軽減と育児に対する閉塞感を緩和することが必要と考えられる。

     そこで本研究は、乳幼児をもつ3名の養育者を対象として、記録内観を応用させた「訪問記録内観」を行いその効果を検討した。Grounded Theory Approachの結果、母親の語りの中に、《記録内観による変化》《記録内観による気付き》《記録内観による効果》などの概念が抽出され、感情、思考、行動に作用していくプロセスが明らかになった。訪問記録内観の内観三項目を考えることにより、自身を客観的に見つめ直し、自身の行動パターンや思考様式に気付きが得られ、その気付きから自己理解が深まり、訪問記録内観前とは違う新たな「物語」が面接で語られた。

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