1950年代初頭、日本に生まれた内観療法は、1992年頃より、中国に導入され広がっている。中国で発展している内観療法は日本での原法に独特の変形が加えられた「変法内観」であるが、内観三項目という重要な治療構造は日本での内観療法と同様に取り入れられている。
本研究では、日本人大学生62人、中国人大学生111人を対象に内観三項目に関するアンケートを実施した。その結果、①中国人にとっての「迷惑」は日本人の感覚よりも遥かに重い、②「迷惑をかけたこと」の想起から生じる「罪悪感」は、中国人の場合、親に対する「不孝」と関連が深い。③中国での内観療法は中国の家族関係や中国なりの「迷惑」観との関連中で独自の発展を遂げているということが示唆された。
本研究の結果から導き出されたことは、内観三項目の捉え方は中国の文化的背景の影響をうけ日本とは違ったものになっているということである。特に「迷惑をかけたこと」を想起から生まれるとされる「罪悪感」は、日中間で認識に顕著な差が見られた。
抄録全体を表示