内観研究
Online ISSN : 2435-922X
Print ISSN : 2432-499X
20 巻, 1 号
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巻頭言
特別講演
メイン・シンポジウム
論点
原著論文
  • − ある内観者のフェルトセンスの観点から −
    木村 喜美代
    2014 年 20 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2014/09/10
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル 認証あり

     内観における気づきの体験がフォーカシングのシフト体験と似ていると感じたことが本研究のきっかけである。本研究の目的は、集中内観の場において「内観者はどのように内観を体験しているのか」ということを、フェルトセンスの観点から明らかにすることである。方法は、5名の内観体験者の語りをTAE(Thinking At the Edge)によって質的に分析を行うことである。分析の結果、内観者が3つのテーマを想起するために過去を辿っていくことによって自然に湧き上がってくる体感はフェルトセンスであり、そのフェルトセンス(体感・実感)を「追体感」という新しい用語で呼ぶこととした。そのことによって内観における実感の性質が明確になった。集中内観の環境を感得することによって追体感は生じやすくなり、その追体感が想起を先導し深めていく様相が明らかとなった。

  • 森下 文, 真栄城 輝明
    2014 年 20 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 2014/09/10
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー

     集中内観の有効性は広く社会に認知されているが、1週間という期間の長さが内観希望者の大きな障壁となっていることも事実である。そこで集中内観を参加しやすいように変形した“変法内観”が考案され、その有効性の研究が多数行われている。今日では、様々なバリエーションの“変法内観”が登場し、教育現場には「内観ワーク」として導入されている。しかし集中内観を”変法”することで生じる問題の研究は殆ど行われていない。本研究では“変法内観”として「内観ワーク」が、参加者に及ぼす心理的な影響を「星と波テスト」描画印象の変化、「受容感・拒絶感尺度」「内的作業モデル尺度」を用いた心理テスト、参加者の感想の聴取という3側面から調査した。その結果「内観ワーク」後に参加者は微妙な心理的葛藤状態に陥る可能性が示唆された。“変法内観”の実施に当たり、そのマイナス面を十分に把握した上で慎重に実施する姿勢が求められるであろう。

  • − ことばとイメージの併用による効果 −
    古谷 スミ子, 真栄城 輝明
    2014 年 20 巻 1 号 p. 51-63
    発行日: 2014/09/10
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー

     コラージュ療法は、「持ち運べる箱庭」のコンセプトのもとに1987年に開発された芸術療法のひとつである。コラージュ作品に表現されたものはことばにならない無意識の世界のことが表現されたものであり、そのため大きな気付きを得て自己変革がもたらされる。ことばにならない無意識を表現する技法として、内観過程にコラージュを併用することで両者の方法が補完でき、内観過程における心的変化を促進させるのではないかと考えた。また今までのところ内観過程にコラージュを導入した関わりは見当たらない。そこで今回筆者は、内省法としての自分の内観体験を研究するものとして、内観過程にコラージュを併用することで、内観における心的変化が早期に出現しかつ促進されるかどうか、内観の効果をより有効的にできることを目的に、内観後にコラージュ作品を作ることを試みた。方法は、内観は事実を手掛かりに3項目を調べて「ことば」で報告し、コラージュは一日の内観終了後、その日内観したことを振り返り、自分の中にわいてきたイメージや想いをマガジンピクチャー法で制作し報告した。その結果、3日目のコラージュ制作時に状態の変化が表れた。対象は夫に対するもので、内省によって深層心理が開かれ、コラージュ制作で内面の変化が表現された。ことばとイメージを内観過程に併用させることで、内観者の心的変化がリアルタイムで表現され、内省がより深く具体的なものになる傾向が見られた。このことは内観者のコラージュに表現されたCISSの下位尺度の評定値などでも裏付けられ、今後の内観に効果的な方法となりうる手掛かりを得た。今回は1事例の結果であるが、今後事例を重ね考察を深めたい。

事例報告
短報
  • − 上海の実践から見えてきたもの −
    盧 立群, 森下 文, 真栄城 輝明, 王 祖承
    2014 年 20 巻 1 号 p. 79-89
    発行日: 2014/09/10
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル フリー

     日本で生まれた内観療法は、1992年に第7回華東地区精神医学大会で紹介されて以来、ここ20年間で中国の精神医療分野に根を下ろし、中国独自な発展を見せている。

     本研究では、上海精神衛生中心病院の患者を対象に1週間の集中内観を実施し、1週間の集中内観前後で「受容感・拒絶感」尺度調査、「内的作業モデル」尺度調査を実施し、その結果から内観の有効性を検討した。さらに、内観後の患者の感想を手掛かりに、上海における内観の実施構造と文化の視点から、内観療法の効果の要因を考察した。

  • 谷口 大輔, 馬場 博
    2014 年 20 巻 1 号 p. 91-100
    発行日: 2014/09/10
    公開日: 2021/09/25
    ジャーナル 認証あり

     我々は1日8時間のデイケア1日内観によって、再発予防の効果が期待できると考え、デイケア1日内観をおこなった依存症者3症例を報告した。実施方法は、毎月2回デイケアプログラムとして実施した。面接回数は7回、場所は内観療法室でおこなった。想起対象は母、近親者、身体の部位などである。

     3症例ともにデイケア1日内観プログラムでYG性格検査、バウムテスト、SUBIでは協調性、人生に対する前向きな気持ち、達成感、近親者の支え、身体的不健康感という項目において共通して改善が認められた。デイケア1日内観は、依存症者の回復過程に大きな影響を与えていると推察された。3症例とも現在まで依存症の再発はなく、デイケアプログラムに参加している。

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