日本体育学会大会予稿集
Online ISSN : 2424-1946
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第68回(2017)
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一般研究発表(03) 体育心理学
  • ドイツ、アメリカ、日本の比較
    阿江 美恵子
    p. 94_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     近年、子どものスポーツ活動は特定のスポーツ種目への囲い込みが進んでいる。これは少子化の影響が大きい。個別のスポーツ種目協会は、種目の隆盛のためにスポーツ能力の高い子どもたちを探し出すことに躍起になっている。本研究では、ドイツ、アメリカ、日本における児童期の子どもの運動トレーニングに関する文献を用いて、子どものスポーツトレーニングに関する考え方を比較することを目的とした。

     ドイツは運動学の本を用い運動発達とトレーニングの適時性を調べた。アメリカは子どものスポーツに関する本からトレーニングに関する考え方を調べた。日本については、スポーツ基本振興計画法に基づくタレント発掘の考え方の理念を調べた。

     ドイツ、アメリカ両国とも子どもの運動能力の発達やトレーニングに関して明確な理論が示されている。日本は種目によって取り組みが異なり、体育系学生は3割が大学まで同一種目を継続していた。タレント発掘の考え方が広がっているが、子どもの発達を重視した理論の作成が必要である。本研究は、2016年度日本学術振興会科研費補助金 No.30192942の援助を受けた。

  • 髙山 彩, 坂本 将基
    p. 94_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     手のメンタルローテーション課題とは、様々な角度で呈示された手の左右を判断するものである。その際、自身のイメージ上の手を回転させて手の左右を判断していると考えられている。本研究では、この課題中に手の視覚情報とイメージ上の手が一致することが必要なのか、それともこれらが一致しないことも重要なのかを検討した。被験者は、中心視野、右視野、もしくは左視野に呈示された様々な角度の手に対し、右(左)手だと判断したら右(左)手でボタンを押すように指示された(1セット96試行×6セットの計576試行)。その結果、左右の判断に時間を要する(要さない)角度の手が呈示されたときには、運動イメージに関わる手とは一致しない(一致する)手の視覚情報が先に脳内に入力されると反応時間が短くなる傾向にあった。この結果は、反応の様式を声に変えても認められた。以上のことから、手のメンタルローテーション課題中は、運動イメージの難易度によって、情報処理の過程が異なることが示唆された。

  • 兄井 彰
    p. 95_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     野球では、重いバットで素振りをした後、通常使っているバットを振るとバットが軽く感じる筋運動感覚残効が生じることが知られている。そこで、重いバットを振った後の筋運動感覚残効の大きさの特定とバットのスイングスピードに及ぼす影響を明らかにするために実験を行った。実験1では、基準試行として900gのバットで素振りをした後、介入試行で900g、1050g、1200gのバットで素振りを行い、さらに、後続試行として840gから1000gまで、20g刻み、14種類のいずれかのバットで素振りを行わせた。その際、基準試行と後続試行でのバットの重さを比較させ、重いか軽いかの判断を参加者に求めた。その判断から主観的等価点を求めた結果、1200gのバットで素振りを行った後では、40g程バットを軽く感じる筋運動感覚残効が生じていた。実験2では、1200gのバットで素振りをした後、900gのバットで素振りを行わせた際のスイングスピードを測定した。その結果、バットをフルスイングする条件では、スイングスピードに差は見られなかったが、ボールを打つイメージでスイングさせる条件では、有意にスイングスピードが速かった。

  • 石倉 忠夫
    p. 95_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     本研究は成功/失敗時に指導者からかけられる快/不快感情を喚起するメッセージがゴルフのパッティング技能の学習と感情に及ぼす影響そして性格との関連性について検討した。大学生50名を、30試行の練習時に{成功時/失敗時}×{快感情/不快感情を喚起させるメッセージ条件}(4条件)とメッセージを与えない条件の5つの条件うちの一つに振り分け、ゴルフのパッティングで目標幅2.3m~2.7mの間にボールを停止させる(成功)よう求めた。分析の結果、パフォーマンス結果は安定性に関して学習効果が認められたが、条件差への影響は認められなかった。否定的感情の増加と安静状態の低下がプレからポストテストにかけて認められた。「成功時」にメッセージを与えると、「情緒安定性」が高い者ほど2日目のパフォーマンスが正確または短くなる。「失敗時」にメッセージを与えると、「外向性」が高い者ほどポストテストは正確であるが不安定になるという特徴が示された。これらの結果から、メッセージを与えると被験者の「情緒安定性」「外向性」がパフォーマンス結果の差となって現れることが明らかにされた。

  • ソフトボールにおける熟達差
    高御堂 良太, 横山 慶子, 山本 裕二
    p. 95_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     野球やソフトボール等のベースボール型競技は、他の競技とは異なり攻撃者がボールを保持しておらず、守備者の投球に合わせて攻撃を行なう。また、ネット型競技のように攻撃、守備者が流動的に切り替わることもない。そのため、これらの役割の非等価性、非交換性から非対称型対人競技であるといえる。これらの特殊な制約の中では、打者が投手に合わせつつもいかにして理想的な打動作を実現するか、すなわち投手-打者間での間合いが重要となる。そこで、本研究では、ソフトボールの高校、大学、日本リーグの競技場面を撮影し、得られた映像を基に、投手-打者間に見られる間合いの時間構造を分析し、その熟達差を明らかにすることを目的とした。具体的には、投手の「静」から「動」、「動」から「静」といった状態の変化が、打者の動作を導く鍵となる視覚情報であると仮定し、試合内で投手、打者が静止、動いている時間帯をそれぞれ求め、投手-打者間での比較を各年代において行った。その結果、高校、大学、日本リーグと熟達するに従い、投手の「静」の状態が長くなると同時に、打者は投手の動作に対して、早期から探索的に間合いの調整を行っていることが明らかになった。

  • 張 点雨, 横山 慶子, 山本 裕二
    p. 96_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     テニスにおける打球音がパフォーマンスに影響に及ぼすことから、視覚情報だけでなく、聴覚情報が重要な役割を果たしていると考えられる。本研究ではまずテニスサービス打球音の音声パターンについて、異なる選手の発した打球音に潜在する特徴を検討した。2016年ウィンブルドン大会に出場した8人の選手のサービス打球音を分析した結果、全てに共通して打球音波形に8個のピークがみられ、これらが3つのグループに分けられた。打球音の大きさにおいては個人差が認められたが、サービスの球速と打球音の大きさに正の相関関係が認められた。そこで、球速と打球音の関係を確かめるために、動作が同じで速度が異なる映像(通常再生速度と80%減)と、打球音が異なる(通常の大きさと50%減)音声を組み合わせ、サービスの球速について比較判断を行わせた。映像(2種類)×音声(2種類)の4つの条件を組み合わせて呈示した結果、動作の再生速度が同じ場合に打球音の大きさが異なると、音声からの影響を受け、動作が同じであるにもかかわらず、球速が異なると判断する傾向が高かった。したがって、打球音は視聴覚統合によって球速判断に影響を及ぼすことが示唆された。

  • 畝中 智志, 幾留 沙智, 森 司朗, 中本 浩揮
    p. 96_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     熟練者は予測時に中枢のAction Observation Network(AON)が活性することが明らかにされている。しかし、その活性と予測精度の関係は直接検証されていない。AONは、模倣運動で活性し、自己運動で抑制されることが知られている。そこで本研究では、AONの活性に影響する運動(模倣/自己)が予測精度に及ぼす影響を検討した。実験では、予測時のAONの活性に差があるとされるバスケットボールの熟練者と非熟練者を対象に、他者のフリースロー結果を予測する課題を行わせた。条件は、観察のみで予測を行うNon-Action条件、観察と同時的にモデルの手首の屈曲運動を模倣するImitation条件、自分がシュートを打つように屈曲運動を行うSelf条件、単にできるだけ速い屈曲運動を行うFast条件とした。その結果、熟練者群はNon-Action条件よりもSelf・Fast条件で予測正答率が低く、非熟練者群はNon-Action条件よりもImitation条件で正答率が高かった。以上の結果は、AONの活性が予測精度に関与することを示し、模倣を伴う新たな予測トレーニング方法の構築に寄与する。

  • メンタルローテーション課題を用いて
    上田 遥菜, 成瀬 九美
    p. 96_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     通常、ダンスなどの課題動作習得時には、示範者によって呈示された課題動作を学習者が模範することによって、学習が進められる。本実験では、課題動作の習得に伴うイメージ操作の変容について、課題動作から抽出した刺激写真を用いたメンタルローテーション(以下MR)課題のエラー率や反応時間から検討した。被験者は女子大学生6名であった。ダンスの専門的な技術を含まない8カウント×4フレーズの課題動作を作成し、被験者は実験者の口頭説明による習得を行った。MR課題は課題動作より左右非対称である動きの一部分を切り取った5種類の画像を刺激とし、実像と鏡像について、それぞれ奥行き回転させた角度(0°、45°、135°、180°、225°、315°)の画像を呈示した。課題動作の習得及び練習とMR課題を1試行とし、4試行行った。その結果、実施される動作の向きに関わらず対面となる角度で反応時間が延長し、エラー率は上昇する傾向がみられた。また、第2試行以降に反応時間が短縮する傾向が認められた。以上の結果から、背面の角度の認知は学習初期において容易であり、課題動作の習得に伴いイメージ操作が容易になることが示唆された。

  • 佐藤 海里, 三澤 孝康, 木島 章文
    p. 97_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     26名の中学生を参加者として、倒立、前方倒立回転(以下、回転試技)、前方倒立回転跳び(以下、跳び試技)の3試技を行わせた。試技を側方から撮影し、着手局面、マット面と平行になるまで踏切脚を振上げた振上局面、両大腿を垂直に挙上した倒立局面を抽出した。回転試技と跳び試技に関しては、両手がマットから離れた離地局面、足あるいはその他の部位(臀部、背部)がマットに着地した着地局面を解析対象に含めた。各局面における肘、肩、頸、股、膝の各関節の姿勢を屈曲/伸展位に分類した。跳び・回転試技それぞれの前半3局面の姿勢をダミー変数化し、跳び試技において足裏からマットに着地できた群(10名)とできなかった群(16名)を判別するように数量化2類を適用した。すると相関比0.627(跳び試技)、0.577(回転試技)の精度で群を判別できた。しかし後半2局面の姿勢を説明変数とすると相関比が低下した(跳び:0.479、回転:0.216)。さらに倒立試技の姿勢を説明変数とすると相関比0.691の精度で群を判別できた。倒立姿勢の要点を検討し、そこに介入・操作を加えることができれば、前方倒立回転跳びの学習が促進される可能性が示された。

  • 増澤 拓也
    p. 97_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     スラックラインと呼ばれる2点間に張った平らなロープ上でバランスをとる綱渡りのようなスポーツが、バランス能力を向上させるトレーニングとして注目されている。また、上部から吊したロープを用い、不安定な環境にて自重を利用して負荷をかけるサスペンショントレーニングが、姿勢安定時に重要である体幹部の堅牢性を高める手法として、関心を集めている。この両者のトレーニングはいずれもバランス向上を目的としているが姿勢制御様式は真逆であると考えられる。本研究の目的は、スラックラインおよびサスペンショントレーニングが姿勢安定性向上に及ぼす効果を明らかにすることである。実験参加者をスラックライントレーニング(SL)群とサスペンショントレーニング(SP)群に配置し、30分間のトレーニングを週3回のペースで合計10回実施した。その訓練前後において重心動揺計とビデオカメラを用い、姿勢安定性の評価・分析をおこなった。分析の結果、両群ともに重心動揺が安定した。また、SL群では体幹部を積極的に動かすことで姿勢制御し、SP群では体幹部を動かないように保持することでバランスを安定させる方略を選ぶことが示唆された。

  • 小谷 泰則
    p. 97_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     ウエイトリフティングにおいてはバーの軌跡を視覚的に捉えることができれば、トレーニングの効果を大きく高めることができる。しかしこの様な映像システムは高価であり一般の選手にとっては入手が困難である。本研究では、これまでにバーの軌跡を描けるようなスマートフォン用のアプリを開発し、選手がバー軌跡描画アプリを容易に入手できるようにすることを目的として研究を行ってきた。しかし、撮影後に分析処理作業が必要になるという欠点があった。フィードバックの効果をより高めるためには試技後できるだけ早くフィードバックを与えることが重要となり、そのためリアルタイム表示が可能であることが必要となる。そこで本研究では、リアルタイムで、バーの軌跡・速度等を表示できるようなアプリを開発し、プロジェクタを接続することによって練習場の壁などに投影できるようにした。開発したスマートフォン用のアプリは無料でダウンロードできるようにし、ウエイトリフティング選手が容易に用いることができるようにした。これまでは高額であったバーの軌跡を描くシステムを安価に提案できるシステムを構築することが可能になった。

  • 保護者の支援とストレス反応との関連
    渋倉 崇行, 村山 亮介
    p. 98_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     子供のスポーツ参加に保護者が果たす役割は大きい。多くのクラブでは保護者会が組織され、保護者は役割を担って支援活動を行っている。ところが、そうした活動に負担感を持つ保護者は少なくない(永井,2010;杉本,2015)。本研究では、保護者のスポーツ支援における負担の実態を明らかにすることを目的とした。具体的には、保護者用スポーツ支援尺度(渋倉・村山,2016)とストレス反応尺度(SRS-18;鈴木・嶋田ほか,1997)との関連性を検討した。調査対象者は、スポーツ活動を行っていた経験を持つ子供の保護者179名(父親85名、母親94名)であった。相関分析の結果、保護者用スポーツ支援尺度のうち、下位尺度「休日の応援」「洗濯・食事」「手伝い・当番」「送迎」「競技理解」「技術向上」は、ストレス反応尺度の「抑うつ・不安」「不機嫌・怒り」「無気力」と有意な正の相関関係を示した(r=.16~.61)。一方、「出費」についてはストレス反応尺度との相関関係はみられなかった。以上のことから、子供のスポーツ活動に対する保護者の支援はストレス反応の表出と関連があることが示唆された。

  • 保護者の問題行為の因子構造の検討
    村山 亮介, 渋倉 崇行
    p. 98_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     子供の充実したスポーツ活動において、指導者と保護者は重要な役割を担う。近年は、スポーツ活動中の指導者、保護者間のトラブルが問題視されているが、保護者の問題行為に関する研究は少ないのが現状である。

     本研究では、保護者の問題行為の因子構造を明らかにすることを目的とした。予備調査では、保護者の問題行為を表す内容を、自由記述形式で回答を求めた。その結果として167個の回答が得られた。これらを基にして、スポーツ活動における保護者の問題行為を表す30項目を選定した。本調査では、予備調査で得られた項目群を用いて保護者94名、指導者109名、合計203名に対して質問紙調査を行った。回答の方法は、保護者の問題行為を表す内容がどの程度当てはまるかを5段階評定で求めた。探索的因子分析の結果、「不平不満」「暴力的言動」「現場介入」と命名される3因子が抽出された。今後はこれらを下位尺度として、信頼性、妥当性の検討をしていくことが課題である。

  • 藤田 勉
    p. 98_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     これまでに快適自己ペース運動時の心拍数が動機づけの行動指標となり得る可能性を見出してきた(藤田,2014)。しかしながら、運動強度が漸進的に高まる運動課題についての検討はなされていない。運動強度が高くなっていく中で行動が持続するか否かを検討することは、従来の行動指標よりも達成動機づけとしての妥当性が高いと考えている。そこで本研究では、シャトルラン終了時の心拍水準が達成動機づけの行動指標としてなり得るかを検討する。被験者は大学生97名であった。運動時の心拍数は、PolarH7を用いてBluetooth経由でiPadに記録した。全力のシャトルランテスト終了時の心拍数を最大心拍数とし、1週間後に再度シャトルランテストを実施した。このテストでは快適さが維持できないと自覚した時点で終了させた。この時の心拍数を心拍水準とした。グリット及び自制心との相関分析を行った結果、グリットは、最大心拍数と無相関であったが、心拍水準とは弱い正の相関が示された。自制心はいずれも無相関であった。これらのことは、運動強度が漸進的に高まる運動後の心拍水準が達成動機づけの行動指標となり得ることを示唆している。

  • 大学ゴルフ選手を対象として
    坂部 崇政, 高井 秀明, 平山 浩輔, 木原 祐二
    p. 99_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     競技スポーツの多くがオフシーズンを迎える。しかし、オフシーズンは時として競技者の目標や競技意欲を喪失させることもある。適切な目標設定は競技意欲やパフォーマンスを高めることができる一方で、不適切な目標は意欲を低下させることからも、競技者にとって目標設定は重要な位置づけにある。そこで本研究では、大学ゴルフ選手9名を対象にオフシーズン中における行動の明確化を目的とし、目標の評価・再設定および目標達成の確信度について検討した。その結果、再設定前には「トレーニング」や「いいイメージで質のいい練習を行う」などといった抽象的な表現であった目標が、再設定後には「スクワット15×3set」や「動画や本などでイメージを作る」などといった具体的な数値や手段が付加された。さらに、「朝アラームが鳴ってから10分以内に起きる」が「朝アラームが鳴ってから10分以内に起きるためには夜12時前に寝る」、「練習量を増やす」が「球数よりも練習場に行く回数を増やす」などといった目標のスモールステップ化も見受けられた。目標達成の確信度については、再設定前が45.1%だったのに対して再設定後には65.6%であり、行動の明確化に伴って確信度も増加した。

  • 集団種目体験時と個人種目体験時の特徴
    中須賀 巧, 杉山 佳生
    p. 99_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     本研究の目的は、体育学習において集団種目体験時と個人種目体験時の動機づけ雰囲気の認知と目標志向性が生きる力にどのような影響を与えるかについて検討することが目的である。調査対象は2つの高校1、2年生の857名(男子370名、女子487名、年齢16.1±0.7歳)とし、そのうち、436名は集団種目(球技バレーボール)の体験群、421名は個人種目(陸上跳躍種目)の体験群であった。調査内容は体育授業における動機づけ雰囲気測定尺度(磯貝ほか,2008)、目標志向性尺度(藤田,2009)、生きる力測定尺度(西田ほか,2010)であった。分析の結果、集団種目体験群と個人種目体験群の両群に共通して確認できた有意なパスは、次の3点である。①協同雰囲気が生きる力に正の影響を示した。②熟達雰囲気が課題志向性に正の影響を示し、その課題志向性が生きる力に正の影響を示した。③成績雰囲気が生きる力に、集団種目体験群は負の影響を、個人種目体験群は正の影響を示した。以上のことから、体育学習の内容が集団種目か個人種目かによって、動機づけ雰囲気の認知の仕方や目標志向性の持ち方が生きる力に異なる影響を及ぼすことが示唆された。

  • 牛来 千穂子, 水落 文夫
    p. 99_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     バスケットボール競技の現場では、連続してシュートを成功させると、その選手はパフォーマンスに対する自信と成功への期待を高め、「シュートタッチ」やその後のシュート時の諸動作がスムーズになることから、シュートが入りやすくなると信じられている。このhot hand現象を支持する研究報告の例として、Smith(2003)はhot hand現象の生起に関して、成功体験による正の強化が、自己効力感を高めパフォーマンスを向上させるとしている。一方で、誤認知であり単なる偶然に過ぎないという報告もみられる。しかし、実際にシュートの連続成功場面における、シューターのシュート動作と心理状態の変化を検討した研究は見当たらない。そこで本研究では、hot hand現象の生起、及びその際のシュート動作と心理状態との関係について、男子大学生バスケットボール選手らに行ったインタビューデータの質的分析と、3ポイントシュートを課題とする連続シュート実験によって検討した。連続シュート実験では、二次元気分尺度(TDMS)を用いてhot hand現象が生起している際の感情状態を経時的に評価し、シュート動作を撮影した動画を用いて3次元動作解析を行った。

  • 東山 明子, 丹羽 劭昭
    p. 100_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     笑いがパフォーマンスにポジティブな影響を与えることが様々な研究から明らかにされてきている。笑顔に関係する表情筋の中で最も重要な働きを司る大頬骨筋の収縮により、口角を引き上げ、笑顔になる。

     そこで心理的要因や快感情からの笑いではなく、口角を上げるだけ、あるいは逆に下げるだけでの影響の程度を検討した。健常な大学生男女20名を対象とし、連続数字の加算作業による精神的負荷のかかる状況において、口角の指示なし、口角上げ、口角下げの3条件で行い、優勢前額皮上電位、心拍数、注意力正答率、状態不安得点について、比較検討した。その結果、心拍数では、口角上げによる鎮静効果は特に見られなかったが、優勢前額皮上電位は口角上げと下げの両条件で口角指示なしよりθ3波が減少する傾向が見られ、注意力正答率は口角上げが口角下げより高い成績を示す傾向が見られ、状態不安得点は口角指示なしより口角上げのほうが低かった。口角を上げることは不安減少と注意力向上に効果があることが示唆された。

  • 競技レベルと性差の比較
    鈴木 敦, 奥野 真由, 福井 邦宗, 佐々木 丈予, 立谷 泰久
    p. 100_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
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     本研究の目的は、高校生アスリートにバウムテストを施行し、競技レベルおよび性差から心理的特徴を検討することであった。対象となる高校生は、世界大会に出場経験のあるトップアスリート20名(男性10名、女性10名)および体育系運動部に所属する県大会出場レベルの一般アスリート20名(男性10名、女性10名)の計40名であった。対象者には、個別法によるバウムテストの施行および競技歴の聴取を行った。描かれた木は、根、地面線、幹下縁立(幹を用紙の下端に添わせること)、上縁はみ出し(バウムが用紙の上端からのはみ出し)、宙に浮いた木(地面線などがなく、宙に浮いたように見える木)などの指標を用い、Fisherの正確確率検定によって分析・検討した。その結果、トップアスリートにおける上縁はみ出しは女性よりも男性に多く(p=0.0325)、宙に浮いた木は男性よりも女性に多く見られる傾向にあった(p=0.0573)。また、男性の上縁はみ出しにおいて競技レベル間の相違が見られ、トップアスリートに上縁はみ出しが多く見られた(p=0.0325)。

  • 鈴木 千寿, 高井 秀明
    p. 100_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     「競技スポーツ」はアスリートにとって大きなストレッサーとなっており(田中ら,2009)、環境からの要求に対する認知的評価によって運動パフォーマンスの発揮は変化する。本研究では、ストレス耐性として考えられている認知的評価の1つであるハーディネスとストレスとの関係について明らかにすることを目的とした。今回は2017年4月に体育専攻学生465名(男性223名、女性242名、平均年齢19.95歳)を対象に調査を実施した。その結果、ハーディネスおよびハーディネスにおける下位尺度の得点をみると、国際大会レベルのアスリートは全国大会レベル(p<.01)、地方大会レベル(p<.05)のアスリートよりも有意に高かった。この結果から、ハーディネスと競技レベルとの関係が示された。さらに、ハーディネスとストレス反応との関係について検討したところ、「不機嫌・怒り」と「コントロール」以外は有意な負の相関関係(p<.001)が認められた。したがって、ハーディネスがもつストレス緩衝効果は、アスリートにおいても認められたが、本研究によって「不機嫌・怒り」に対するアスリートのストレスマネジメントの必要性が示された。

  • TSMI(競技意欲検査)に着目して
    飯塚 駿, 遠藤 俊郎, 池田 志織, 田中 博史, 横矢 勇一
    p. 101_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     近年、思春期前期の子どもにおいて、身体活動総時間が長いほどメンタルヘルスは良好である(川勝他,2017)という報告がなされ学校体育でも子どもの運動習慣を形成する取り組みもなされているが、早期からの運動習慣は子どもの成長にどのような恩恵をもたらすかは未解明な部分が多い。本研究では2016年度全日本中学生バレーボール長身者合宿に参加した選手99名(男子49名、女子50名)を対象としてアンケート調査を行い中学生競技者の心理的特徴を明らかにすることを目的とした。その結果、信頼性の判定基準項目で低い判定を示したものを除いた、(男子47名、女子50名計97名)回答を回収し、分析にはフェイスシート、TSMI(競技意欲検査)のデータを用いた。対象者の平均競技経験年数は4.4(±2.2)年であった。分析の結果、性差において、情緒安定性などポジティブ要因では男子のほうが女子よりも有意に高い得点を示し、ネガティブ要因では女子のほうが男子より高い得点を示した。また、競技経験年数では知的興味において5年以上の群のほうが得点が高い傾向がみられ、失敗不安、緊張性不安において4年以下の群のほうが有意に高い得点を示した。

  • —競技経験年数とMPI、SCATに着目して—
    池田 志織, 飯塚 駿, 遠藤 俊郎, 田中 博史, 横矢 勇一, 安田 貢, 三井 勇
    p. 101_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     近年、思春期前期の子どもにおいて、身体活動総時間が長いほどメンタルヘルスは良好である(川勝他,2017)という報告がなされ学校体育でも子どもの運動習慣を形成する取り組みもなされているが、早期からの運動習慣は子どもの成長にどのような恩恵をもたらすのであろうか。本研究では2017年2月に実施された全日本中学生バレーボール長身者合宿に参加した選手(男子49名、女子50名、計99名)を対象として、競技経験年数による心理的特徴の違いを検討した。分析にはフェイスシート、MPI(モーズレイ性格検査)、SCAT(競技不安テスト)のデータを用いた。対象者の平均競技経験年数は4.4(±2.2)年であり、経験年数が長い群は小学校低学年から、短い群は高学年からバレーボールを開始していた。分析の結果、MPIの内向性-外向性について経験年数が長い群の方が有意に高い得点を示し、外向性が高いことが示唆された。また、神経症的傾向は経験年数が短い群の得点が高い傾向がみられた。そして、SCATにおいては経験年数が短い群が有意に高い得点を示し、競技不安が強いことが示唆され、競技開始時期により選手の心理的特性に違いがみられた。

  • 夏原 隆之, 市川 雄大, 中山 雅雄, 浅井 武
    p. 101_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     集団スポーツにおいて、人間関係に関するストレスは、集団への適応やチームパフォーマンスに悪影響を及ぼすことが指摘されている。そこで、本研究は、競技レベルの異なる15歳から18歳までの高校生サッカー選手772名を対象に、質問紙を用いて、集団効力感(CE)とチームメイトとの人間関係に関する心理的ストレス過程(認知的評価やストレス反応)について検討することを目的とした。結果では、競技レベル高群は低群と比較して、CEが有意に高いことを示した。チームメイトとの人間関係に関するストレスレベルに有意差は認められなかったが、心理的ストレスに対する認知的評価やストレス反応には、群間に違いが示された。競技レベル高群は、人間関係の問題に対してポジティブに捉え、建設的に行動する傾向にあることが示された一方で、競技レベル低群は、ネガティブに捉え、破壊的に行動する傾向が示された。これらのことから、選手全員がチームメイトを肯定的に捉えられるようにすることが重要であるが、競技レベルによって、人間関係の問題に対する捉え方や行動が異なるため、指導者は、指導対象者のレベルに応じた指導アプローチをする必要があると示唆された。

  • 湊 柊一郎, 芳地 泰幸, 岩浅 巧, 水野 基樹
    p. 102_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     従来の組織研究においては、リーダーとは唯一無二の存在であり、そのリーダーの資質や行動特性などから、フォロワーに対して有効なリーダーシップの研究が展開・蓄積されてきた。しかし、スポーツチームを対象とした小川ら(2007)の報告によると、「個々の選手も指導者と同様の価値ある情報を持つようになったため、伝統的なトップダウン型のチームでは成果をあげにくく、新たなチームの形が求められている」と報告されている。つまり、メンバー一人ひとりがチームを牽引することの重要性が高まっている。このような中、従前のリーダーシップ研究とは一線を画す「シェアド・リーダーシップ」という概念が提唱され、注目を浴びている。石川(2013)はシェアド・リーダーシップの度合いが高いチームとは、リーダーを含むチームメンバーそれぞれが、チーム目標達成に向けて必要なリーダーシップを双方向的に発揮している状態であるとしている。以上を踏まえ本研究では、大学野球組織を対象に、シェアド・リーダーシップを醸成するための組織風土と従来のリーダー(監督)の役割を(競技レベルの差異を含め)質問紙調査による量的分析から検討することを目的とする。

  • 平山 浩輔, 高井 秀明
    p. 102_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は指導者の勝敗に対する志向性(勝利志向、プロセス志向)の違いにより、運動部員のライフスキルの獲得状況が異なるかどうかについて明らかにすることを目的とした。本研究では時代差や標本抽出などのバイアスを回避するために2地点調査を行った。調査は2008年と2015年に実施した。調査対象者は高校時において運動部に所属していた大学生2115名(2008年:1059名、2015年:1056名)であった。その結果、「社会的スキル」において「勝利志向が高い指導者(以下;勝利志向)」は「勝利・プロセス志向の両方が高い指導者(以下;両志向高群)」と「プロセス志向が高い指導者(以下;プロセス志向)」より有意に低い得点を示した。また、「共感・援助のスキル」において「勝利・プロセス志向の両方が低い指導者(以下;両志向低群)」は「両志向高群」と「プロセス志向」より有意に低い得点を示した。最後に「対人ストレススキル」において「両志向高群」は「勝利志向」と「両志向低群」より有意に低い得点を示した。よって、「社会的スキル」や「共感・援助のスキル」、「対人ストレススキル」に関しては、指導者の志向性によりスキルの獲得状況が異なることが示された。

  • その妥当性と信頼性の検討
    梶内 大輝, 中澤 史
    p. 102_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     ライフスキルの下位尺度の一つとして認知される礼儀マナースキルは、日常生活場面だけでなくスポーツ場面においても重んじられる傾向にある。昨今、日常生活場面やスポーツ場面におけるライフスキルのアセスメントを目的とした尺度は複数確認されるが、スポーツ活動による礼儀マナースキルの獲得状況のアセスメントに特化した尺度は見られない。梶内ほか(2017)の研究では、「高校運動部員用礼儀マナー尺度」の開発を試みたが、項目内容の妥当性、信頼性が十分ではない等の課題が残された。そこで本研究では、梶内ほか(2017)の尺度をもとに因子の構成を「日常生活場面における礼儀マナー」、「運動場面における礼儀マナー」に分類して礼儀マナースキルに含まれる項目の同定を目指す。具体的には指導者への半構造化インタビューならびに高校生、大学生への自由記述方法式の調査を通じて得られたデータをKJ法による分析を行い、各項目について精査する。当日は、先の結果について発表する予定である。

  • 山越 拓也, 水野 基樹
    p. 103_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     今日、社会における多様化・複雑化に対応するため、想定外の事象に対する組織の対応力や柔軟性が求められている。そこでその自己裁量的な行動によって組織や職場がスムーズに回り、かつ給与体系による補償や支払いを受ける対象にはならない組織市民行動(以下:OCB)という概念が着目されはじめている。とりわけ企業や医療・看護の現場においては、注目度が高く先行文献も多く蓄積されている。

     しかしながら、スポーツ現場におけるOCBに関する研究は非常に数が少ない。そこで本文献レビューの目的は「スポーツ・体育」が、組織成員によるOCBの生起に及ぼす影響を探索するために、これらのキーワードの関連研究の文献を検討することであった。方法としては「スポーツ・体育・OCB」をキーワードとして文献検索サイトにて検索を行った。

     検討の結果、スポーツ・体育の現場においては、その教育的背景ゆえに利他的な行動が暗黙知のうちに重視されており、いわゆる企業における的な行動は当たり前に行われているが、評価の対象にはなっていなかった。今後の課題としては、スポーツや体育の現場において何がOCBが生起する要因となるのかを明らかにすることが挙げられた。

  • スポーツプログラムを通じた集団間接触が及ぼす心理的影響に関する検討を中心に
    下窪 拓也
    p. 103_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     昨今、社会的緊張下に置かれた紛争地域でサッカーを用いた平和構築活動が広く行われるようになった。しかし、未だスポーツによる平和構築への有効性は十分に検証されたと言いがたい状況にある。集団間の関係向上には、望ましい条件下での接触が効果的である(Gordon 1954)とされているが、フーリガンのような社会課題を引き起こす性質を内包するサッカーは顕著であろう。

     以上のように、スポーツの持つ正負の影響を熟考せずに平和構築活動にスポーツを活用する今日のスポーツを通じた平和構築活動の潮流には違和感が残る。そこで本研究では、平和構築を目的としたスポーツイベントが参加者に対して、望ましい集団間の接触が提供されているかを検討する。

     本発表では、日本で実施されたスポーツプログラムの参加者が集団間接触をどう認識したかについて報告する。また、今後の研究では、ここで得られた各スポーツ種目の平和構築に対する有効性および危険性を踏まえて、紛争地で実施されているスポーツイベントを調査し、各スポーツが参加者に及ぼす心理的影響について明らかにしようと計画している。

  • 榎本 恭介, 荒井 弘和
    p. 103_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     サッカーは、試合中に競技者と審判員が頻繁にコミュニケーションをとるスポーツである。大学生サッカー競技者に対し、審判員の判定に関する印象調査を行った齋藤・内田(2017)の研究では、このコミュニケーションの重要性が述べられている。しかし、わが国では、競技者と審判員のコミュニケーションに焦点を当てた研究は存在しない。そこで、本研究では、大学生サッカー競技者(男性11名、平均年齢19.45歳)を対象に、審判員とコミュニケーションをとり関係性を築くことについてのインタビュー調査を行った。そして、得られたデータをテキスト化し、KJ法によるグループ化を行った。

     KJ法の結果、審判員とのコミュニケーションをとり関係性を築くことについて、「あったほうがいい」「あってもいい」「中間」「ないほうがいい」「監督・キャプテンのみ」「基準を知りたい」「返事が欲しい」「プレースタイルを知って欲しい」の合計8つのグループが得られた。今後は、審判員に対してもインタビュー調査を行い、競技者と審判員それぞれの認識を比較し、より適応的な両者の関係性を検討することが期待される。

  • Jリーグユース(U-18)チームを対象として
    芳地 泰幸, 岩浅 巧, 江波戸 智希, 水野 基樹
    p. 104_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     関東圏にあるJリーグユース(U-18)チームから、チームビルディング(TB)トレーニングの依頼を受けた。チームが抱える現状やTB導入の目的を踏まえ、ユースチーム所属の40名(平均年齢:15.98歳、SD=.920)を対象に、東大版総合人格目録(TPI)を活用した2日間のTBプログラムを実施した。なお、TBプログラムの実施およびTPIの解読は専門のインストラクター資格を持つ専門家によっておこなわれた。本研究では前後比較デザインに基づき、集団効力感の変容の視点からその効果を検証した。集団効力感の評価にはCollective Efficacy Questionnaire for Sports(Short, et al.:2005)を日本語に翻訳した日本語版の尺度を質問紙として採用した。さらに、終了後にはTBを通して得たこと、学んだことについての内省報告(A4・1枚)を課し、後日提出させた。

     質問紙調査によって得られたデータを解析した結果、「Effort(努力)」を除く全ての因子得点において、介入前よりも介入後に高い値を示した(p<.001)。さらに、内省報告の記述内容を分析した結果、コミュニケーションや自己理解、他者理解の促進など、TPIを活用したTBの体験効果に相当する記述が数多く確認された。

  • 大学駅伝チームを対象として
    小野 圭久
    p. 104_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     チームビルディング(以下TBと略す)とは、変革型リーダーシップによる組織変革のための組織開発プログラムに依拠して、もともと企業に対する組織開発のなかで発展してきた技法であり、スポーツチームにおいても多くのTBの効果が報告されている。そこで本研究では、今後に箱根駅伝出場を目指し、強化3年目を迎えている駅伝チームを対象(n=29名、平均年齢19.03歳、SD=±1.03、Range=18-22)に、新入部員を迎えてから目標大会までの期間において、Kotterの8段階の組織変革モデルをTB技法として実践し、TBの効果を定点的な質問紙調査の実施により検証した。質問紙においては、「自己理解」、「他者理解」、「組織理解」の3側面から捉え、TBにおける部員の心理的変容を明らかにした。Kotterの組織変革モデルによるビジョンの策定においては、理想的な高いビジョンによって目標達成への意欲を十分に高めることができなかったが、質問紙においては、コミュニケーションやモチベーションに対してポジティブな意識の変容がみられ、組織変革にむけたTBの効果は得られたと考える。

  • 大学生アスリートが抱く期待のイメージおよび期待を受けた経験の分析
    福井 邦宗, 土屋 裕睦, 豊田 則成
    p. 104_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、競技場面における他者からの期待を効果的に活用するための基礎的研究として、①大学生アスリートが抱く期待のイメージを明らかにすること、②大学生アスリートが他者から期待を受け、正および負の感情を喚起した経験を詳細に比較しその違いを生み出す要因を探索的に検討すること、の2点を目的とした。運動部活動に所属し日々練習を行っている大学生アスリート156名を対象とし、大学生アスリートが抱く期待のイメージと、正および負の感情を喚起した他者からの期待の経験を自由記述で回答を求めた。得られたデータをテキストマイニングと法を用いて分析した結果、①大学生アスリートは期待に概ねポジティブなイメージを抱くが、ポジティブとネガティブの両義的なイメージも同時に抱いていること、②大学生アスリートの正の感情または負の感情を喚起した他者からの期待の経験の内容と、それによる競技パフォーマンスへの影響について整理・集約が出来たこと、③大学生アスリートが他者からの期待を受けた際の正負の感情の喚起の違いを分ける要因は、期待への認知が作用していること、の3点を成果として導き出した。

  • 実力発揮場面と実力未発揮場面の比較
    髙橋 由衣, 高井 秀明, 平山 浩輔
    p. 105_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では、競技特性の違いによる実力発揮場面と実力未発揮場面の思考内容を検討し、実力発揮場面に繋がる思考を明らかにすることを目的とした。調査対象者は、体育専攻学生61名(オープンスキル28名、クローズドスキル33名)であった。オープンスキルとクローズドスキルの実力発揮の有無による心理的ストレス反応尺度と日本語版PANASの得点について対応のあるt検定を行った結果、両スキルともに実力発揮場面は実力未発揮場面に比べて「思考力低下」は有意に低く、「ポジティブ感情」は有意に高かった。また、思考内容について実力発揮場面ではオープンスキル、クローズドスキルともに「積極的姿勢」「スキルの教示・作戦」の割合が高かった。特に、オープンスキルでは「作戦」という思考の割合が高く、クローズドスキルでは「スキルの教示」という思考の割合が高かった。つまり、実力発揮場面ではポジティブ感情が高く、思考力が高かったといえる。一方、「作戦」では、チームの役割を理解し作戦を立てること、「スキルの教示」では、自己の動作に注意が向けられることによって実力発揮に繋がるものと推察される。

  • 川田 裕次郎, 清水 駿, 中家 寛貴, 中村 美幸, 山口 慎史, 上村 明, 柴田 展人, 広沢 正孝
    p. 105_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、児童の社会的スキルと運動および体育の楽しさの関連を検討することを目的とした。公立の小学校の4年生~6年生の児童362名(男児178名:平均年齢10.3歳±0.93歳、女児184名:平均年齢10.49歳±0.91歳)を対象に社会的スキルを測定する児童生徒用ソーシャルスキル尺度、運動の楽しさを測定する質問項目、体育の楽しさを測定する質問項目への回答を求めた。各尺度の得点間の相関分析を男女別に行った結果、合計得点の分析では、男児と女児ともに社会的スキルと運動の楽しさ(男児r=27,p=.01,女児r=35,p=.01)、体育の楽しさ(男児r=36,p=.01,女児r=32,p=.01)に有意な正の相関が示された。下位尺度の分析では、男児と女児ともに社会的スキルの下位尺度である「関係開始」「基本的マナー」「他者への配慮」と運動の楽しさ、体育の楽しさの間に有意な正の相関が示された。これらの結果から、社会的スキルの高さが運動や体育の楽しさと関連することが示され、人間関係を開始するスキル、基本的なマナーを守るスキル、他者へ配慮するスキルなどの社会的スキルが体育や運動時間の充実に寄与する可能性が明らかとなった。

  • 三澤 孝康, 木島 章文
    p. 105_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     ボールゲーム種目の競技経験がサッカーゲームの観察視点に与える影響を検討した。大学運動部活動に所属する男子大学生39名(サッカー部10名、バスケットボール部10名、野球部10名、バレーボール部9名)を対象にサッカーの試合映像を呈示し、彼らが主観的に判断する「良いプレー」の出現時刻と「良い」と判断した理由を記録用紙に記入させた。映像に出現した全てのプレーを攻-守、オン-オフ・ザ・ボール、シュートの有-無の3つの基準で分類し、各部に属する参加者が「良い」と判定するプレーがどの分類に属するかを確認した。競技経験群を独立変数として「良い」としたプレーの傾向を比較したところ、「ゴール型」の群はオフ・ザ・ボールのプレーを選択する確率が高く、「ネット型」「ベースボール型」の群はオン・ザ・ボールのプレーを選択する率が高かった。一連の結果から運動選手がゲームを観察する場合には自らが経験してきた競技特性が反映されると考えた。そこから行為実行—観察の連合学習(Heyes,2010)がスポーツの観察においても機能している可能性について言及し、さらには教員が自らの競技経験とは異なる部活動を指導できる可能性について検討した。

  • 菅野 慎太郎
    p. 106_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、試合直前における指導者の言葉がけによって生起されたスポーツ選手の感情が試合直前の動機づけにどのように影響しているのかを、共分散構造分析を用いて検証することを目的とした。個人競技種目の運動部に所属している大学生279名(男性:229名、女性:50名)に対して、試合直前場面を想起させ、信頼性と妥当性が確保された「言葉がけに対する感情」と「試合直前の動機づけ」を評価する尺度を実施させた。共分散構造分析の結果、モデル適合度指数が基準を満たすものであった。よって、スポーツ選手の指導者の言葉がけに対する感情が、試合直前の動機づけに影響を及ぼしているという仮説が検証された。また、パス係数から認められる「感情」から「動機づけ」への影響は、ポジティブとネガティブのどちらの言葉がけに対しても強い影響を及ぼしたが、その強さはネガティブな言葉がけにおいて一層強まることが確認された。このことは、ポジティブな言葉がけによるポジティブな感情の表出が、動機づけの増強に強く影響することは疑いないが、実はネガティブな言葉がけがされたときこそ、感情から動機づけへの因果関係活性が最大となることを示唆する結果であった。

  • 福田 将史
    p. 106_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     現在、全日本大学野球連盟に所属する26連盟の公式戦においては春季リーグ戦、秋季リーグ戦ともに勝ち点制を採用している連盟がほとんどである。勝ち点制とは、同一カードで先に2勝した方が勝ち点1を獲得する方式である。筆者は、野球の試合において、先に得点したチームの勝率について、高校野球(2009)、学童野球(2012)、社会人野球(2014)で7割以上の勝率であることを報告した。大学野球における勝ち点制においても、先勝したチームが勝ち点を獲得するのに有利になるのではないかと考えた。

     本研究では、大学野球の勝ち点制で先勝した場合の勝率について分析した結果について報告する。対象は、全日本大学野球連盟に所属する18連盟で、2005年から2015年の10年間の春季リーグ戦と秋季リーグ戦について分析した。その結果、春季リーグ戦、秋季リーグ戦ともに7割以上の勝率であることが明らかになった。

  • 体育授業におけるペア運動課題を用いた指導の効果検証
    松浦 佑希, 本谷 聡, 坂入 洋右
    p. 106_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では、学習者の多様な運動感覚の経験を重視した「感覚経験型指導法(松浦ら,2017)」が、運動技能の向上効果に加えて、学習者がより楽しく運動に取り組み、また対人関係を促進させるか検討することを目的とした。大学生42名を「感覚経験型指導法」と「モデル習得型指導法(教本に基づく一般的な指導方法)」の2群に分け、Gボール上で行うペアバランス課題を用いて、運動に対する楽しさ、対人関係の向上効果、および運動技能向上効果について体育授業において検討を行った。その結果、他者評価における「楽しさ(p<.001)」では、感覚経験型指導法の方が有意に評価が高かった。親密度(IOS)の向上は、両指導条件で有意に向上したが(p<.001)、他者評価では、「協調性」と「親密度」について感覚経験型指導法の方が有意に高かった(ps<.05)。運動技能については、感覚経験型指導法の方がより長くバランスを保持できたが(p<.01)、運動の美しさの評価はモデル習得型指導法の方が高かった(ps<.01)。本研究の結果から、感覚経験型指導法の活用によって、運動技能の向上効果に加えて、より楽しく取り組み、対人関係の向上効果も得られることが確認された。

  • 中村 美幸, 川田 裕次郎, 上村 明, 山口 慎史, 柴田 展人, 広沢 正孝
    p. 107_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、大学生アスリートの心理的ストレッサーおよびレジリエンスが精神的健康度に及ぼす影響を男女別に検討した。大学生アスリート338名(男性236名、女性102名、平均年齢19.85歳)を対象に日常競技ストレッサー尺度、精神的回復力尺度、精神健康調査票(GHQ-30)への回答を求めた。心理的ストレッサーの高群と低群、レジリエンスの高群と低群を独立変数に、精神的健康度を従属変数に設定し二要因分散分析を行った。その結果、男性では、心理的ストレッサーとレジリエンスの精神的健康度への主効果が認められた。交互作用が認められたため、単純主効果の検定の結果、ストレッサーの高群でレジリエンスの低群が高群よりも高いGHQ-30得点を示した。女性では、心理的ストレッサーの精神的健康度への主効果が認められたがレジリエンスの主効果はなかった。交互作用もなかった。このことから、男性では、レジリエンスの低い者が高いストレッサーを認知すると、精神的健康度が不良になること、一方で女性はレジリエンスに関わらず高いストレッサーを認知すると精神的健康度が不良になる可能性が明らかとなった。

  • 運動・身体活動量に基づく検討
    西田 順一
    p. 107_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     経済協力開発機構の調査により学校教員の労働時間等が示され、諸外国と比べ日本の教員は最も多忙であることが浮き彫りとなった。このことはTALISショックと言及され、教員の労働環境の改善が切に望まれる。多忙感を抱え校務にあたる教員のメンタルヘルス悪化が懸念され、教員のメンタルヘルス改善は喫緊の課題である。メンタルヘルス予防や改善には教員に相応しい方略が必要であり、運動・身体活動は効果的方略となり得る(西田・大友,2010)。本研究は、教員のメンタルヘルスと運動・身体活動量およびストレス経験を縦断的に捉え、それらの関連性を検討することを目的とした。公立小に勤務する常勤教員150名に対しGHQ28およびIPAQ-Long Forms等の妥当性の高い国際的質問紙を用い郵送調査を行った(Time 1)。次に、縦断調査として約3か月後の時点にて協力の得られた対象者に対し上述の質問紙へ記入させた(Time 2)。欠損値処理等の後、データの不備がなかった112名を最終的な分析対象とした。分析の結果、経時的に運動・身体活動量がほぼ一定の対象者はメンタルヘルスの変容は確認されなかった。今後の課題についても議論した。

  • 東 亜弓, 土屋 裕睦
    p. 107_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究は、集団種目を専門とする大学アスリートの心理社会的要因に関する基礎的知見を得ることを目的としシーズン中の変化を検討した。調査は2015年に3回実施した。分析対象者は、252名(男子69名女子183名)であった。その結果、以下3つについて明らかになった。(1)大学アスリートの日常・競技ストレッサー尺度(岡ほか,1998)を使用し日常・競技ストレッサーを調査した結果、6つの下位尺度において主効果が有意であった。「自己に関する内的、社会的変化」「クラブ活動内容」「経済状態・学業」は12月が有意に高く、これら以外の3つにおいては4月が有意に高いことが認められた。(2)GCQ特性版(佐々木・山崎,2002)を使用し日常一般的なコーピングの使用傾向を調査した結果、4つの下位尺度において主効果が有意であった(p<.01)。4月が有意に高いことが認められた(p<.01)。(3)スポーツ特性不安(トーヨーフィジカル)を使用し特性不安を調査した結果、5つの下位尺度のうち「自信喪失傾向」のみ主効果に有意差が認められた(p<.01)。4月のほうが7月よりも有意に高いことが認められた(p<.001)。

  • 年齢及び審判歴との関係
    西貝 雅裕, 来田 宣幸
    p. 108_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     スポーツの審判員は試合で重要な役割を果たしており、プレッシャー等に対処するスキルや自己コントロール能力が必要になると考えられる。しかし、審判員の心理的特性と年齢及び審判歴との関係については不明な点が多いため、本研究では野球の審判員の心理的特性を定量的に評価することを目的とした。211名の野球審判員(平均年齢43.3歳、平均審判歴13.9年)を対象として審判の心理的スキルを評価する24項目(6因子×4項目)の質問紙を用いて、5件法で回答させた。その結果、自己コントロール能力とコミュニケーションにおいて、年齢及び審判歴ともに有意な主効果がみられた。そこで、多重比較をおこなったところ、自己コントロール能力では、50歳以上(13.6±3.3点)が30歳未満(11.5±3.2点)より有意に高い値であり、審判歴20年以上(13.6±3.3点)が10年未満(12.0±2.9点)より有意に高い値であった。コミュニケーション能力では審判歴20年以上(17.4±1.7点)が10歳未満(16.5±2.3点)より有意に高い値であった。このことから、野球の審判員は意欲や自信等については年齢や経験年数によらず心理的なスキルを保持していることが明らかとなった。

  • 選手 ‐コーチ ‐メンタルトレーニング指導者の語りに着目して
    西村 拳弥, 豊田 則成, 竹内 早耶香, 沢田 美紀, 伊藤 麻由美
    p. 108_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の関心事は、メンタルトレーニング(以下、MTと称する)の効果を質的に検討することにある。具体的には、ある大学硬式野球部に所属する選手38名に対して週に1度のペースで実力発揮を目的とした講習会形式のMT(①オリエンテーション②ルーティン・日誌③リラクセーション④ポジティブシンキング⑤マインドマップ⑥ピークパフォーマンス分析⑦ピークパフォーマンス分析⑧ビジョントレーニング⑨目標設定⑩まとめ)を全10回にわたって実施。講習会形式のMT終了後は、選手と1対1形式の個別でのセッションを行った。そこでは、MTでの内容やMTに取り組んでいる選手の様子を詳細に観察・記録し、MTでの感想を含む日誌を通しての内省及び、個人セッションでのやり取りによって得られた選手の語りをデータとして位置づけた。また、MTを行っていく中で、2名のコーチに対してチームの課題やMTへの要望といった内容のインタビュー(40分から1時間程度)を複数回実施しており、そこでの会話内容もデータとして位置付けた。これらのデータについて質的研究法を用いた分析をすることで、選手がどのように変容したのかを可視化し議論することを目指した。

  • 谷木 龍男, 雨宮 怜, 坂入 洋右
    p. 108_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

    目的:空手道選手のマインドフルネスとバーンアウトの関係を検討することを目的とした。

    方法:対象はI県空手道連盟強化指定選手87名(男性61名、女性26名、平均年齢16.2±2.8歳)であった。スポーツ競技者版マインドフルネス尺度、日本版Acceptance and Action Questionnaire-II、大学生スポーツ競技者版バーンアウト尺度、競技特性不安尺度に回答を求めた。

    結果:競技マインドフルネス、アクセプタンスとバーンアウト、競技特性不安の間に有意な負の相関が認められた。同様に、競技マインドフルネスとアクセプタンス、バーンアウトと競技特性不安の間に有意な正の相関が認められた。アクセプタンスが競技マインドフルネスと競技特性不安に、競技マインドフルネスが競技特性不安とバーンアウトに、そして競技特性不安がバーンアウトに影響するモデルの適合度は、GFI=.986、RMSEA=.115とモデル採択の基準を満たしていた。

    考察:空手道選手のマインドフルネス向上がバーンアウト予防につながる可能性が示唆された。

  • 雨宮 怜, 坂入 洋右
    p. 109_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究の目的は、スポーツ競技者における将来の抑うつの有無を予測する、バーンアウト症状を同定することである。

     本研究では、2時点による縦断調査を行った。調査期間として、2015年11月上旬から12月下旬において第一調査を実施し、2016年3月から5月に第二調査を行った。調査対象者は、大学生スポーツ競技者136名(男性=86名、女性=49名、性別不明=1名、平均年齢=19.84歳、SD=1.03)であった。測定指標として、スポーツ競技者版バーンアウト尺度の「対人情緒的消耗」、「成就感の欠如」、「チームの価値下げ」、および「練習情緒的消耗」の4下位尺度(雨宮他,2013)、カットオフポイントを基に抑うつの有無を判別するK-10質問紙票日本語版(Furukawa,2003)を用いた。なお分析方法は、ロジスティック回帰分析を行った。

     本研究の結果、スポーツ競技者におけるバーンアウトの主症状である「対人・練習情緒的消耗」(雨宮,2014;Gustafsson et al., 2011)が、将来の抑うつの有無を予測することが明らかとなった。そのため、「情緒的消耗」が高いレベルに位置するスポーツ競技者は、その後、深刻な抑うつや離脱、自殺という問題に繋がりやすいことが予想される。

  • A大学女子柔道選手を対象として
    藤本 太陽, 高井 秀明, 平山 浩輔
    p. 109_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では女子柔道選手21名を対象として、試合に臨む際に生じる選手個々人のあがりの場面や徴候、有効な予防・対処法に関する実態を明らかにすることを目的とした。その結果、場面では「試合前」が86%、「試合中」が10%、「試合当日の朝」が5%であった。徴候では「失敗しないか不安」が22%、「心拍数の増加」が18%、「手足に力が入らない」が18%であった。予防・対処法は「覚悟を決める」が21%、「表情・姿勢」が19%、「呼吸法」が15%であった。場面や徴候に対する予防・対処法とその有効度に関する主観的評価では、試合前の場面で、失敗しないか不安という徴候が生じた際は、覚悟を決めるという予防・対処法を用い、その有効度も63点と効果があることが示された。また、試合前の場面で、心拍数の増加という徴候が生じた際は、呼吸法という予防・対処法を用い、その有効度も56点と効果があることが示された。以上のことから、試合前に失敗しないか不安になるという徴候が生じた際は、覚悟を決めることが重要であり、試合前に心拍数が増加した際は、呼吸法という予防・対処法を用いることが有効であることが示唆された。

  • ─直面する困難を乗り越えていくプロセスの可視化─
    豊田 則成
    p. 109_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     アスリートがキャリアトランジション(競技引退)を経てセカンドキャリアを獲得していくことは、個人の内外ともに容易な作業とはならない。例え外的キャリアを獲得できたとしても、内的なキャリアの感覚を維持することは難しい。特に、青年期の大半をスポーツ競技に対して、ほぼ唯物的に関わる彼らは「アスリートとしてのアイデンティティ」を深化させていく。そして、アスリートが競技生活を通じて獲得する資質(例えば、ライフスキルなど)は、競技引退後の人生の歩みの中で多かれ少なかれ寄与することになる。そのような視点に立つ時、アスリートとして直面する心理社会的発達課題は、どのように克服されていくのであろうか、といった素朴な疑問を抱く。すなわち、アスリートは競技生活の中で、どのような困難に立ち向かい、その結果、どのような資質を養い、そして、その資質をその後の人生にどのように役立てていくのだろうか。そこで、本研究では、「アスリートはどのような困難に直面し、それをどのように解決し、役立てていくのか」というRQを設定し、フィールドワークを中心としたインタビュー調査の結果から、発展継承可能な仮説的知見を導き出すことを目指した。

  • イップス選手の内省に着目して
    藤井 宏輔
    p. 110_1
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     「イップス」は、無意識的な筋活動の乱れにより特定のスポーツ動作において痙攣等の動作障害が起こり、通常遂行可能な動作ができなくなる状態を指す。イップスに対する学術研究としては、症例の詳細な考察を目的とした事例研究や、メカニズムの解明を目指す神経科学的アプローチによるものがある。一方で、イップスを発症したスポーツ選手のプレイ中における内面の状態や心情(本研究では「内省」とする)に着目した研究は、野球における送球イップス経験者の心理プロセスの検討(向,2016)を行なった先行研究はあるものの数は未だ少ない。ここでテニスにおけるイップスに関する学術研究に着目すると、選手の内省については行なわれていない。イップスによってテニスを辞めてしまう選手が一定数いることから、テニスにおけるイップスを発症した選手の早期発見と、その克服のための指導法の確立が急務である。そこで本研究では、イップスを発症した選手を対象にインタビュー調査を行い、イップス選手の内省に迫ることを試みる。それを通して、テニスにおける指導者や選手自身のイップスへの対処法を探るための基礎的な資料を得ることを目的とする。

  • スポーツ傷害予防の一助として
    日比 健人, 佐久間 春夫
    p. 110_2
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     スポーツ活動に参加する際には、様々なストレッサーが発生する。本研究では、「スポーツ活動におけるストレス反応に関する尺度作成」を行なった。はじめに、スポーツ活動においてどのような点がストレッサーとなっているのかを調査するために、スポーツ経験者の大学生95名に自由記述にて、回答を求めた。この自由記述を基にKJ法にて分類を行い、質問項目を作成した。その質問項目の信頼性を確認するために、再度95名に作成した質問紙に回答を求めた。結果、5つの因子が抽出された。①勉学に関するストレス、②プレー・技術に関するストレス、③人間関係に関するストレス、④生活活動に関するストレス、⑤金銭に関するストレスの5つの因子である。クロンバックのα係数も全ての因子で0.7を超えており、信頼性も確認された。次に、高校生においても使用できるように、男子高校生195名に再度、作成した質問紙に回答を求め、因子分析と信頼度分析を行った。結果、3つの因子が抽出された。①プレーに関するストレス、②生活活動に関するストレス、③勉学に関するストレスの3つである。クロンバックのα係数も全ての因子で0.7を超えており、信頼性も確認された。

  • 平田 智秋
    p. 110_3
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/15
    会議録・要旨集 フリー

     縄跳びやスキーなど、道具を用いた周期運動では、道具が求める動的な特性に見合った運動制御が求められる。本研究ではブランコ漕ぎ(座り漕ぎ)に着目し、その増幅過程でみられる、上体動の位相変位に着目し、それを規定する変数の同定を試みる。

     実験参加者10名に、鎖の長さが異なる3種類のブランコに、静止状態から振幅が60度を超えるまで漕がせ、座面と漕ぎ手の動きを解析した。同時に運動方程式を用いたブランコ漕ぎの物理モデルをたて、実測値と比較した。

     結果、上体角が最大となる(=仰け反る)のは、振幅が小さいときにはブランコの最下点、そして増幅に従ってブランコの背面極限へと滑らかに位相が変移した。物理モデルからも、この位相変移が増幅量を最大にすると確認された。この位相変移は全ての実験参加者にみられる一般的な傾向で、かつ増幅に応じて一方向に進むが、変移の幅は極めて小さい。また膝関節の周期運動にはこのような位相変移はみられない。

     したがって上体角の位相変移は精緻で非意識的に進む適応制御とみなせる。本研究ではこれを実現する環境変数の同定を試み、道具に合わせた柔軟な運動制御の機序について考える。

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