【はじめに、目的】
今回は高齢発症RA患者(EORA)の身体特性とADL障害について調査するために、過去10年間の当院外来通院患者の初回時理学療法評価項目の中からEORA患者を抽出し 60歳未満にて発症したRA患者 (YORA)と比較検討したので報告する。
【方法】
2014年~2023年の10年間に初診で当院外来RA患者として通院した267名(男性77名、女性190名)、平均年齢64.0±14.1歳、平均罹病期間5.9±8.9年、平均発症年齢58.3±14.6歳 )を対象とした。発症年齢を1群(EORA):60歳以上発症(男性 46名、女性86名)、2群(YORA): (男性31名、女性104名)の2群に分け検討した。
調査項目は、疼痛部位と値、朝のこわばり、身体組成(身長、体重、BMI)、 10m歩行速度、ADL評価(上下肢、合計)、合併症 (高血圧症、糖尿病、骨粗鬆症)、各種保険、並びに家族構成とした。
統計学的解析には、評価時年齢、罹病期間、痛みの値、身体組成、歩行速度、%YAM値、ADL得点の11項目について平均値の差の検定を施行した。また調査期間を2群に分け、2014年~ 2018年を1群:前期、2019年~2023年を2群:コロナ流行期とした。
【結果】
各年毎のEORA患者の占める割合は、2014年51、2015年38、2016年41、2017年60、2018年43、2019年49、2020年29、2021年61、2022年54、2023年58であった(数字は%を示す)。
EORAの合併症有無では高血圧症42%、糖尿病7%、骨粗鬆症 51%であった。EORAの前期及びコロナ流行期の比較では、評価時年齢(P<0.01)、罹病期間(P<0.01)の項目に、YORAでは罹病期間(P<0.01)に有意差が認められた。家族構成は独居22名 (17%)、夫婦67名(51%)であった。
EORAの男女別項目比較では、身長、体重、%YAM値の項目(全てP<0.01)に、YORAでは身長、体重、BMIの項目(全てP<0.01)に有意差が認められた。
【考察】
RA患者の発症年齢の高齢化が進んでおり、一般的な代謝機能 や排泄機能の低下のみならず、RA患者特有の体組成異常は発症早期から現れる。治療目標としてのT2TでのTight controlはもとより、患者背景や抗リウマチ薬処方への影響を我々PTも理解すべきである。
【倫理的配慮】
本研究はヘルシンキ宣言に準じて、 診療記録より後方視的にデータ抽出を行い、個人情報が特定できないようにID化しデータ保存を行った。
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