デザインの対象が、「もの」から生活世界の中の「こと」に広がっている。本稿では、従来のデザインプロセスを「枠組み前提型」ととらえ、その問題点を明らかにするとともに、我々がデザイン実践の中で実感してきた、活動しながら課題をつかみ可能性を切り開いていく、「やってみてわかる」型のデザインプロセスを「枠組み構成型」と名付けそのデザインプロセスについて考察する。従来のデザイン研究や教育では、あらかじめ明示された課題設定に対して、最短の過程を踏むことで解決策を作り上げることを求められ、そのためのデザイン知識と技術が探求されてきた。ユーザーのニーズを客観的に分析し、既に定められたフレームワークを踏襲してプロジェクトを進めれば有効なデザイン提案が可能になる、という考え方がこの根底にある。しかし我々がこれまで進めてきたことのデザインを対象としたプロジェクトでは、事前の課題設定にとらわれることなく、対象となる場(フィールド)にデザイナーが入り込んで、自身を含んだその場の問題として課題を再定義していく必要があった。また、プロジェクトの進行とともに、誰がデザイナーで誰がユーザーかも曖昧になり、プロジェクトに関わるメンバーそれぞれが自律的にその力を発揮するようになることが明らかになってきた。このような、ことのデザインのプロセスにもとついた、新たなデザインの実践、研究、人材育成の方法を探る必要がある。
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