地すべりは我国の日本海側気候に属する多雪地域の最も普遍的な斜面災害の1つである。これは,積雪からの融雪水の供給によるすべり面付近での間隙水圧の増大が主な原因とされる。このような日本海側多雪地域の地すべりの多発が古気候の変化と対応していつ頃から始まったのかを,第四紀後期のグローバルな気候変化と地すべり地塊の堆積時期との関係の分析によって検討した。地すべり地塊の堆積時期については,
14C資料・時代のわかっている火山灰や地形面と地すべり地塊の位置関係に関するデータを用いた。その結果,最終氷期末から後氷期はじめにかけて(約13,000-11,500年前)の気候温暖化による海水準上昇の結果として,対馬暖流が日本海側に流入し,その結果日本海側の多雪気候が始まったのに対応して,日本海側では地すべりが多発化するようになりその傾向が現在まで続いていることがわかった。
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