会計検査研究
Online ISSN : 2436-620X
Print ISSN : 0915-521X
68 巻
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会計検査研究
  • 北山 俊哉
    2023 年68 巻 p. 5-11
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
  • 八塩 裕之
    2023 年68 巻 p. 13-34
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     小規模法人の多くは経営者が株式のほとんどを保有するオーナー経営(owner-managed)であり,企業活動で得た所得を税率の低い課税ベースに移す節税が起きやすいことが報告されている(例えばSlemrod, 1995)。この問題に関して日本では従来から,「欠損法人問題」が指摘されてきた。ポイントは,日本では 法人税率が高い一方で,給与に対する所得税率(社会保険料率も含む)が低いことであった。そのため,多くの小規模法人の経営者が事業で稼いだ所得をすべて自身の役員給与で受け取って,法人に所得を留保せず法人税負担を避ける節税を行う結果,中小法人の多くが欠損法人になっていると言われた。

     しかし近年,日本では社会保険料率の引上げによる実質的な所得税率引上げとともに,法人税率が断続的に下げられてこの状況が変化した。このうち,法人税率引下げについては重要な機会が2回あった。すなわち2009 年の中小法人向け軽減税率引下げと,2013 年以降の数年間における本則税率引下げである。

     八塩(2020)では財務省による22 年間の「法人企業統計年次別調査」の個票データを用い,このうちの1 回目である2009 年の軽減税率引下げが小規模法人経営者の節税を誘発した可能性を分析した。本稿ではこれを踏まえて同じデータを用い,2 回目の法人税率引下げである2013 年以降の本則税率引下げについて分析する。そして実際に,本則税率引き下げ後に一部の経営者による節税行動が誘発された可能性 があることを示し,それを踏まえて政策インプリケーションを検討する。

  • 大山 紘平, 小沢 和彦, 清水 沙友里, 黒木 淳
    2023 年68 巻 p. 35-57
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,地方公共団体において組織変革としてのデータ活用推進に対する職員の行動意識の実態とその要因を明らかにすることである。具体的には,組織変革へのコミットメント尺度の原著者であるHerscovitch and Meyer (2002)から承諾を得て日本語版を開発し,その信頼性と妥当性の検証を行う中で,データ活用に対する職員の行動意識の実態と課題を明らかにする。本稿は,データ活用やEBPMが最も進んでいると考えられる健康・福祉・医療政策および総合的に政策を取り扱う部署を対象として,調査を実施した。

     検証の結果,開発した尺度は,概ね想定された構成概念妥当性が確認された。さらに,分析の結果,情緒的,存続的,規範的の3 つの尺度のうち,情緒的あるいは規範的なコミットメントが高まれば,データ活用に対する行動意識が高まることが示唆された。本稿で得られた結果は,データ活用推進への行動意識に対して,組織変革における職員の心的状態,あるいはマインドセットが極めて重要な意味を持つことを示唆している。わが国の地方公共団体では専門家ではない職員がデータ活用に基づく業務プロセスの変更を含む組織変革を担う可能性が高く,本稿の結果はデータ活用推進へのコミットメントの程度が組織変革に影響をもたらす可能性を示唆している。

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