爆発地震の初動付近の詳細な震源過程を明らかにするために,1987年11月の3つの桜島の爆発地震について,短周期地震計で得られた記録を解析した.これまでの研究では,爆発地震の等価な力源として,鉛直下向きのシングルフォースや球状圧力源が用いられてきた.本研究では,爆発地震の震源過程をより一般的に記述するために,2種類のソースモデル,すなわち,地震モーメントテンソル(M
xx,M
xy,M
xz,M
yy,M
yz,M
zz),及び,鉛直方向のシングルフォースと地震モーメントテンソル5成分の組み合わせ(F
z,M
xx,M
xy,M
xz,M
yy,M
yz)を使った.それぞれの力(F
z)や複双力源(M
ij)に対応する震源時間関数を波形インバージョンによって求めた.観測波形は地震モーメントテンソルを使った場合に良く説明することができる.推定された震源時間関数から,爆発地震の震源領域は急速に膨張した後,収縮に転じることが示唆される.シングルフォースを含んだ震源モデルでは,桜島の爆発地震の著しい特徴の一つである初動の押しを説明することはできなかった.これらのことから,爆発地震の最初の震源過程として地震モーメントテンソルによるモデルの方が適当であると考えられる.震源領域の膨張に関しては,地震モーメントテンソルの対角成分のうちM
zzが卓越していることがわかったが,これは最近,井口(1994)によって得られた結果と一致する.したがって爆発地震は爆発地震の震源領域の最上部に形成されたガス溜まりが主に上下方向に膨張することで始まると考えられる.
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