高知リハビリテーション専門職大学紀要
Online ISSN : 2435-2543
Print ISSN : 2435-2535
最新号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • ADL・摂食嚥下機能・食事の視点から
    池 聡, 上松 智幸, 荒牧 礼子, 光内 梨佐, 有光 一樹, 平賀 康嗣, 明﨑 禎輝
    2023 年4 巻 p. 1-10
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/02/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    認知機能低下や認知症が摂食嚥下機能や日常生活活動(ActivitiesofDailyLiving:以下,ADL)に与える影響は大きい.そこで本稿では認知症とADLや摂食嚥下機能,食事との関係について,認知症予防の観点から総説的にまとめてみたい.また,認知症のリハビリテーションについても触れる.ADLは,食事などのセルフケアよりもさらに複雑で高度な認知機能を有する手段的日常生活活動(Instrumental Activity of Daily Living:以下,IADL)能力から低下することが推測されている.単純な介助か自立かという評価でなく,より具体的な問題点を調査し,早期に介入することが予防的観点として重要である.摂食嚥下機能では.加齢に咀嚼不全が加わることで認知機能が著しく低下し,食事の摂取量低下や咀嚼が不要な食形態への変更に伴う咀嚼機会の減少という悪循環が考えられる.そのため,オーラルフレイル対策が認知症の予防には重要である.食事では,野菜や果物,魚といった摂取内容と認知症発症のリスクに関して,一定の結論が得られていないことや根拠が十分でなく今後のデータ集積が重要な分野と考える.また,認知症のリハビリテーションに関しても,前頭葉/実行機能プログラム(Frontal/ExecutiveProgram:以下,FEP)を使用した介入後,認知機能検査の成績が改善するといった報告がなされているが,こちらも十分なエビデンスが得られていない.今後は,摂食嚥下機能や食事と認知機能の関係や認知症リハビリテーションの効果に関してもエビデンスを明らかにしていくことが重要である.
  • 國本 拓馬, 髙梨 晃, 塩田 琴美, 榎本 亜矢, 田畑 沙耶香, 原田 豊, 柴嵜 寛弥, 榎本 雄介, 山﨑 裕司, 加藤 宗規
    2023 年4 巻 p. 11-18
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/02/08
    研究報告書・技術報告書 フリー
    変形性膝関節症を有する外来患者に対して3ヶ月間理学療法を行い,準WOMAC機能スコアの合計点と各項目における困難者の割合の変化及び各機能項目の変化を重症度別に検討した.対象は変形性膝関節症と診断された外来患者40名(男性8名,女性32名),平均年齢は,73(54-88)歳であった.評価項目は,準WOMAC機能スコアの合計点及び各項目を評価した.各機能因子として,等尺性膝伸展筋力,膝関節屈曲及び伸展可動域,歩行速度,歩幅,歩行率,Timed up and go test,立位における姿勢安定度評価指数及び前後左右の重心移動距離を初期評価時と3ヶ月後にそれぞれ評価した.準WOMAC機能スコアの合計点は全対象者,軽度群,重度群において有意に改善した.各項目における困難者の割合は,全対象者及び軽度群において多くの項目に改善を認めたが,重度群には改善を認めなかった.各機能因子における初期介入時と3ヵ月介入後の変化は,全対象者および軽度群では,重度群と比べて改善を認めた項目数が多かった.以上のことから,変形性膝関節症に対する外来理学療法は,日常生活活動能力及び基本的な身体機能の向上を図るうえで有効なものと考えられた.
  • 独歩自立例と独歩非自立例が混在する区分での検討
    津田 泰路, 山﨑 裕司
    2023 年4 巻 p. 19-22
    発行日: 2023/03/30
    公開日: 2023/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,独歩自立例と独歩非自立例が混在する等尺性膝伸展筋力(以下,膝伸展筋力)水準と下肢荷重率水準を 4 群に区分し,各群の独歩自立例の割合を検討した.対象は65歳以上の入院患者43名であり,膝伸展筋力と下肢荷重率,歩行自立度を評価した.膝伸展筋力が0.250kgf/kg以上0.325kgf/kg未満で下肢荷重率が80%以上85%未満の者をⅠ群( 5 例),筋力が0.325kgf/kg以上0.400kgf/kg未満で下肢荷重率が80%以上85%未満の者をⅡ群(17例),筋力が0.250kgf/kg以上0.325kgf/kg未満で下肢荷重率が85%以上90%未満の者をⅢ群( 8 例),筋力が0.325kgf/kg以上0.400kgf/kg未満で下肢荷重率が85%以上90%未満の者をⅣ群(13例)とし,各群の独歩自立例の割合を比較した.独歩自立割合は,Ⅰ群から順に, 0 %,59%,75%,85%であり,独歩自立割合に有意差を認めた(p<0.05).膝伸展筋力,下肢荷重率とも低いⅠ群では独歩自立例を認めなかった.また,両者とも高いⅣ群では独歩自立割合は最も高かった.以上のことから,混在区分においても膝伸展筋力および下肢荷重率の要因は一定の影響を及ぼすものと考えられた.
  • 中嶋 風華, 中山 智晴, 山﨑 裕司
    2023 年4 巻 p. 23-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/10/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    一人の検査者で実施できる簡便で信頼性に優れた関節角度の測定方法を確立することを目的として,Image Jを用いた座位での膝窩角度,足関節背屈角度の測定方法を考案した.検者は,経験年数 3 年目の理学療法士である.対象は,健常者16名の左右32脚とした.角度測定は,対象者の両脚について異なる 2 日間で測定した.1日目の膝窩角度は140.3±11.2°,2 日目は141.3±11.5°であり,有意差はなかった. 1 日目と 2 日目の膝窩角間の級内相関係数(以下,ICC)( 1 , 1 )は0.89であった. 1 日目の足関節背屈角度は24.8±6.1°, 2 日目は25.0±6.1°であり,有意差はなかった.足関節背屈角度間のICC( 1 , 1 )は0.87であった.それぞれ固定誤差と比例誤差はなく,最小可検誤差(以下,MDC)は膝窩角度10.3°,足関節背屈角度6.2°であった.よって,今回の膝窩角度測定方法,足関節背屈角度測定方法は,優れた再現性を有するものと考えられた.
  • 踵の補高とテープによる視覚的キューを用いた介入
    中山 智晴, 山﨑 裕司, 古谷 博和
    2023 年4 巻 p. 27-30
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/02/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    立ち上がり動作が困難であった認知症を有する重度パーキンソン病患者に対し,踵の補高とテープを用いた視覚的キューによる介入を行い,その効果について検討した.症例は,86歳男性で,Hoehn&YahrstageはⅣであった.まず,硬性ゴムを靴のヒールの形状に採型し,靴内の踵部に装着して踵を補高することで,前方テーブル支持での立ち上がりを可能とした.介入は,テーブルに視覚的キューとしてテープを貼り,それを目標として上肢を前方にリーチし,体幹を前傾して立ち上がってもらった.介入前5回の立ちしゃがみ時間の中央値(四分位数)は,9.7秒(9.2-10.6)であった.同様に,介入1日目5.8秒(5.3-7.9),介入2日目5.6秒(5.5-6.9),介入後5.0秒(4.7-5.7)であった.介入前と比較して,視覚的キューによって立ち上がり時間は短縮する傾向にあった(p<0.05).介入後の立ちしゃがみ時間は,介入1日目,2日目よりも短縮する傾向にあった(p<0.05).本介入は,認知症を有する重度パーキンソン病患者の立ち上がり動作能力を向上させるうえで,有効なものと考えられた.
  • ユニフォームが条件性嫌悪刺激化した症例
    古川 知早十, 加藤 宗規, 山﨑 裕司, 上村 朋美, 辛 寿全, 辛 秀雄
    2023 年4 巻 p. 31-35
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/02/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    対象は70歳代前半の男性.左中大脳動脈領域の出血性梗塞.軽度右片麻痺,感覚性失語,失行,右半側空間無視,嚥下障害を認めた.理学療法を開始した45病日の評価では指示従事行動は得られなかった.監視下で歩行が20m程度可能であった.しかし,68病日から理学療法の拒否を認めた.理学療法士のユニフォームが条件性嫌悪刺激化している可能性が考えられたため,看護師のユニフォームを着て理学療法を実施した.85病日から11日間,看護師のユニフォームを着た際,拒否はなかった.96病日に理学療法後,ゼリーを強化刺激として追加した結果,訓練実施項目数は1.2項目から2.7項目に増加した.その後,元のユニフォームに戻したが,11日間連続で理学療法が可能であり,実施項目数は3.6項目に増加した.今回の介入は理学療法への参加に対する動機づけの問題を解決するうえで有効に機能したものと考えられた.
  • 中山 智晴, 山﨑 裕司, 古谷 博和
    2023 年4 巻 p. 37-40
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/02/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    起居動作に介助が必要であった認知症を有する重度パーキンソン病患者に対し,段階的難易度設定の技法を用いた起居動作練習を行い,その効果について検討した.症例は,76歳女性で,Hoehn&YahrstageはⅤであった.介入では,段階的難易度設定の技法を用いた起き上がり動作練習と寝返り動作練習を約20分間実施した.仰臥位~側臥位,側臥位~肘立て位,肘立て位~端座位の3相をプロンプトによって得点化(計9点満点)した結果,本症例の介入前介助量(2~6病日)は0点であった.介入後の介助量は,1日目から順に9点→9点→3点→9点→9点であった.介入即日から動作能力に改善が見られたことから,今回の介入は,認知症を有する重度パーキンソン病患者の寝返り,起き上がり動作能力を改善させるうえで有効なものと考えられた.
  • ハムストリングスでの検討
    山﨑 裕司, 柏 智之, 宮﨑 登美子
    2023 年4 巻 p. 41-44
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/02/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,ハムストリングスに対する振動刺激と温熱療法の併用が,その柔軟性に与える影響について検討した. 対象は,健常者10名.まず,両膝窩角度を測定した.次いで,腹臥位にて両側大腿後面にホットパックを10分間実施した.最後の3分間は,片側の内外側ハムストリングスの腱に対して振動刺激(76.6Hz)を加えた.治療後,再度両膝窩角度を測定した.日を変えて,同様の方法でもう一方のハムストリングスに対して振動刺激を加え,同様に両側の膝窩角度を測定した.振動刺激併用群における膝窩角度は,前125.8度,後136.0度であり,有意差を認めた(p<0.01).ホットパック群における膝窩角度は,前124.2度,後130.6度であり,有意差を認めた(p<0.01).併用群における膝窩角度の変化量は10.2度,ホットパック群の変化量は6.4度であり,有意差を認めた(p<0.05).温熱療法に振動刺激を追加することによってハムストリングスの柔軟性は大きく改善した.振動刺激の追加は,ハムストリングスの柔軟性を改善させるうえで有益なものと考えられた.
  • 山﨑 裕司, 柏 智之, 宮﨑 登美子, 稲岡 忠勝
    2023 年4 巻 p. 49-51
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2025/02/07
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本研究では,測定肢位の違いが等尺性外転筋力測定値の再現性に与える影響について検討した.対象は,健常者20名.外転筋力の測定は,側方に手支持した端座位と仰臥位で実施した.いずれも,右大腿遠位端外側にアニマ社製μTas-F2のセンサーを位置させ,両大腿を内外転中間位でベルト固定した.3秒間の最大努力による等尺性外転運動を2回実施させた.休憩をはさんで異なる姿勢で同様に外転筋力を測定した.検者内再現性について検討するため日を変えて同様の測定を実施した.座位外転筋力は,1日目29.1±8.4kgf,2日目28.8±7.2kgfであり,有意差を認めなかった. 両者の間の級内相関係数(1,1)は0.924であった. 仰臥位における外転筋力は,1日目27.4±8.7kgf, 2日目25.1±8.1kgfであり,有意差を認めた(p<0.05).両者の間の級内相関係数は0.889であった. 1日目における座位,仰臥位外転筋力の間には,r=0.937の有意な相関を認めた(p<0.01).以上のことから,椅子座位における外転筋力測定方法は,仰臥位よりも優れた再現性を有するものと考えられた.また,椅子座位における外転筋力から仰臥位における外転筋力を予測することが可能なものと考えられた.
feedback
Top