本研究では,測定肢位の違いが等尺性外転筋力測定値の再現性に与える影響について検討した.対象は,健常者20名.外転筋力の測定は,側方に手支持した端座位と仰臥位で実施した.いずれも,右大腿遠位端外側にアニマ社製μTas-F2のセンサーを位置させ,両大腿を内外転中間位でベルト固定した.3秒間の最大努力による等尺性外転運動を2回実施させた.休憩をはさんで異なる姿勢で同様に外転筋力を測定した.検者内再現性について検討するため日を変えて同様の測定を実施した.座位外転筋力は,1日目29.1±8.4kgf,2日目28.8±7.2kgfであり,有意差を認めなかった. 両者の間の級内相関係数(1,1)は0.924であった. 仰臥位における外転筋力は,1日目27.4±8.7kgf, 2日目25.1±8.1kgfであり,有意差を認めた(p<0.05).両者の間の級内相関係数は0.889であった. 1日目における座位,仰臥位外転筋力の間には,r=0.937の有意な相関を認めた(p<0.01).以上のことから,椅子座位における外転筋力測定方法は,仰臥位よりも優れた再現性を有するものと考えられた.また,椅子座位における外転筋力から仰臥位における外転筋力を予測することが可能なものと考えられた.
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